『Hold The Girl』Rina Sawayama ¥2750 9月16日発売/ユニバーサル ミュージック
作詞・作曲/Rina Sawayama、Barney Lister、Jonny Lattimer 対訳/今井スミ
過去に閉じ込められた小さなあなたを解放させる
「私は誰にも受け入れてもらえない」「自分にはできない」「本当は嫌だけど、相手に合わせないと」…。新しいことに挑戦しようとしているときや、人間関係を築こうとしているとき、過去のトラウマがそれをはばんだり、本音にフタをさせたりしてはいないだろうか。そんなときは、新時代のポップアイコン、リナ・サワヤマの『Hold The Girl』を。見て見ぬふりをしていたインナーチャイルドに向き合い、自信を取り戻すきっかけをくれるから。
英国を拠点に活躍するリナ・サワヤマは、1990年生まれの新潟県出身で、5歳のときにイギリスに移住した。しばらくして両親は離婚。母とともにロンドンに残ったリナは、名門ケンブリッジ大学で政治学や心理学を学び、卒業後にアーティスト活動を開始した。
2020年にリリースされたデビューアルバム『SAWAYAMA』は、家族、アジア人であることや、パンセクシャルであることを公言しているリナのアイデンティティについて描かれており、米ニューヨーク・タイムズをはじめ50を超えるメディアが、その年のベストアルバムに選出するなど世界中で高評価を獲得。こうして大成功をおさめたにもかかわらず、英国の権威ある音楽賞では、日本国籍であるという理由で受賞候補からはずれるという事態が発生。リナが国籍条項の撤廃を訴えると、SNS上でハッシュタグを使った「#SawayamaIsBritish」運動が瞬く間に広がり、2021年には規定が変更されるという英国音楽業界にとってエポックメイキングなでき事が起きた。
このように社会によいインパクトを与える活動を展開しているリナが、セカンドアルバム『Hold The Girl』を9月16日にリリース。今作では、過去の自分と向き合い、未来へと歩みを進める喜びを表現している。リードトラック『This Hell』では、LGBTQ+コミュニティの人権がどんどん奪われている現状を訴え、こんなときこそコミュニティメンバー同士が愛で連帯すれば希望は見いだせると歌う。ちなみにリナは、8月20日・21日に開催された「Summer Sonic2022」に出演。この曲を披露したのち、「私が日本で同性婚をしようとしたらできない。G7の国の中で唯一、(セクシャルマイノリティの差別禁止に対する)プロテクションがない国です。私は日本人であることを誇りに思っているけれど、これはとても恥ずかしいことです。平等な権利を持つべきだと思う人たちは、私たちと、私たちのために戦ってください」と、日本のオーディエンスに訴えかけた。
Rina Sawayama - Hold The Girl (Official Music Video)
タイトル曲の『Hold The Girl』は、リナがセラピーを受けた経験を元に作ったそうで、インナーチャイルドを癒す術を教えてくれる。その方法が、曲中でリフレインされる〈胸の内まで手を差し伸べて、抱き寄せる 決してあなたを独りぼっちにはしない〉というフレーズ。それは、心の傷に目を向け、その存在を認めることだという。
この曲のMVでは、リナが家の外へ出ようとしても、目に見えない力によって部屋に繰り返し戻される様子が描かれる。何度振り出しに戻っても、内なる自分に手を差し伸べつづけたリナは、最終的に家の外へと出て、本来の自分を解放するように力強く踊る。そして、最後には、自分自身をギュッと抱きしめるようなしぐさを見せる。もしあなたも、インナーチャイルドによって自分に自信を持てずにいるなら、リナのようにバタフライハグをしながら、自分自身に「大丈夫だよ」と語りかけつづけてみて。そうしているうちに、トラウマから脱却し、本来の自分を取り戻すことができるはず。
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文/海渡理恵 編集/国分美由紀