今回のお悩みは…
子どもを産んでから、セックスする気になれません。相手はしたいと言うけれど、気持ち的にも時間的にもそれどころじゃない! 出産後の夫婦のすれ違いにどう向き合えばよいでしょうか。
セックスにまつわる悩みについて、みんなで語り合う連載。今回は女性3名をお招きして、オンライン上でトーク。助産師で性教育YouTuberのシオリーヌさんと「産後のセックス」をテーマにあれこれ語り合いました!
今回の参加者は…
Aさん:30代後半、子育てひろば施設管理スタッフ。既婚で子どもは3人
Bさん:30代後半、会社員。既婚で子どもは2人
Cさん:40代前半、飲食店経営・子育てサロン主宰。既婚で子どもは3人
産後の「したくない」時期、経験者はどう向き合った?
A 私は子どもが3人いますが、出産後すぐは毎回、セックスする気が起きなくて。そもそも授乳に忙しかったりすごく疲れていたりしてそれどころではないし、そういう雰囲気になったとしても途中で子どもが起きてしまって、中断せざるを得なかったり。パートナーに「触ってほしくない」と感じる時期もありましたね。
シオリーヌ 子育てが始まると誰にでも起こる可能性のある状況ですよね。慢性的に睡眠不足になりがちなうえに、ホルモンバランスの変化や身体的なさまざまなトラブルなど、性的なスキンシップを取ることよりもはるかに大きな問題が自分の体に積み重なってくる。産後に性的欲求が低くなるというのは、ある意味では自然なことなのでは。
A 特に授乳をしている期間は、「胸は子どものごはんの対象」という感覚になってしまいました。だからパートナーから性的なものとして扱われたときに、自分の頭の中でうまくスイッチが切り替わらないんです。
シオリーヌ 過去のテーマでも、自分のおっぱいは子どものものなのに、それをパートナーが性的な対象として見ていることにすごくギャップを感じてしまう人もいるという話が出ましたね。
一同 (深く頷く)
「こんなおっぱいはセクシーじゃない」体型変化への嫌悪感
B 私はどちらかというと、出産後自分自身の体の変化を受け入れられなくて、それがセックスへの拒否感につながっていきました。例えば授乳にしても、まるで牛が乳搾りをされているような感覚を持ってしまい、「こんなおっぱいはセクシーじゃない」と思ってしまったり。帝王切開の傷あとが残っているのも嫌でしたね。第一子を産むまでは、出産を経てもこれまでと変わらない自分でいたいと思っていたから、思い描いていた理想と実際の姿のギャップに苦しみました。Aさんのように「おっぱいは子どものためのもの」と思えるお母さんのことを羨ましく感じたこともあります。今はもちろん子どもは可愛いですが、産後しばらくはつらかったですね。
シオリーヌ 私も今妊娠中なのですが、出産・子育てに向けて変化していく自分自身の体を目の当たりにし、ボディイメージがものすごく混乱しています。自分に対する性的なイメージも、ガラッと変わらざるを得ないタイミングなのかと実感しているところです。Bさんはその後、どんなアクションを取ったんですか?
B 最初の子のときは授乳期間が長かったこともあり、1年くらいしてやっと「そういうことをしてもいいかな」という気持ちになりました。なので夫にそう伝えましたね。でも実は、そこに至るまでにいろいろと失敗していて、夫婦関係が険悪な時期もありました。さまざまな要因がありますが、そもそもきちんと話し合えていなかったことが亀裂を生んでいたんだと思います。
シオリーヌ やっぱりそこで、コミュニケーションを取ろうと一歩を踏み出すことが大事なんですね!
B はい、ものすごく大事だと思います。私が相手と話し合ってみて思ったのは、性欲の表れ方は個人によってもタイミングによっても全然違うんだということ。だからちゃんと伝えておいたほうがよかったなと反省しました。
人生のフェーズによってセックスへの気持ちも変化する
シオリーヌ 人生のいろんな段階で、性に対する気持ちがどう移り変わっていくのかは、自分でも予想できないことですよね。私もずっと、「おじいちゃん・おばあちゃんになっても性的なスキンシップがあったら素敵だな」と思っていたけれど、年を重ねていくうちに、自分は年齢とともにそういう欲求が減っていくタイプである可能性もあるよなと思うようになりました。
C うちは今、セックスレスの状態です。コロナウイルスの影響で寝室を別にしていたこともあって、特別に時間を取るというのが難しくなりました。今まではそういう雰囲気になれば特に拒むこともなく、「いつでもどうぞ」という感じだったのですが…。でも、そのことについて特に夫と話したりもしていないんです。ほかにやりたいこともたくさんあるし「もうなくてもいいのかな」という気持ちになりかけています。一方で、それを寂しいと思うときも、どうにかしたいと思うときもあるんですよね。自分の気持ちにだって、正直答えは出ていないですね。
B その気持ちはすごくよくわかります。私は最初の子のときに産後にうつのような症状が出てしまい、「もう子どもは1人でいいかな」という気持ちでした。でも、夫はもっと子どもが欲かった。それで関係性がすごくギクシャクしてしまって。その頃は、自分でも「このままじゃいけないな」と思いながらも何もできない状態が続いていました。だから自分でも自分の気持ちに答えが出ないというのは、すごく共感しますね。
実際に夫婦で話し合いをしたAさんは…
A うちも揉めに揉めていた時期がありました。毎晩のように話し合いをして、最終的にそのなかで「セックスはもういらないの? それともいるの?」と直球で切り出したことも。私としては、もうそのくらいはっきりさせないといけないレベルにまで来ていたんです。今後もそういう関係が必要なら対処法を考えるし、お互いが納得のうえでもういらないなら、もうそれはそれでいいよね、と。
シオリーヌ そのときのパートナーさんはどう反応されましたか?
A 「すぐには答えられないから、ちょっと考えさせてほしい」と言われましたね。それで考えてもらった結果、お互いに理由はいろいろあるけれど、したいという明確な意志はあることがわかったので、「それならできるときにすればいいよね」ということに落ち着きました。
シオリーヌ 相手がどう思っているのか聞くのは怖いけれど、その人との関係性を続けていこうと思うのならば、どこかで勇気を出して相手としっかり向き合い、話し合うタイミングが必要になるんでしょうね。
悩みを周囲の人と共有することの大切さ
シオリーヌ ちなみに、こういう悩みを周囲の人と話し合ったりしますか?
A 私は普段、あまりほかの人とは話さないですね。
B 私もです。誰かと話したいとは思うんですけどね…。
C 私はけっこう話すタイプで、自分の子どもや子どもの同級生、そのお母さんたちともこういう話をしたりしますね。とはいえ正直に言うと、話に乗ってくる人のほうが少ない。でもそのおかげで、子どもの友達の女の子から性に関するちょっとした相談を受けたこともありました。些細な悩みだったけれど、それでも私が普段から性の話をしていたから打ち明けてくれたのだと思います。だから、たとえすぐにわかり合えなくても、話しておくことには意味があるのかなと思いますね。
シオリーヌ 本当にそうですね! 今日は私も皆さんのお話を伺って、とても勉強になりました。産前・産後・子育て中は、体の変化も精神的な変化も大きくて、性に対する価値観もガラッと変わる可能性のある局面なんだなと、改めて感じましたね。私はこれから出産を迎えますが、皆さんに教えていただいたことを胸に刻んでいこうと思います!
撮影/花村克彦 取材・文/板垣千春 企画・編集/種谷美波