いつどこで、大きな災害が起こってもおかしくない今。防災グッズを備蓄しているという人も多いかもしれません。でも、その備蓄は女性だからこその困りごとに対応できているでしょうか?災害用女性下着を製作した『Amcas』代表で、被災地でのボランティア経験が豊富な表早紀さんと、フェムテック&フェムケアの知見を持つyoiが、「女性用防災セット」を考えました。
まず、最低限必要となる備蓄をチェック!
表さん:まず最初に備蓄を考えるとき、何がどのくらいの量必要なのかわからないですよね。そこでおすすめしたいのが、東京都が運営している「東京備蓄ナビ」というサイト。暮らしている人数や年齢を入力すると、必要な備蓄品とその量を教えてくれるんです。しかもそのままネットストアで購入までできます。
yoi:なんて便利な機能! まずこのサービスを知らない人が多そう。それにしても、一人暮らし女性で、水ってこんなに必要なんですね…。
表さん:必要な量って思ったより多いですよね。だからこれを目安にして、自分たちに必要なものを足していくのがいいかなと思います。
表さん&yoiが考えた、「女性用防災セット」
yoi:「東京備蓄ナビ」で紹介されているものにプラスして、女性ならではの困りごとにも対応できる「女性用防災セット」を一緒に考えていきましょう。
表さん:避難所に逃げてからの生活って、思った以上に長いんです。生きるか死ぬかという状況を脱したあとに、自分の尊厳を守ったり、体調を悪化させないためのアイテムが必要です。そんな視点で、アイテムを選んでいきましょう!
女性用防災アイテム①『Amcas』の災害用女性下着
災害用下着 survival wear ¥6490/株式会社オカモトヤ
yoi:まずは、表さんが代表をつとめる『Amcas』と株式会社オカモトヤが共同開発した災害用女性下着をセレクト! このアイテムは、どのような経緯で誕生したのでしょうか?
表さん:大学に入学した時期がコロナ禍、いわゆるコロナ入学世代だったので、学校にも行けずサークルに入ることもなく、とにかく時間があったんです。そんな中で、自分にできることを考えたときに、中高生の頃に行っていたボランティア活動が自分の中でもすごく大きな経験になっていたことに気づきました。
被災地で下着がなくて困っていた女性の方と出会ったことを思い出して、大学一年生の頃にはこのアイデアを何か形にできないかな、と考えていました。大学でお世話になっていた教授からの助言もあり、災害用女性下着を形にすべく立ち上げたのが『Amcas』です。パタンナーさんを探すところから始まり、下着が形になったのは大学3年生にあがる頃。そこから少しずつ営業に出たり、販売活動をスタートしました。
yoi:災害用女性下着のポイントを教えてください! まず、生地のこだわりは?
表さん:生地はスポーツニット素材を使っています。災害時は女性の下着が干してあることでその場に女性がいる、という目印になってしまい、そこから性犯罪につながる恐れもあります。だからとにかく肌から遠い素材を使うことで、“下着らしさ”を消していこうという発想からニットを選びました。ゴルフウェアなどにもよく使われる素材で、速乾性もあり汗をかいても蒸れにくくなっています。
あとは下着を配布するときに、一人一人サイズを確認して手渡して、となると手間が格段に増えるし、自分のサイズを申告しづらい人もいらっしゃいます。そのために縦にも横にもよく伸びて、フリーサイズで誰でも着用できることにもこだわりました。ウエストはゴムではなくひもで絞る形にして、妊婦さんでもはいていただけるようになっています。
yoi:ショーツのクロッチ部分の形が特徴的ですよね。
表さん:生理用品を貼りやすい形にしてあります。生理中でもはけますし、避難所では下着を替えられなくて生理用品を貼り替えて過ごすことも多いので。縫製の関係で縫い目が肌に当たってしまうので、気になる方は裏返して縫い目が表に出るようにはいていただいても大丈夫です。
yoi:キャミソールは、胸の部分がポケット状になっており、パッドが入れられるようになっているんですね!
表さん:そうなんです。もし手元にパッドがあれば入れていただいてもいいですし、なければティッシュとか、貴重品を入れてもいいと思っています。身につけてしまえば貴重品を盗られる不安も減らせますよね。色にもこだわっていて、白いTシャツで逃げてきたとしても透けにくい色を選びました。
表さん:もうひとつ大きな特徴として、制菌加工を施してあり、3日間洗わなくても菌が減っていく効果があります。においが気にならなかったり衛生的に着られるのももちろんですが、避難所はトイレの衛生面で心配も多く、糞便からノロウイルスが発生しやすかったりもして。制菌加工はそういった感染症の予防にも役立ちます。加工なので洗濯すると多少は効果が落ちるのですが、100回洗濯しても効果は変わらないことは保証しています。なので避難所にいる間は安心して使っていただけます。
女性用防災アイテム②中身の見えない消臭ポリ袋
yoi:ビニール袋は必要そうだな、とは思っていましたが、中身が見えない・消臭という点はあまり気にしたことがなかったです。
表さん:ゴミのにおいは無いほうが絶対にいいですし、捨てた生理用品を漁られたという話も耳にするので…。災害時に限ったことではないですが、なるべく外から中身がわからないほうがいいと思います。
yoi:100円ショップでも販売されているから用意しやすいですね。
女性用防災アイテム③デリケートゾーン用ワイプ
femia デリケートウエットシート (左)無香料・(右)サボンの香り 各¥398/レック
yoi:デリケートゾーンの拭き取りワイプは、お風呂に入れないときでも清潔に保てるからあるとうれしいですよね!
