長引くウィズコロナ生活のなか、まだまだ海外旅行には行きにくいと感じている人も多いのでは。そんなときこそ、これまで旅したことのない、国内の魅力的な土地をゆっくり訪ねたいもの。2023年、体と心をリフレッシュする旅先としておすすめなのが、“雲の上の町”として知られる高知県の梼原(ゆすはら)です。

梼原は、町面積の91%が森林を占める、自然豊かな小さな町。日本3大カルストのひとつである「四国カルスト」に囲まれ、標高が最大1455mであることから"雲の上の町"とも呼ばれています。石灰岩特有の白い岩が点在する広大な高原は、晴れた日には太平洋から瀬戸内海までを見渡せる絶景スポット。夏は草原、冬は雪景色と四季折々の美しさで、ドライブコースとしても人気です。また、緑豊かな森には、清流の流れる水路沿いに全長3キロの遊歩道「久保谷森林セラピーロード」が。森林浴とイオンシャワーを浴びてそぞろ歩けば、日頃の疲れも知らぬ間に癒されそう!

四国カルストで放牧されている牛

広大な草原には4月から11月までカルスト牛が放牧され、のんびりと草を食んでいる。

世界でいちばん隈研吾建築に触れられる町

梼原の名を一躍、国内外に知らしめたのが、世界的建築家・隈研吾さんの手がけたいくつもの建築作品。1987年にこの地を訪れた隈さんは梼原公民館の木造建築に感銘を受け、その保存活動を皮切りに、梼原産の木材を使って町内にさまざまな施設を設計・建築してきました。隈さんご自身も「自分の原点」と呼ぶ梼原町は、まさに町全体がミュージアムなんです!

■梼原町立総合庁舎

その代表的な建築のひとつが、2006年に竣工した「梼原町立総合庁舎」。四万十川源流の清涼な環境で育った梼原産の杉材を使った木層パネルと複層ガラスの外装は、隈研吾さんならではの独特なデザイン。建築ファンだけでなく多くの観光客がこの建物を見に訪れる、人気のスポットです。

梼原町総合庁舎外観

杉材をふんだんに使った外観は、ユニークなデザインながら豊かな自然に溶け込むぬくもりも。

梼原町総合庁舎の内観

ホールに入ると、立派な杉材を生かしたダイナミックな構造をじっくり眺めることができる。

1階ホールの中央にしつらえられているのは、梼原町の伝統的な「茶堂」。町を歩くとあちこちで目に付く茅葺屋根の茶堂は、梼原街道を歩く旅人に茶菓子をふるまったという、町のもてなしの心を表す象徴なんだとか。天井まで吹き抜けのホールには明るい光が差し込み、杉材のぬくもりと相まって旅人を温かく迎え入れてくれます。



梼原町立総合庁舎
住所:高知県高岡郡梼原町梼原1444-1
電話:0889-65-1111
営業時間:8:00~17:00 土・日・祝日休
駐車場あり
※総合庁舎アトリウムの見学可能




■梼原町立図書館(雲の上の図書館)

梼原町立図書館

別名「雲の上の図書館」は、本を読まない人でもぜひ訪れたい必見の場所。

次に訪ねたいのは、文字通り木に包まれた森のような建物「梼原町立図書館」。木目調のユニークな外観に、足を踏み入れる前から心躍ります。靴を脱いでくつろげる館内には、木材がダイナミックに突き出したような天井など、隈さんのこだわりを感じさせる意匠がいっぱい。入り口すぐの大階段やあちこちに置かれた椅子やソファーに腰を据えて、心ゆくまで読書を楽しめます。カフェやボルダリング施設もあり、時を忘れてゆったりと過ごせそう。

梼原町立図書館

ベストショットを狙うなら、天井に張りめぐらされた杉材と中央の大階段を収めるのがおすすめ!



