生理に対する偏見を払拭することを目指した、世界初の月経博物館「小紅厝月經博物館」が台湾に設立されたのは2022年のこと。創設者であるヴィヴィ・リン氏らの願いが詰まった空間に、エディターSが実際に行ってきました!
生理は日常のことだからこそ、にぎやかな下町の一角に
「小紅厝月經博物館」。隣は小さなかき氷屋さん。
台北の市街地からバスで15分ほど、飲食店や商店が立ち並ぶ歴史ある下町エリアに「小紅厝月經博物館」はあります。人道的活動・社会貢献する次世代リーダーに贈られる「ダイアナ・アワード(The Diana Awards)」を受賞した、ヴィヴィ・リン氏によって設立されました。
あえて都心ではなく、昔ながらの街並みが残る場所に生理をテーマにした博物館を設立したのは、「生理は日常のこと。生理をタブー化しない社会を」という考えから。そしてどんな環境のもとで暮らす人でも自由に来られるよう、入館料は無料に設定されています。
「小紅厝月經博物館」のある路地。細い道に商店が密集している。
古家屋をリノベーションした明るい館内は、観光客一人でも訪れやすい雰囲気。この日はたまたま見かけませんでしたが、参観者の4割近くは男性だそう!
入ってすぐの壁には、創設者の想いが書かれたパネルが貼られている。
まず目に入ってくるのは創設団体「小紅帽With Red」のステートメント。生理の有無に関係なく、この博物館を通して、自分自身をもう一度知り、多様性を受け入れることを学んでみませんか、という旨が書かれています。
一カ月に一度訪れる生理が、私たちの生活だけでなく、自分自身のアイデンティティに及ぼしている影響などを考えるきっかけを与えてくれます。
子宮の仕組みを説明する展示。
親しみやすいように布で作られ、愛らしい表情をしている子宮の仕組みを説明する展示。生理を難しい問題としてとらえず、気軽に学んでほしいという想いが伝わってきます。
生理の貧困や差別をなくすには? あらゆる角度から考えさせられる展示
印象的な真っ赤な壁。
「ついに私にも来た!」など、生理がきたときの気持ちが書かれた壁に囲まれた階段を上がって2階へ。
世界各国から訪れた人たちのメッセージを読むことができる。
2階には自分の体へメッセージを書くスペースがあり、訪れた人たちの「生理」に関する考えや経験、思い出を読むことができます。生理痛に関すること、初潮がきたときのこと、生理のわずらわしさなど、書かれていることはさまざま。「ここを訪れて、はじめて生理について深く考えることができた」というコメントも。
自分の考えを書いてみよう。
昔からの友人や家族、パートナーが生理について悩みを抱えているのかどうか、意外と知らない人も多いのでは? 生理をタブーにしているという意識はなくとも、日本では自然にそういった話題は避けてしまっている方も多いのかもしれません。
また、台湾ではパートナーが生理用品を買ってくることは当たり前のことらしいのですが、日本ではあまり一般的ではないのが現実。
展示を見ていると、パートナーと薬局に行って一緒に生理用品を選んだり、自分が愛用しているナプキンやタンポンなどを知ってもらったりしようと思えてくるから不思議。考えをアップデートする勇気を与えてくれるきっかけにあふれています。
昔の生理用品の展示も。
世界中から集めた月経の教材が並ぶ。
2階の別のスペースでは、生理への理解を深めるためのワークショップも開かれています。さまざまな世代の女性が生理について語るドキュメンタリー映像も見ることができ、あらゆる角度から生理について思考できる仕組みがふんだんに詰まっています。
お土産コーナーも。
お土産のコーナーには博物館のオリジナルキャラクターのTシャツやピアス、ステッカーも。
知ること、考えること、そして語ること。「小紅月經博物館」は生理をタブーとせず、自分たちのものとして考えるという視点を与えてくれる空間でした。
小紅厝月經博物館
台北市大同區重慶北路三段335巷40號
営業時間:11時〜19時
休館日:Instagram(https://www.instagram.com/periodmuseum.tw/)にて要確認
「小紅厝月經博物館」では、「生理の貧困」をなくすことを目標のひとつに掲げ、経済的な事情でナプキンを十分に買うことができない人たちのために、台湾全土に生理用品を送る取り組みをしている。また、生理用品を無償提供する施設などの場所をGoogleMapにまとめ、無料で発信中。
構成/渋谷香菜子