私たちの心と体にまつわる悩みや課題を解決してくれる「フェムテック」の基礎知識について、医療ライターで『365日機嫌のいいカラダでいたい。現代を生きる私たちのヘルスケア・アップデートブック』の著者でもある及川夕子さんに教えていただきました。今回は、「月経カップ」について。
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Q4.「月経カップ」って本当にもれないの? 使い方が難しそうです
医療ライター
ライター/エディター。メノポーズカウンセラー。医療、健康、女性の社会課題をテーマに、雑誌、WEB、書籍などで幅広く活躍。著書に『365日機嫌のいいカラダでいたい。現代を生きる私たちのヘルスケア・アップデートブック』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『はたらく細胞LADY 10代女性が知っておきたい「性」の新知識』(講談社)など。
A4.正しく装着できていれば、もれる心配はほとんどなし!
生理のわずらわしさワースト1といえば、経血のもれ。立ち上がったときにじわりともれて、“洋服を汚してしまったかも…”と焦った経験、あなたにもあるのでは? そんな経血の悩みをなくす解決策のひとつが「月経カップ」です。生理中に腟内に挿入して、経血を溜めるシリコーン製のカップで、正しく装着できていれば、経血がもれる心配はほぼなく、洗って繰り返し使えるので経済的。エコでサスティナブルな、生理ライフを変える「第三の生理用品」ともいわれています。
【月経カップはこんなときにおすすめ】
●経血もれを気にせず普段と同じ生活を送りたい
●ナプキンで肌がかぶれやすい
●生理中でもなかなか頻繁にトイレへ行けない
●ナプキンを持ち歩いて荷物を増やしたくない
●生理を気にしないで温泉やプールに行きたい
●お財布にも環境にも優しい生理用品がいい
●においが気になる
●自分の経血量を知りたい
ひとつ5000円程度と決して安くはない月経カップですが、繰り返し長く使えるのでコスパがいい生理用品といえます。使用時間や容量(溜めておける経血量)は、一般的なナプキンやタンポンよりも長時間の使用が可能なものもあります。スポーツをするときや、こまめにトイレに行けないときにも助かるアイテムです。
装着のコツをつかむまで、焦らずゆっくり練習を
月経カップの最大のハードルは、「装着」といっても過言ではないでしょう。カップが合うかどうかは、試してみないことにはわかりません。でも、愛用者の多くは「装着さえマスターしてしまえば、つけているのを忘れるくらい快適」と口をそろえます。
初めて使うときは誰でも不安なもの。一度で入れ方をマスターできる人もいますが、スムーズに使えるようになるまで何回か練習が必要だったという人もいます。ある人は、「タンポンをずっと使ってきたから月経カップも問題ないと思っていたけれど、ぴったりフィットさせるまで生理周期にして3クールぐらい必要だった」と話していました。
だから、1回でうまくいかなくても落ち込むことはありません。一度コツをつかめば長く使っていけるものなので、焦らずにゆっくり練習していきましょう。慣れないうちは、腟用の潤滑ゼリーなどを使って滑りをよくしてから使ったり、吸水ショーツやナプキンを併用したりすると安心です。また、月経カップを安全に使うには、使用方法を守ることが大前提。添付文書や取り扱い説明書に書かれた使用法をきちんと読んでおきましょう。
自分に合った月経カップを選ぶためのポイント
月経カップは、鈴のような形をしていて、取り出すときのために底の方にステム(取っ手)がついています。ナプキンに吸水量の違いがあるように、月経カップの容量もいろいろ。柔らかい素材もあれば、硬めの素材もあって、形状もブランドによって違います。素材、サイズ(溜められる経血量)、形などを基準に、自分に合うものを選びましょう。あらかじめ知っておきたいポイントは次の3つです。
①素材
現在のような医療用シリコーン製の月経カップが日本で認可されたのは2016年。カップは腟に長時間入れておくものなので、医療機器として届出済みかどうかの確認を。素材は、変質しにくく生体適合性が立証されている「医療用シリコーン」を選ぶとよいでしょう。医療用シリコーン製カップは、数年から10年ほど使用できるといわれます。
②サイズや使用感
出産経験がない方や不安がある方は、小さいサイズがいいといわれますが、大きめサイズのほうがフィットしやすくもれにくいことも。結局のところ、腟の大きさややわらかさ・硬さの好みには個人差があるので、実際に使っていきながら自分に合ったものを選んでいくのがいいでしょう。使った人のレビューを参考にしたり、カスタマーサービスやショップのスタッフに相談したりすると選びやすいですよ。
③装着可能時間
メーカーによって、「スモール」「レギュラー」「ラージ」といったサイズがあり、受け止められる経血量はおおむね10〜30mlぐらい。生理1周期の経血量のトータルは、少ない人だと20ml、多い人でも140mlくらいといわれています。メーカーによって異なりますが、月経カップの最長使用可能時間は12時間。多い日の経血量は1日30〜400mlくらいとされていますから、標準的な使い方だと1日2〜3回を目安に経血を捨てて挿入し直すことになります。
使うときは必ず手を洗って清潔に。深呼吸をし、体の力を抜いてリラックスした状態で始めましょう。カップが取り出しにくいときには、下腹部に力を入れて何度かいきむようにすると、カップが下に降りてきて取り出しやすくなるので試してみてください。
カップの容量を超えてしまう前に取り替える必要があるので、量が多い日には1日2〜3回を目安に経血を捨てましょう。経血が少ない日など、滑りが悪いときには、月経カップ使用のために作られたウォーターベースの潤滑ゼリーを使うと滑りがよくなって挿入しやすくなります。個人差はありますが、何度か使っていくうちに、経血の量や取り替えのタイミングが把握できるようになっていくでしょう。
取材・文・構成/国分美由紀
出典/『365日機嫌のいいカラダでいたい。現代を生きる私たちのヘルスケア・アップデートブック』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)