今年、第1子を出産した性教育YouTuberのシオリーヌさん。連載『SAY(性) HELLO!』では、出産を振り返って思うことや、始まったばかりの育児について、3回にわたってお届けします。Vol.3となる今回は、出産後の体や性の変化、子どもとの向き合い方、今後の目標などについて伺います。

授乳後のおっぱいは、梅干しみたいにシワが寄る!

出産後の体の変化は? セックスは? 子どもとの向き合い方は? シオリーヌの出産&育児体験記 Vol.3_1

—— 妊娠・出産を経て、生活環境はもちろんですが、体にも大きな変化があったと思います。その変化はどう受け止めていますか?

まず、自分の体から母乳が出る、という現象がかなりシュールで、今もまだ慣れない(笑)。おっぱいって授乳するたびに萎んで、梅干しみたいにシワが寄るんですよ! そこからまた次の授乳までにパンパンに張ってくる。そういう変化を、毎回のように不思議だな〜と思って見ていますね。

あとは、授乳によって痩せたことも大きな変化の一つです。YouTubeのコメントでも「スリムになりましたね!」と言われることが多いですが、かつて摂食障害に苦しんだ私としては、それがじんわり苦しくて。出産の前後で体型が大きく変化するのは当然のことなのに、母乳をやめて元の体型に戻ったら、「太りましたね」と言われてしまいそうで、少し怖くもあります。たとえ褒める気持ちであっても、私の外見についてはそっとしておいてほしい、というのが正直なところです。

出産後の体の変化は? セックスは? 子どもとの向き合い方は? シオリーヌの出産&育児体験記 Vol.3_2

—— 体の変化以外に、精神面では何か変化がありましたか?

出産したら自分の中から“母性なるもの”が湧いてきたりするのかな?と思ったりしましたが、特にそういうこともなく…。母になったからといって、気持ちは何も変わっていないと思います。「私とこの子がいて、人と人として関係性が始まった」という状況になっただけ。ただ、保育園に行きはじめて多くの人と関わるようになったり、「この子の母親」として出会う人が増えると、そう思えないこともあるかもしれない、とは覚悟していますね。

確実に変わったことも一つあります。それは、「防災への意識」。避難グッズも見直したし、「地震が起こったらどうしよう」「前から来た車がぶつかってきたら…」と考えることが増えました。自分でも意外でしたが、出産したら危機管理能力は確実に高まった気がするな。

寝る間もない子育て中は、「セックスなんて無理」が本音かも

出産後の体の変化は? セックスは? 子どもとの向き合い方は? シオリーヌの出産&育児体験記 Vol.3_3

—— この連載のVol.9では「子育て中のセックス、みんなどうしてる?」というトピックで、実際に妊娠・出産を経験された方々と話し合いましたよね。インスタグラムで募集した、産後の性への意識アンケートでも、「膣=産道という認識になってしまった」「世の中にあふれる性的なコンテンツに嫌悪感を抱くようになった」という声がありました。シオリーヌさん自身は、何か変化を感じることはありましたか。

私は、産前・産後を通して、性に関して特に大きな変化は感じていません。医学的には、産後1カ月の健診で問題なく体が回復していれば、性交はOKになります。実際に、ひと月ちょっとで自分の体も本調子に戻ってきていたので、「しようと思えばできるんだろうな」という感じではありました。ただ、欲求的な部分はというと、疲れていたり眠いときって、それどころじゃないですよね。今はあまりにも子育てが忙しくて疲れているので、セックスよりも寝る時間を優先したいというのが正直なところ。でも、夫であるつくしとのスキンシップに嫌悪感を抱くようなことはないです。

—— 嫌悪感を抱いてしまう場合と、そうでない場合、その違いはどこにあるのでしょうか…。

ホルモンバランスの関係はもちろん、「どこまで子育てを一緒にしているか」も一つの理由として挙げられると思います。自分は子育てを必死に頑張って疲れているのに、向こうは育児も参加せず、今までと同じようにスキンシップを求めてきたら…そう考えると、嫌悪感がつのって愛情がなくなってしまのはよく理解できる。だから家族の関係を良好に保つためにも、パートナーと一緒に育児を担っていくことが大切だと、個人的には思いますね。

出産後の体の変化は? セックスは? 子どもとの向き合い方は? シオリーヌの出産&育児体験記 Vol.3_4

生き方もジェンダーも、いずれこの子が決めること

出産後の体の変化は? セックスは? 子どもとの向き合い方は? シオリーヌの出産&育児体験記 Vol.3_5

—— 産まれた赤ちゃんの性別について、YouTube動画では「将来的にこの子がどうしたいか、どう生きていきたいかはわからないけれど、現状では女の子ということになっています」というふうに紹介していましたね。

以前のインタビューでも話しましたが、私たちは妊娠中から、赤ちゃんの性別は公表しないようにしていたんです。「男の子だからこう」「女の子だからこう」といった固定観念を、生まれる前から押し付けたくないなと思っていて。それは生まれてからも変わりません。子どもの服を買うときも、できるだけニュートラルなデザインのものを選ぶように意識しています。

でも先日、「もしこの子が大きくなって、すごくフェミニンなものを好む子に育ったとしたら、自分の小さい頃の写真を見返して、『もっと可愛らしい服が着たかった!』と思うかもしれないね」という話になって。それで最近は、なるべく幅広いジャンルの服を買うようにしているんです。あらゆるジャンルを網羅しておけば、大きくなったときに本人が「これいいね!」と思える服を着た写真が1枚くらいはあるかもしれない(笑)。だから、あえてフリフリの可愛らしい服も買っておこうと思っています。早く自分の意思で好きなものを選べるくらい成長してほしい! 本人が望むなら、上がドットで下がボーダーでも、なんでもいいんです。

—— シオリーヌさんのお話を聞いていると、赤ちゃんをひとりの個人として、リスペクトする意識が感じられます。

視聴者さんからも、「オムツ替えのときの声かけが、対赤ちゃんではなく、対人という感じがする」とコメントいただきます(笑)。助産師をしていたときも、新生児に赤ちゃん言葉ではなく、丁寧語で話しかける癖があって。ただ、これから子どもが成長していく中で、一緒に過ごす時間が長くなればなるほど、冷静でいることが難しくなってくるのかもしれません。この子をコントロールしようとしてしまったり、選択肢を狭めてしまうことが出てくるかもしれない。もしそういうことがあったら、つくしとお互いに指摘し合おう、と言っています。

子どもがいても、自分の人生を充実させる意味

出産後の体の変化は? セックスは? 子どもとの向き合い方は? シオリーヌの出産&育児体験記 Vol.3_6

—— お話を聞いて、すごくシオリーヌさんらしい子育てだと感じました。

まだ出産して間もないですが、最近子育て支援事業を行う会社を設立したり、「いつか大学院に行きたい」という目標があります。ただ、そうやって挑戦したい気持ちが湧くたびに、心のどこかで「子どもがいるのに、いいのかな」と後ろめたさを感じてしまうこともある。これは、きっと多くの親が向き合っている葛藤で、今後もずっと悩み、考え続けていくことかなと覚悟しています。

ただ、この子が大きくなったとき、「本当は起業したかったのに、子育て中だったから我慢した」とは、絶対に言いたくない。子どもにとって居心地のいい親であるためにも、私は自分の人生を充実させなければいけない、と思っている。だから、子育てをしながらでも、自分の人生でやりたいことは、今後も挑戦していくつもりです!

取材・文/板垣千春 写真/橋本美花 企画・編集/種谷美波(yoi)