私たちの心と体にまつわる悩みや課題を解決してくれる「フェムテック」の基礎知識について、医療ライターで『365日機嫌のいいカラダでいたい。現代を生きる私たちのヘルスケア・アップデートブック』の著者でもある及川夕子さんに教えていただきました。今回は、「更年期」とフェムテックについて。

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Double Brain/Shutterstock.com

Q7.更年期には一体どんなことが起こるのでしょうか? 更年期の悩みに対応できるフェムテックもありますか?

教えていただいたのは…
及川夕子

医療ライター

及川夕子

ライター/エディター。メノポーズカウンセラー。医療、健康、女性の社会課題をテーマに、雑誌、WEB、書籍などで幅広く活躍。著書に『365日機嫌のいいカラダでいたい。現代を生きる私たちのヘルスケア・アップデートブック』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『はたらく細胞LADY 10代女性が知っておきたい「性」の新知識』(講談社)など。

A7.更年期は女性ホルモンの低下によって、さまざまな不調が起こりやすくなります

「更年期」とは、閉経の前後10年間の時期のこと。卵巣がある女性なら歳を重ねると誰にでも訪れます。日本女性の平均閉経年齢は約50歳なので、おおよそ45歳〜55歳頃が更年期。といっても、閉経年齢には個人差があり、早い人では40代前半、遅い人では50代後半に閉経する人もいますので、その時期は人によってまちまちです。

卵巣機能の衰え・停止とともに、女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が乱高下しながら低下していき、その後限りなくゼロに近づくまでの「移行期」ともいえる更年期。“人生の大転換期”ともいわれるほどの急激な変化に体が慣れるまで、さまざまな不調に悩まされる人が多くなります。その不調(更年期症状)は200種類以上あるともいわれ、出方も十人十色。寝込んでしまう人もいれば、ラクに乗り切れる人もいます。重さも人によって異なり、複数の症状を持つ人も。なかには、仕事を辞めざるを得なかったり、夫婦関係が悪化したりする人もいて、その影響はキャリアや家族関係にまで及びます。

【更年期に起こりやすい主な症状】

●自律神経失調症状
のぼせ・ほてり・ホットフラッシュ、発汗、寒気、冷え、動悸、息苦しさ、疲労感、頭痛、肩こり、めまい

●メンタル不調
情緒不安定、気分の落ち込み、意欲の低下、抑うつ、イライラ、睡眠障害など

●その他の症状
運動器 : 腰痛、関節・筋肉痛、手のこわばり・むくみ・しびれ
消化器 : 食欲不振、便秘、下痢、吐き気、腹痛
皮膚粘膜 : 肌の乾燥、湿疹、かゆみ
泌尿生殖器 : 頻尿、尿もれ、性交痛、腟や外陰部のかゆみ・灼熱感

更年期特有の症状により、仕事や家事などの日常生活に支障をきたしている状態は「更年期障害」と呼ばれ、更年期の女性の2〜3割に起こるとされています。原因は、卵巣機能の低下(エストロゲンの急減)、本人の気質、環境という3つの要因が複雑にからみ合って起こります。

更年期をサポートしてくれるフェムテック

さまざまな変化が訪れる更年期ですが、それは閉経後の長い人生に備えるための準備期間とも言えます。「38」。この数字は、なんだと思いますか? 日本女性の平均寿命が87.74歳(2020年度)、平均閉経年齢が約50歳という数字から算出した、女性が閉経後に女性ホルモンの恩恵なしに生きていく年数です。これからは人生100年時代ともいわれていますから、38年どころかもっと長くなる可能性が高いでしょう。

初めての生理から閉経まで、女性の体は女性ホルモンの影響を受け続けます。特にエストロゲンは、骨、血管、脳、筋肉などの重要な臓器や組織を健やかに保ち、女性の心と体を病気から遠ざける働きをしてくれています。さらに、肌のハリや潤いを保つなど、見た目にも関係しています。

しかし、閉経後はエストロゲンが持つ色々な働きがなくなるため、全身にマイナスの影響が出てくるのは当然といえば当然。それまで健康に過ごしてきたとしても、やっぱり更年期は一大事なのです。

更年期を対象としたフェムテックは、更年期を意味する「メノポーズ(Menopause)」から「メノテック(Menotech)」とも呼ばれ、次のようなものがあります。

●更年期世代に向けたカウンセリングサービスやアプリ
●女性ホルモンのバランスを調べる簡易検査キット
●腟の乾燥・性交痛対策(潤滑ゼリーなど)
●冷えやほてりを緩和するインナー(医療機器として承認されている製品もある)
●骨盤底筋トレーニング(腟トレ)グッズ

いまや日本人女性の2人に1人は50歳以上。更年期は、セルフマネジメントの計画を立てる最後のチャンスともいわれます。ここで準備ができたかどうかで、10年、20年後の健康状態が変わってきます。フェムテックも賢く活用し、更年期を健やかに乗り切っていきたいですね。

取材・文・構成/国分美由紀
出典/『365日機嫌のいいカラダでいたい。現代を生きる私たちのヘルスケア・アップデートブック』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)