産前・産後の女性に寄り添い、家事や育児などさまざまなサポートをしてくれる専門家「産後ドゥーラ」。人気Podcast番組『OVER THE SUN』でお便りが寄せられたことをきっかけに、これまで以上に関心を寄せる人が増えているそう。そもそも「産後ドゥーラ」を利用すると、どのような援助を受けられるのか。具体的なサポート内容から、料金の目安、ベビーシッターや家事代行との違いまで、『一般社団法人 ドゥーラ協会』代表理事の宗祥子さんと、実際にドゥーラとして活動する桑原恵美さんにお話を伺いました。

産後ドゥーラ とは 専門家が解説 システム 料金

宗 祥子

一般社団法人 ドゥーラ協会代表理事

宗 祥子

松が丘助産院院長、助産師、(公社)東京都助産師会会長。区役所での勤務後、助産師の資格を取得、1998年に中野区に松が丘助産院を開業。2012年には『一般社団法人 ドゥーラ協会』を設立し、妊娠中から、出産・産後ケアまで、女性の包括的なサポートを行なっている。

「産後ドゥーラ」とは? どんなサポートをしてくれる?

●不安定になりやすい産前・産後の母親をサポート。ベビーシッターや家事代行との違いは?

「産後ドゥーラをひと言で表すなら、“母親に寄り添い、支えてくれる人”」と語るのは、『一般社団法人 ドゥーラ協会』代表理事の宗さん。

もともと助産師として働くなかで、特に産後の女性が抱えるプレッシャーの大きさを感じていました。体もまだ回復していないのに24時間休みなく気を張って、そのうえ、家の仕事もしなければならない。誰かに助けを求めたいのに、身近に頼れる人がおらず簡単に声を上げることができない。当時はそんな人が本当に多かったんです。そこで、家事や育児はもちろん、母親のエモーショナルサポートをする人が必要だと思い、協会を設立しました。

ベビーシッターの場合は主に子どものお世話を、家事代行の場合は料理や掃除など、お願いした家事だけをサポートしてくれるのが一般的ですが、産後ドゥーラはタスクの垣根なく、包括的なサポートを柔軟に行なっています。例えば、『とにかく、今のつらい状況をどうにかしたい』という依頼が来れば、寄り添って話を聞いたり、『依頼した時点では子どもを見てほしかったけれど、当日になったら寝てしまったので、やはり料理をお願いしたい』というリクエストにも対応可能です。また、母親だけでなくほかの家族への沐浴指導なども行なっています」

会社からの派遣サービスではないところも、大きな特徴。資格を持った産後ドゥーラと利用者の間での個人契約として、サポートのプランを直接交渉できるので、各家庭のニーズに合ったきめ細かいサービスが提供できるのだそう。保育士や栄養士、整体やアロマセラピストの資格を持ったドゥーラを選択することもできます。

産後ドゥーラ とは サポート内容 専門家が解説

●料金体制は? 何歳まで利用できる?

「料金は、資格やサポート内容、地域によって変わりますが、1時間3000円前後が目安です。自治体によっては補助金が出る場合もあるので、(東京都では新宿区や中野区、江東区などの13区4市、その他神奈川県、千葉県、静岡県の一部地域など)一般社団法人ドゥーラ協会のHPや各自治体のHPなどから確認してみてください。

また、サポートは『産後』だけでなく、妊娠中から利用可能。子どもが生まれてから1年半までのサポートを想定していますが、“何歳以降は利用できない”という規定は設けていません。担当のドゥーラに、まずは相談してみてください」(代表理事・宗さん)

講義、実習、テスト、面談。養成講座で産後ドゥーラの高い質を保証

設立から10年がたち、ドゥーラ協会が認定する資格保有者は、約700人になるといいます。養成講座を受講し、試験、面談に合格すれば、「一般社団法人ドゥーラ協会認定産後ドゥーラ」の認定を受け、個人事業主として働くことができます。

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●資格取得の方法

「協会では、妊娠・出産の知識に加え、産後のお母さんの心と体の状態を理解するための養成講座を行なっています。そのなかで、産後ドゥーラとしてのあり方、コミュニケーションの方法、乳児の保育実習、調理実習、救命救急実習など、産後のサポートに必要なあらゆる知識について学びます。高い質を守るためにも、この過程を私たちはとても大切にしています」(宗さん)

STEP1
産後ドゥーラ養成講座(講義・実習)

STEP2
筆記試験

STEP3
理事面談

STEP4
修了式・産後ドゥーラ認定

STEP5
開業研修

STEP6
開業

STEP7
フォローアップ研修

●資格取得までの期間は? 費用は?

