会社員として働きながら、ひとりで全国各地の温泉を巡る“ひとり温泉”の情報をSNSやブログで発信している、温泉オタク・永井千晴さん。そんな彼女が今までに訪れた温泉地の中から、yoi読者のためにおすすめの場所をピックアップしてくれました! 今回は【1泊1万円台で行ける温泉】4選をご紹介します。
【神奈川】初めての“ひとり温泉”向き!「養生館 はるのひかり」
一般的な温泉宿とは異なり、温泉と食による湯治や養生を目的としている「逗留湯治宿」。入浴中は黙浴、グループ利用不可、門限21時など、養生に専念する人のためのルールはありますが、その分自分の体や心と向き合う静謐な時間を過ごすことができます。温泉は大きな浴槽を仕切り、湯口の熱い浴槽から順にぬるい湯へと湯量を調整。微温湯好きも熱湯好きも満足できる設えになっています。
食事は基本的に野菜を中心とした養生食。玄米を主食に、野菜の煮物・揚げ物・酢の物・和え物をバランスよく提供します。自家菜園で採れる野菜も使用しており、夏は万願寺トウガラシ、長茄子、トマト、きゅうり、甘長トウガラシ、食用ほおずき、オクラなどを栽培。朝のハーブティーに使用するバジルやレモングラスなどのハーブもお宿で育てたもの。季節ごとに変わる旬の野菜をじっくりと味わってください。
永井さん的おすすめポイント
本当に好きで、いろいろな場所で紹介しているので「またこの人の紹介か」と宿の方は思っていらっしゃるかもしれないですが…(笑)。箱根というドメジャー温泉地にありながら、ひとりに優しいという時点で花丸! お宿自体も静かに過ごしてほしいというメッセージを発信されていますし、人数制限や年齢制限など養生宿としてのセットアップが完璧なんです。館内も清潔でシンプルで、無農薬の野菜を使った養生食も本当においしい。体にいいものをたくさん食べられて最高です。価格もお手頃で、ひとり客ばかりなので、初めての“ひとり温泉”にはベストなんじゃないかな。
養生館 はるのひかり
◆神奈川県足柄下郡箱根町湯本554
ひとり泊¥16600〜
https://harunohikari.com/
【千葉】鯛の煮付けが神レベル「小湊温泉 実入の湯 豊明殿」
南房総にある小さな漁師町・天津小湊(あまつこみなと)の、小高い丘の上にある小宿「豊明殿」。房総地区では珍しい、宿の敷地内で湧出する温泉「実入の湯」が自慢です。自家源泉の温泉を、テラス付き半露天風呂、露天風呂付き貸切風呂、海眺めのお風呂「おーしゃん美湯(びゆ)」などで楽しむことができます。
豊明殿もうひとつの自慢は、房総海の幸をふんだんに使ったお食事! 郷土で昔から愛されてきた漁師料理を中心に仕立てた、伝統的な磯料理が楽しめます。旬の新鮮なお魚を仕入れているので、おいしさは折り紙付き。金目鯛、あわび、伊勢海老といった贅沢食材を選べるコースや、漁師料理のなめろうも必食です。
永井さん的おすすめポイント
先日宿泊したばかりなのですが、地酒と房総の海鮮のマリアージュがたまらない! ここの金目鯛の煮付けはマジでやばいです、この値段でこの量でこのおいしさってすごすぎる、お魚好きな人はぜひ行ってほしい!(早口) 千葉は都内からすごく行きやすいのに、比較的どこも空いていて過ごしやすいですよね。海沿いなのでお部屋は全室オーシャンビューで、部屋数も12室と個人的にベストな数。快適に過ごせると思います。
小湊温泉 実入の湯 豊明殿
◆千葉県鴨川市内浦14
ひとり泊¥19800〜
https://www.homeiden.jp/
【新潟】夏に行きたい、ぬる湯の宿「栃尾又温泉 自在館」
栃尾又の地で約400年にわたり湯守を続けてきた「自在館」は、現在二十五代目の超老舗。約35度のぬる湯に長時間浸かることで、肉体的な疲労や精神的なストレスをなくし、未病の人たちの免疫機能を高める「現代湯治」のスタイルを提唱しています。万病の湯とも呼ばれるラジウム温泉がじっくりゆっくり優しく作用してくれるので、小さなお子さんや年配の方も安心して入浴できます。
下を流れる湯の沢川は、ロビーから泳ぐイワナが見えるほどの清流で、早朝にはオオルリやアカショウビンなどの姿や声に接することもしばしば。冬期は2~3mの積雪にすっぽり覆われ、その晴れた日の風景はまた格別です。
永井さん的おすすめポイント
約35度の源泉かけ流しに1時間以上浸かる、ぬる湯長風呂の湯治スタイルなので、夏に行くのにぴったりだと思っています。湯治宿だけあってとにかくゆっくり長く浸かってくださいね、というスタンスなので、まわりの騒がしさによる寂しさとは無縁。館内のレトロな雰囲気もすごくいいです。あとはアクセスのよさ! 上越新幹線で浦佐駅まで2時間ちょい、そこからは無料送迎バスで宿まで行けるので、車がない人もかなり手軽に行けますよ。
栃尾又温泉 自在館
◆新潟県魚沼市上折立66
ひとり泊 ¥15400〜
https://www.jizaikan.jp/
【長野】気分は明治の文豪!「中棚温泉 中棚荘」
100年以上続く温泉宿「中棚荘」は、明治の文豪・島崎藤村ゆかりの宿。藤村が自らに問うていた「もっと自分を新鮮に、そして簡素にすることはないか」という言葉をテーマに宿を営んでいます。廊下から階段を登った高台にある温泉棟には、昔の大名風呂を連想させる、柱や梁に手斧(ちょうな)で削った巨木を配した木の香漂う内湯が広がります。
客室は「大正館」と「平成館」に分かれており、中でも一番人気なのが「大正館」にある「藤村の間」。島崎藤村が『千曲川旅情の詩』を執筆した部屋を復原したお部屋です。大正浪漫の雰囲気あふれる空間は、トイレも共同、床の軋む廊下をそっと歩くというちょっぴり不便なものですが、それでも心豊かだった時代の名残がそこかしこに隠れています。
永井さん的おすすめポイント
実は取材で行かせていただいたのですが、すごく素敵だったなあ…と今でもうっとりしています。畳敷きの脱衣所からお風呂までがワンルームのような形になっていて、湯上がりで畳に乗れることや開けた空間がめちゃくちゃいい! 湯場の手入れも行き届いていて、源泉掛け流しの露天風呂も美しいんです。小諸駅からタクシーですぐだし、いい意味でまわりに何もなくて、この宿めがけて来ないと出合えないような立地も最高。島崎藤村ゆかりの文豪宿だけあって、観光地っぽくない生活と地続きな感じがとっても落ち着きます。
中棚温泉 中棚荘
◆長野県小諸市古城中棚
ひとり泊 ¥15400〜
https://nakadanasou.com/
取材・文・構成/堀越美香子 企画/木村美紀(yoi)