日常生活とは切り離された神聖な空間でのウェルネス体験は、日々の暮らしで疲れた心と体を解放するのにぴったり。実は、日本全国にあるお寺には、ヨガや坐禅、カフェなどのウェルネス体験ができるところがたくさんあるんです。でも普段あまりお寺に行かないし、敷居がちょっと高いかも…と思う人も? 仏像研究家でもある芸人・みほとけさんに、お寺ウェルネスの魅力や楽しみ方を教えてもらいました。

みほとけ

仏像研究家・お笑い芸人

みほとけ

19941027日生まれ。大学在学中の2015年にアイドルとしてデビューをし、2016年にはミス鎌倉を1年務めた。2018年にアイドルを卒業し、ずっと好きだった仏像・お寺の面白さを発信すべく、本名の「みほ」と「ほとけ」を掛け合わせた「みほとけ」と名乗り、ピン芸人として再デビューを果たす。年間500以上のお寺を訪れ、拝観した仏像は1万を超える。その知識を生かし、寺院でのイベントやカルチャーセンターでの講演など、仏像にまつわる活動は多岐にわたる。著書『みほとけの推しほとけ』が発売中。

初恋の相手は仏像♡ 鎌倉生まれのみほとけさんが、仏像とお寺にハマるまで

仏像研究家・お笑い芸人 みほとけ お寺 空也上人立像

「私の初恋の相手、空也上人立像とのツーショット写真です(笑)。もう数えきれないほどお会いしているのですが、これは9月に阪急交通社での西国巡礼バスツアーで私がツアーガイドしたときの写真です。特別に空也上人立像の模刻と撮影させていただきました!」(みほとけさん談/以下同)

——みほとけさんが、仏像やお寺の魅力にハマったきっかけを教えてください!

みほとけさん 私は神奈川県鎌倉市出身なのですが、親が観光業の仕事をしていて予習がてらお寺に行くことが多く、私も一緒について回っていたんです。仏像を見るのはもちろん、日常では味わえないお寺特有の雰囲気が好きでした。その楽しかった思い出がお寺を好きになった原体験です。

でも中学生から大学生にかけての時期には、お寺や仏像のことは好きだったけど、アイドルやアニメが好きな普通の女の子でした()。ただここで生まれたオタク気質が、今の活動に生きていることはまちがいありません。

そして高校2年生のとき、初恋にして最愛の仏像でもある六波羅蜜寺の空也上人立像に出会いました! お会いした瞬間、その立ち姿のカッコよさにビビッときてしまいました。きっと空也上人の人生が滲み出ていたのだと思います。今っぽく言うなら “推し”に出会ったという感覚です()

※空也上人像立は僧侶の像なので仏を模った仏像ではありませんが、広義で仏教に関連する像ということで仏像としています。 

仏さまの前では、誰もが素直な感情を出せるのが魅力

仏像研究家・お笑い芸人 みほとけ お寺 和歌山県 那智山青岸渡寺

「1600年以上の歴史を持つ、和歌山県にある那智山青岸渡寺に参拝したときの写真です。那智の滝の真横に構えるこのお寺は、インドから偶然来着したお坊さんが那智の滝で修行中に滝壺から見つけた観音像を起源に始まったそうです。滝の迫力と観音様の偉大さを肌で感じることができます」

——仏教への興味を深めた今、どんな点に魅力を感じていますか?

みほとけさん 仏教には生きるためのヒントとして応用できる教えがたくさんあるのが魅力だと思います。そもそもお経は、弟子たちがお釈迦さまに相談した悩みに対する答えのようなものなんです。簡単に言ってしまえば「お悩み解決BOOK」ですよね。

それから、お寺が自分にとって完全な第三者であることも魅力のひとつだと思います。お寺にいる仏さまは、何百年も前からいて、このあともずっとそこにいると思うんです。自分の人間関係やバックグラウンドにまったくかかわりなく存在し続けるのに、絶対的な安心感で包み込んでくれる。だから私たちはお寺に行って仏さまに手を合わせ、素直な感情を出すことができるんですよね。


——でも、そんなにふらっとお寺に行っていいものなのですか?

みほとけさん もちろん大丈夫です。江戸時代までは、自分の家はここのお寺に属するというのが決められていて、役所やコミュニティセンターのような役割を果たしていました。その名残りのせいで、檀家さんでなければ入りづらいイメージがあるのかもしれませんが、最近では坐禅会やヨガ教室を開催しているお寺もかなり増えていますし、カフェが併設されているお寺もあるんですよ。


——普段あまりお寺に行く機会がない人でも安心して行けそうですね。ちなみにお寺に行くときに服装などで気を付けるべきことはあるのでしょうか?

