感動や感謝を伝えたつもりが、うまく伝わっていなかった。褒められたはずなのに、なぜか釈然としなかった......。現代人がモヤモヤする【失言】の数々を調査・分析している「失言研究所」所長の吉田麻衣子さんに、言いがちな「褒め失言」6つと「言い換えるならこう!」を教えていただきました。

お話を伺ったのは......
吉田麻衣子さん

失言研究所所長

吉田麻衣子さん

宮城県出身。 おしゃべり好きな蟹座のB型。
そのとき追いかけているテーマが趣味になりがちな、移り気系編集者。

<失言研究所とは?>
話し方や伝え方に関する数々のベストセラー書籍を手がけてきた、ライターや編集者ら“言葉のプロ"の研究員によって構成。 これまでに300人以上に取材をし、どんなシチュエーションで失言が生まれ、それがどのように人をモヤッとさせるのかを徹底的にリサーチ。「言い換えるならどんな言葉が適切か」までを考え、コミュニケーションのブラッシュアップに余念がない。 日常に潜む失言を誰かが見つけてくるたびに議論が止まらなくなり、会議が長引きがちなのが課題。研究員は随時募集中。 

1)服装や外見を褒めるとき:男性でも女性でも「かわいい」は万能ではない

失言 かわいい 失礼

イラスト/まつむらあきひろ(『よかれと思って言ったのに 実は人をモヤッとさせる 失言図鑑』より抜粋)、以下同

言い換えるなら→「素敵ですね」

吉田さん:服装やメイク、持ち物など、さまざまな対象に使われる「かわいい」ですが、もともとの意味は「小さいもの・弱いものに心惹かれるさま」。本来の意味を踏まえると目上の人には使うべきではないし、異性に対しては必要以上に意味ありげに響くので、万能な褒め言葉とは言いがたいワードです。褒めるときは、相手が誰であっても「素敵ですね」がまちがいない!と心得ましょう。 

2)人柄を褒めるとき:「明るい性格だね」は決めつけにもなる

言い換えるなら→「〇〇さんがいると場の雰囲気が明るくなるね」

吉田さん:笑顔を絶やさずハキハキと話す人に対して「明るいよね」と褒めても、素直に喜んでもらえるかは怪しいものです。「悩みがなさそうって意味?」と嫌味のように聞こえてしまったり、「今日は体調が悪いけど、元気よくふるまわなきゃ」というプレッシャーを与えたりしかねません。
相手のキャラクターを褒めるときは「〇〇さんがいるとまわりの人も明るくなるね」「〇〇さんがいてくれると安心する」など、あくまでも自分自身の感想・体感として伝えるのが◎。 

3)学歴を褒めるとき:「頭がいい」は嫌味に聞こえがち

言い換えるなら→「努力したんだね」「おめでとう!」

吉田さん:出身大学について「頭いいね」「優秀なんだね」と言われて嫌味に感じたという人も。「さすが〇〇大卒!」なども、偏差値重視の偏見のように聞こえます。
学校名を聞いたあとは「専攻は?」と学部の話に掘り下げてみたり、「〇〇駅の近くだよね」と地域の話に広げたりするなど、わざわざ“優秀さ”を褒めなくても、無理なく会話は続けられますよ。
お子さんの受験の報告を受けるなどの場面では「頑張ったんだね、おめでとう!」など、相手の努力をたたえる言葉を選びましょう。 

4)仕事の成果を褒めるとき:「すばらしい」が上から目線になる場合も

失言 すばらしい 偉そう 失礼

言い換えるなら→「〇〇のところが好きです」「イメージ以上です」

吉田さん:何かしてもらった相手への「すばらしい」はよく使われがちな褒め言葉ですが、よし悪しをジャッジしているようなニュアンスが含まれていて、“上から目線”ととらえられてしまうことがあります。これも目上の人には使わないほうがよい褒め言葉です。
資料や作品を褒めるなら「〇〇の部分が特に好きです」、仕事ぶりを褒めるなら「イメージしていた以上でした」など、具体的な感動を伝えるようにするとよいと思います。 

5)経験値を褒めるとき:「大御所」「ベテラン」は怖い人のニュアンスあり

言い換えるなら→「経験豊富」「頼りになる」

吉田さん:先輩や目上の人が「大御所」「ベテラン」と紹介されるのもよく耳にしますが、これは「年寄り」「お局」と言った“ちょっと怖い、恐れ多い人”のニュアンスが濃く出てしまう表現。それに、相当年配の人でないかぎり、自分のことを“ベテラン”だと自覚している人は滅多にいないように思います。
自分より経験豊富で頼りになる人であることを伝えたいのであれば、それをそのまま素直に表現したほうが、言われたほうもうれしいはず。

6)若くフレッシュであると褒めるとき:ストレートな「若い!」は相手が困るだけ

失言 若い 失礼 ハラスメント

言い換えるなら→「有名人では誰と同い年?」

吉田さん:後輩や部下など明らかに年下の相手に対して、ついつい感嘆を込めて「若いね〜!」と言ってしまいがちですが、これは自分と線引きをすることで、相手に必要以上に年齢差を感じさせてしまうひとこと。
相手の年齢が気になるのは、年長者を敬う文化で育った日本人ならではの感覚かもしれません。年齢を聞きたいときは「有名人では誰と同い年?」「中学生の頃〇〇が流行ってなかった?」など、間接的な会話から広げる工夫をしましょう。

▼参考
よかれと思って言ったのに 実は人をモヤッとさせる 失言図鑑
失言研究所(編)・黒川伊保子(解説)
発売日:2025年01月08日
発行:サンクチュアリ出版
価格:¥1400(本体)+税 
ISBNコード:978-4-8014-0151-8

構成・取材・文/月島華子