私たちの心と体にまつわる悩みや課題を解決してくれる「フェムテック」の基礎知識について、医療ライターで『365日機嫌のいいカラダでいたい。現代を生きる私たちのヘルスケア・アップデートブック』の著者でもある及川夕子さんに教えていただきました。今回は、「妊娠・出産」とフェムテックについて。
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Q6.妊活を検討中です。妊娠・出産にまつわるフェムテックがあるなら、ぜひ知りたいです
医療ライター
ライター/エディター。メノポーズカウンセラー。医療、健康、女性の社会課題をテーマに、雑誌、WEB、書籍などで幅広く活躍。著書に『365日機嫌のいいカラダでいたい。現代を生きる私たちのヘルスケア・アップデートブック』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『はたらく細胞LADY 10代女性が知っておきたい「性」の新知識』(講談社)など。
A6.時期や状況にあわせて選べる製品やサービスがたくさんあります
最初にお伝えしておきたいのは、子どもを持つか持たないか、いつ持つのか、何人持つのかは個人の自由であり、当事者カップルの選択だということです。現代はいろいろな選択肢があり、生き方も多様化してきています。誰に強要されることもなく、子どもを持ちたいと思ったときに、さまざまな選択肢の中から自分に合う道を選べることが大切だと思います。でも、自分が納得して選択をするには知識や情報が必要ですよね。
「テクノロジー」と聞くと、なんだかとても遠い世界のことのように思えますが、妊娠・出産分野のフェムテックにも、身近な問題を解決してくれる便利な製品やサービスがたくさんあります。大まかに分類すると、次のようなカテゴリがあります。
●妊活期
生理周期管理アプリ、排卵日測定デバイス、婦人用電子体温計、子宮口キャップ(性交渉後に装着し、子宮頚部での精液の流出低減・保持を目的とする医療機器)など
●妊娠期
妊婦体調管理アプリ、胎児モニター(遠隔診療)、陣痛アプリ、出産・育児準備アプリなど
●授乳期
授乳支援デバイス、授乳インナー、ブラ、吸水ショーツなど
●産後期
育児支援アプリ、おさがりシェアアプリ、夫婦間・家族間コミュニケーションアプリ、骨盤底筋トレーニングデバイスなど
●ベビーテック
赤ちゃん見守りサービス、泣き声診断アプリ、ベビーセンサーなど
●切れ目のない支援として専門家によるオンライン医療相談(婦人科、小児科)
フェムテックを上手に取り入れて妊活の負担を軽減
いつか子どもを持ちたいと願うなら、のんびりともしていられないのが妊活の難しいところ。妊娠・出産には年齢や妊孕性(妊娠するための力)というものが大きく影響してきます。不妊治療には時間やお金がかかりますし、肉体的・心理的な負担も気になります。不妊の原因は男女半々にあるものの、不妊治療は女性の心身への負担が大きいのが実情です。
そして、妊活は情報収集から始まるといっても過言ではありません。妊活には、治療内容やスケジュール、費用までさまざまなステップがあります。また、生理や妊娠のことから妊娠しやすい体づくりまで、ヘルスケアの正しい知識も持っておいたほうがいいのも確かです。
そこで、フェムテックのひとつとして登場してきたのが、妊活に特化した相談サービス。例えば、不妊治療は人によって長い道のりになり、仕事を辞めざるを得なくなる人もいます。そんなときも寄り添ってくれる専門家がいたら、仕事を辞めたり、つらい思いを抱え続けたりしなくても済むかもしれません。
また、夫婦だけで不妊治療に向き合っていると、だんだん視野が狭くなってしまうかもしれません。相談サービスをセカンドオピニオンのように使ったり、心理カウンセリングを受けるようにメンタルケアの助けにしたりしながら、無理なく進んでいくことも賢い方法だと思います。
時代は大きく変わり、男性も女性も、自治体や企業も、妊活に積極的に取り組む時代になってきました。妊活に伴うさまざまな課題を解決すべく、たくさんのフェムテックの製品やサービスがリリースされてきています。加えて、国や企業が妊活を推進する動きが盛んであるということも、日本の特徴のひとつといえます。制度やテクノロジーを上手に使って、あなたとパートナーの妊活をラクに、取り組みやすくしていきましょう。
取材・文・構成/国分美由紀
出典/『365日機嫌のいいカラダでいたい。現代を生きる私たちのヘルスケア・アップデートブック』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)