受講から認定にかかる期間は、4カ月半程度。毎週1回、10時〜16時前後で授業があり、平日コースと、土日コースが選べる。費用は約40万円と決して安くはないものの、受講希望者は年々増加しているのだそう。

「子育て経験の有無は問いません。産後ドゥーラの活動に賛同する、25歳以上の心身ともに健康な女性なら誰でも講座に申し込むことができます。実際に幅広い年齢の方々がドゥーラとして活躍していますよ」(宗さん)

「産後ドゥーラ」として働く桑原恵美さんの仕事内容

産後ドゥーラ 専門家が解説 仕事内容

では、実際に産後ドゥーラとして活動する方は、日々どのようなサポートを行い、母親たちとコミュニケーションをとっているのでしょうか。今回話を伺った桑原恵美さんは、ご自身も2児の母だと言います。

「産後ドゥーラとして働く前は一般企業に勤めていて、毎日朝から晩までバリバリ仕事をしていました。ところが、二人目の子どもを出産した際、次男が障がいを持って生まれてきて、家から一歩も出られない日があったりと、育児中心の生活に一変しました。あるとき病院の先生に、『あなたは、ご自身で思っているよりも大変な状況ですよ』と言われたことをきっかけに、ヘルパーさんをお願いすることに。とても助けていただきましたが、“ここまではできますが、ここからはできません”という制限もあり、また、私自身のエモーショナルサポートはもちろんなく、もっと包括的なサポートがあればいいのになと思ったのが正直なところでした。そんなことをオーストラリアに住む友人に話したら、『こっちでは、ドゥーラというサポートがあるよ』と教えてもらったんです。調べてみると、日本にも協会があることを知りました」(桑原さん)


産後ドゥーラについて知っていくなかで、サポートを受ける側を経験したからこそ、困っている人を助けることができるのではないか、と自身でも資格の取得を決意したそう。活動を始めて7年がたつ桑原さんが、サポートをする上で気を付けていることとは?

「まず、依頼者を絶対に否定しないことです。以前、あるヘルパーさんに『まずはお母さんが元気でいないと』と言われたことがあって、『こっちが元気になる方法を知りたいよ!』と、もやもやしたことを覚えています。産後は環境が大きく変わるうえにホルモンバランスも乱れ、自分が思っている以上にしんどい時期。そんな中で一生懸命育児をしているお母さんに、『あなたの選択、判断は間違っていない』と肯定する立場でいたいと思っています。

また、依頼者とほどよい距離を保つことも大切にしています。定期的にお会いしていろいろな話ができるようになったとしても、そこは必ず守ります。知り合いでもなく友人でもなく、他人だからこそ話せることがあると思うので。例えば何かを聞かれたら、自分が持っている情報は提示するけれど、その中からどれを選択するかは相手に委ねる。その選択を尊重しながら、ストレスを減らすお手伝いができたらと考えています」(桑原さん)

親も子どもも、個性があるから。教科書どおりにできなくて当たり前

出産、子育てに不安はつきもの。その不安を少しでも減らすために、気軽にドゥーラを活用してほしい、とドゥーラ協会創設者の宗さんは言います。

「産後の女性はとにかく頑張りすぎる傾向があります。『みんなやっているのに自分だけできない』『育児書に書いてある通りにならないのは、私のやり方が間違えているから?』など、誰にも相談できずに一人悩んでいる方はとても多い。でも、赤ちゃんもお母さんもそれぞれ個性がありますから、教科書どおりにならなくて当たり前。大変だと思ったら、気軽に産後ドゥーラに頼ってほしいです。ただ話を聞いてほしい、というご依頼でも構いません」(代表理事・宗さん)

サポートを利用したい場合は、ドゥーラ協会のHPから予約が可能。それぞれの得意分野や保有資格、対応可能エリアなどを見ながら、自分の要望に合ったドゥーラを探してみてください。

取材・文/野崎千衣子 イラスト/Ayumi Takahashi 企画・編集/種谷美波(yoi)