表さん:そうですね。体を拭いたりトイレットペーパーの代わりにもなるので、大容量のものがあると安心だと思います。
女性用防災アイテム④ラップタオル
表さん:タオルは、大きめのものを準備しておいたほうがいいです。着替えるときに、タオルを被りながら着替えることもできるので。
yoi:タオルは大きめで、着替えるときに体を覆えるもの…それって、子どもの頃プールの授業で使っていた、スナップボタン付きのタオルだとどうでしょう? これラップタオルという名前なんですね。
表さん:それすごくいいと思います! 避難所では布団の中で着替えることが多いですが、ラップタオルなら起き上がった状態で着替えられるし。あとトイレに入るときも被っておけば、上から覗かれたとしても安心ですよね。
yoi:トイレを上から覗かれる…! 考えると悲しくなってくるような“もしも”ばかりですが、そういったことも想定しておくことが自分の身を守るんですね。
表さん:なんでこんなことに気を遣わなければならないのかって思いますけど、一人でも多くの女性に安全に快適に過ごしてほしいので、ぜひ準備しておいてほしいです。ラップタオルは子ども用でもいいですが、ちゃんと長さがあるものだとよりいいですね。
女性用防災アイテム⑤おりものシート⑥ナプキン⑦使い捨て布ナプキン⑧ショーツ型ナプキン
(左上から時計回りに)エリスショーツ 4個入 ¥547/エリエール FEMINATURE Cotton Liner 21枚入 ¥1760/VENUS LAB ソフィ はだおもい オーガニックコットン100% 15個入 ¥440/ユニ・チャーム サラサーティコットン100 2枚重ね 72枚入 ¥500/小林製薬
yoi:下着の替えがなくて生理用ナプキンを貼り付けている方が多かったんですよね。であれば、2枚重ねになっているおりものシートならさらに枚数を減らせるし、快適なのでは?
表さん:そうですね! それがかぶれにくかったり、肌にやさしい素材だとなおいいと思います。
yoi:使い捨て布ナプキンの「コットンライナー」もショーツに貼り付けられるし、そもそも肌が弱い人のために作られたものだから、ちょうどよさそうです。
表さん:そんなものがあるんですね、すごく便利! あとは生理用ナプキンも、できればオーガニック系のナチュラルなものがおすすめです。慣れない環境やメンタルの不安定さから、肌が過敏になったりもするので。
yoi:なるほど、じゃあナプキンはオーガニックコットンのものがいいですね。あとはモレを気にしなくていいショーツ型ナプキンも、持っておくと安心できそう。
表さん:布団や服を汚してしまう心配がないのはうれしいですね。
女性用防災アイテム⑨オールインワンのメイク用品
ONELIST オールインワンデイクリーム ¥990/ナリス化粧品
表さん:メイク用品っていうと女性のワガママだと思う人もいるかもしれませんが、被災地の状況を伝えるテレビの映像に映ってしまうことは結構あるので、そのときにノーメイクなのはつらい、という声もよく聞いたんです。
yoi:たしかに、そもそも大勢の人の前でノーメイクでいることがストレスになる人もいますよね。心を守るためにも、大切なアイテムですね。最近、オールインワンでスキンケア&軽めのファンデーションまで完結できるコスメを紹介してもらったのですが、これとかどうでしょう!?
表さん:すごくいいですね! 少し肌をトーンアップできるだけでも気持ちはかなり軽くなると思います。あとは眉が気になる方は、アイブロウペンシル1本だけでも入れておくといいかもしれませんね。
女性用防災アイテム⑩二人用のポップアップテント
表さん:避難所ってそもそも授乳室とか更衣室がないので、その代わりとして二人用のテントはおすすめです。ペグとか骨組みが必要ない、ポップアップタイプが使いやすいと思いますね。
yoi:小さめのテントって、数百円〜1000円台くらいからあるんだ! 100円ショップやプチプラの雑貨店でも販売されてるし、ネットだとさらに安い…! 入り口のところをタオルで塞いだりするだけで、プライベート空間ができますよね。
表さん:それがあるだけで、かなり快適になると思います。あとはキャンプとかサバイバル用品を見てみると、そのまま防災に応用できるものがたくさん見つかりますよ。
表さんとyoiで考えた「女性用防災セット」はこちら!
入っているもの
・中身の見えない消臭ポリ袋
・ポップアップテント
・ラップタオル
・オールインワンファンデーション(ONELIST/ナリス化粧品)
・デリケートゾーン用ウェットシート(femia デリケートウエットシート/レック)
・使い捨て布ナプキン(FEMINATURE Cotton Liner/VENUS LAB)
・二枚重ねのおりものシート(サラサーティコットン100 2枚重ね/小林製薬)
・生理用ナプキン(ソフィ はだおもい オーガニックコットン100%/ユニ・チャーム)
・ショーツ型ナプキン(エリスショーツ/エリエール)
・「Amcas」の災害用女性下着(写真には掲載なし)
備蓄について調べても、女性のリアルに迫ったセットはなかなか見つからないもの。このまま同じものをそろえるのがオススメです。もちろん使いやすいもの・使い慣れているものに替えたり、自分に必要なものをプラスしてもOK。これを機に、ぜひ自分のための防災セットを改めて考えてみてください。
撮影/TOWA、柳香穂 取材・文/堀越美香子 画像デザイン・企画・構成/木村美紀(yoi)