梼原町立図書館
住所:高知県高岡郡梼原町梼原1212-2
電話:0889-65-1900
営業時間:9:00~20:00 火曜・最終金曜休
駐車場20台




■まちの駅「ゆすはら」

続いて訪ねたいのが、町中でもひときわ目立つ茅葺の施設、まちの駅「ゆすはら」。2010年に誕生した観光スポットで、1階は特産物販売所、2・3階は宿泊施設となっています。施設の東側にある茅葺の壁面は、隈さんが町内の伝統的な茅葺屋根を参考に設計したもの。北面には形違いの木目板が複雑に配置されていて、写真のような角度からは、両面のユニークな構造を同時に見ることができます。

まちの駅「ゆすはら」外観

通気性・断熱性に優れた茅のファサードによって、見た目だけでなく快適な室内環境がもたらされているのだそう。

まちの駅「ゆすはら」の内観

杉丸太があちこちに立てられた1階の特産物販売所は、森の中をめぐるような造りに。

1階で販売されているのは、地元の農産物や、イノシシや鹿などのジビエ商品、梼原町の資源を生かした木工品や工芸品など。森の中のような開放的な空間で、旅のお土産選びを楽しんで。



まちの駅「ゆすはら」
住所:高知県高岡郡梼原町梼原1196-1
電話:0889-65-1117
営業時間:8:30~18:00 無休
駐車場10台




体と心を温める、韓国式サウナと韓国グルメ

そんな梼原町でぜひ訪ねたいのが、韓国料理店「レストラン鷹取」と、併設の韓国式低温サウナ「チムジルバン」。気軽に韓国旅行気分が味わえると、近年、幅広い世代の人気を集めています。

「チムジルバン」にはゲルマニウム鉱石房と岩塩房の2種類が用意されていて、専用のサウナ着やバスタオル、フェイスタオルも貸し出しているので手ぶらでOK。男女共用で、家族やパートナー、友人みんなで楽しむこともできます。壁一面にヒマラヤ産の岩塩が埋められ、暖色の室内が見るからに温かな印象なのが「岩塩房」。約50℃に設定されていて、体の芯からじんわりじっくり温まります。美肌やダイエットをはじめ、神経痛、関節リウマチ、皮膚病予防などの効果が期待できるんだとか。

■韓国式低温サウナ「チムジルバン」

岩塩房の室内

ゆったりと広い「岩塩房」の内部。

ゲルマニウム鉱石房の内部

照明を落とした「ゲルマニウム鉱石房」の内部。横たわってじっくり温まりたい。

約60℃に設定された「ゲルマニウム鉱石房」は、ゲルマニウム鉱石が遠赤外線を発することで散布されるマイナスイオンによって、血液中の不要な物質の排出を促進。期待される効果は、高血圧、肩こり、不眠症、腰痛、頭痛などの緩和に加え、便秘や食欲不振など。ふたつの低温サウナでじっくりと芯から温まり、体の中からきれいになれば、心まで整ってスッキリ!

■レストラン鷹取

人気の石焼ビビンバ

石焼ビビンバは、プラス300円でスープ、サラダ、デザート、キムチのセットも注文可能。

そして、旅のマストはやっぱり「おいしいもの」! 豊かな森や広大な景色を窓外に望む「レストラン鷹取」のおすすめは、熱々の石鍋にニンジン、ホウレンソウ、ひき肉、ぜんまいなどの具材がたっぷり入った石焼ビビンバ(¥800)。オリジナルのコチュジャンで好みの辛さに調節できるので、辛いものが苦手な人でも安心。ほかにも、サクッとした食感ともちもちの食べごたえがたまらないチヂミ(¥500)など、リーズナブルに韓国本場の味を堪能できます。チャミスルやチーズトッポギといった、韓国気分を自宅で楽しめるお土産も充実♪

レストラン鷹取



レストラン鷹取・チムジルバン
住所:高知県高岡郡梼原町梼原下折渡206
電話:0889-62-3308
営業時間:11:00~14:00 チムジルバン10:00~16:00
月曜休 ※祝日の場合は翌日休。現在休業中で3月から再開予定。
駐車場あり
サウナ料金¥1,000(利用時間約1時間半)
サウナ着・バスタオル・フェイスタオル貸出あり、シャワーあり






雄大な自然に包まれ、世界的な名建築をめぐり、サウナと熱々の韓国料理で身も心も温めて。国内にはこんなにも魅力的なデスティネーションがあったんだ! と感動すること間違いなし。今年のリフレッシュ旅は、「雲の上の町」へ出かけてみませんか?

文/浅香淳子(yoi)