みほとけさん先輩の家に遊びに行くときをイメージしてもらえれば大丈夫だと思います。先輩の家に汚い靴下で上がるわけにはいかないし、汗くさい体で行くわけにもいかないですから。そうすれば髪型や服装もおのずとわかりますよね。もちろんすっぴんでも大丈夫です。あえて言うなら自分と仏さまだけの関係性と思えば、礼節さえ守れば、顔はすっぴんでも仏さまは許してくれると思います(笑)。手水で手を洗うとか、お賽銭を入れたときに手を叩かないなど細かいことは色々ありますが、騒がず静かに過ごせば問題ありません。

お寺で楽しむ「ヨガ」「坐禅」「カフェ」それぞれの魅力は?

仏像研究家・お笑い芸人 みほとけ お寺 石川県 總持寺祖院 坐禅

「石川県輪島市にある總持寺祖院の大坐禅大会(世界禅Challenge)に参加した時の写真です。瑩山禅師(けいざんぜんじ)の700年大遠忌企画として“拠点の總持寺と世界中の坐禅道場をつないで同時に坐禅をしてみよう”という、オンライン座禅会の世界規模版!」

——お寺でできるウェルネス体験として「ヨガ」「坐禅」「カフェ」を挙げていただきましたが、それぞれの魅力を教えてください。

みほとけさん ヨガは、仏教が始まるはるか前からインドで行われていたもので、実は坐禅の原型はヨガの坐法にあるんです。ものすごく親和性が高いものだからこそ、お寺でヨガをすることでその意味が深まることはまちがいありません! しかもお寺のお堂は、毎日お坊さんたちが清めている空間です。日常から切り離された神聖な空間でやるからこそ、気持ちよさが倍増するのだと思います。


——フィットネスとしてやるヨガとは違う感覚が味わえそうですね!

みほとけさん その通りです。多くの智慧を吸収できるのが、お寺の中でヨガをやる最大の魅力なのだと思います。ちなみにタイにはヨガの大学と呼ばれているワットポーというお寺があるのですが、そこにはさまざまなヨガのポーズをした石像があるんですよ。薬を使わず自分が動くことで健康になるという考え方が仏教と一緒に発展し、日本に伝来してきたと思うと感慨深いですよね。

——お寺でする坐禅の魅力はいかがでしょうか?

みほとけさん 仏教の始まりとともにずっとお坊さんがやり続けていることですから、お寺に行ったら体験すべきことのひとつ、と言ってもいいかもしれません。夏目漱石の小説『門』でも、人生に悩んで円覚寺で坐禅をするシーンがあるくらいなので、かなり昔から一般の方もお寺で坐禅を組んでいたのだと思います。

毎日を忙しく暮らしている人は、色んなことを同時に考えながら生きているので、意識がさまざまな場所にあると思うのですが、そのすべてを自分の中心へと戻すのが坐禅です。呼吸を整え、姿勢を整えることで体の内側もおのずと整います。

自分の現在地がどこにあるのかを確かめる行動なので、ただ座っていることが正解なんです。

——ただ座っているだけ、というのが難しそうな気もします。

みほとけさん 坐禅会をやっているお寺では、事前にやり方を教えてくれるので安心してください。一生懸命やるものではなく、教えてもらった型にはまるだけでOKなので、誰でも簡単にできますよ。さまざまな場所に散らばっていた意識が自分の中心に戻ってくるので、終わったあとの気持ちよさは格別です。

——最後にお寺でできるカフェ体験についても教えてください。

みほとけさん いちばんとっつきやすいのがカフェですかね。ヨガや坐禅のようなルールがないので、お庭が素敵なお寺ならお庭が見渡せる場所にカフェがあったり、スイーツやコーヒーにこだわってたカフェなど、お寺ごとに魅力の異なるカフェがあるのが特徴です。おいしいものを食べながら、お寺を眺めるというのも情緒があっていいですよね。ぜひ帰りには、お寺に寄ってお参りしてくださいね。

仏像研究家・お笑い芸人 みほとけ お寺 目黒 五百羅漢寺 カフェ・らかん茶屋

「目黒の五百羅漢寺に併設されたカフェ・らかん茶屋で夏季限定&数量限定で提供されているとうもろこしのかき氷がめちゃくちゃおいしいんです! 毎年必ず行ってます!」

みほとけさんがおすすめする、お寺で楽しめる「ヨガ」「坐禅」「カフェ」はこちら!

取材・文/菊池美里 企画・構成/木村美紀(yoi)