今回のお悩みは…
セックスに嫌悪感を抱いてしまいます。男性に支配されているような「使われている」ような感覚にもやもやする。どうすればこの嫌悪感を解消できるでしょうか。
セックスにまつわる悩みについて、みんなで語り合う連載。今回も、前回に引きつづき女性3名をお招きして、オンライン上でトーク。助産師で性教育YouTuberのシオリーヌさんとあれこれ語り合いました!
今回の参加者は…
Aさん:30代後半、子育てひろば施設管理スタッフ。既婚で子どもは3人
Bさん:30代後半、会社員。既婚で子どもは2人
Cさん:40代前半、飲食店経営・子育てサロン主宰。既婚で子どもは3人
「私」としてではなく女性という「アイコン」として見られた経験
B 産後、セックスに対する嫌悪感に葛藤している時期がありました。どうしても「下に見られている」気がするというか、男性の高まった気持ちを解消するために「使われている感」を抱いてしまって。セックスというより、男性に対する嫌悪感なのかもしれません。今もまだ、完全に解消されたとは言いきれないですね…。
シオリーヌ 思い返してみると、私も性に対する嫌悪感を感じたことがあります。学生時代につき合っていた人に男性向けアダルトビデオによく出てくる行為を求められたんです。男性を興奮させるための演出で、女性にとってはなんの気持ちよさにもつながらない行為で。それをやってくれと言われたとき、ものすごく嫌な気持ちになったことを思い出しました。「AVを見て憧れているのかもしれないけれど、それを満たすために私の体を使わないでほしい!」って、すごく思った。
一同 (深くうなずく)
シオリーヌ それはもはや、スキンシップやコミュニケーションを楽しむためのセックスじゃないですよね。でもそのときは私も若かったから、嫌だと言えずにしぶしぶ受け入れていました。
C とてもよくわかります! 私も、誘われたときに素直に乗っていけない自分がいて。「この嫌な気持ちはなんなんだろう」と思うことが多かったのですが、今納得がいきました。モノ扱いをされる感じですよね。私個人を見ているというよりは、女性というアイコンとして認識されている、みたいな。
嫌悪感は相手との関係性によるもの?
A 私はパートナーに恵まれていたのか、ちゃんとつき合っている人とのセックスに嫌悪感を感じたことはないですね。でも、遊び感覚でつき合った人と気持ちのこもっていないセックスをしたときは、性欲を解消する道具として見られているように感じた気がする。でも私も遊びの感覚でしていたから、お互いさまだったのかもしれませんが…。
シオリーヌ 確かに私も、お互いの心地よさのために気遣い合って、対等な関係でセックスをしていることを感じられるときは、あまり嫌悪感はわかないですね。相手との関係によって変わってくる面はあるのかも。
セックスが「生殖」のためではなくなったとき、それぞれの選択
C 出産を終えて子育ても落ち着いてくると、セックスが生殖だけのためのものではなくなってきますよね。そうなると、ますます「させられている行為」に対して抵抗を感じるようになるのかもしれません。今日話してみて、改めて「私の人生にもうセックスはいらないな」と思ってしまいました。これまでは子育てと仕事がメインの生活でしたが、子どもが大きくなって仕事も落ち着いてきた今、自分のためにやりたいことがたくさんできたんです。夫にはちょっと申し訳ないけれど、セックスの時間をもっと他のことにあてたい…! と今は思っています。
シオリーヌ 自分が自分らしくいられる時間を大切にしたいというのは、当然の気持ちですよね。
A 確かに、パートナーとの生殖を終えると、セックスの意味も変わってきますよね。私の場合は、挿入はなくてもいいけれど、ハグなどのスキンシップがないのは耐えられないなあ。
シオリーヌ 生殖を目的とするフェーズを過ぎたとき、「これからの人生に本当にセックスは必要?」と問うタイミングが来るのかもしれないですね。
意外と知らない、セックスのバリエーション
シオリーヌ 「嫌悪感」に関しては、どんなときにその感情が芽生えるのか観察して、言葉にしていく作業が必要な気がします。私も学生時代に嫌なことをされたときは何も言えなかったけど、今だったら「そういうことをされるとあなたとのセックスが楽しくなくなってしまう」と相手に伝えるんじゃないかな。でも「セックスには口を挟まないのが女性のたしなみ」みたいな風潮があるからか、自分がしたいセックスのバリエーションを知らない人が、意外と多い気がするんです。本来セックスは、自分を知ってコミュニケーションを取って、「こういうふうに触れてほしい」とか「こういうふうに時間をかけてほしい」ということをすり合わせていくものなはずなんだけど…。
B 私もその後、長い時間をかけて夫と話し合ってきました。今はセックスだけじゃなく、ハグしたりキスしたりの、ちょっとしたことでも嫌なときは「嫌だ」と言えるようになった。私は産後に嫌悪感を自覚しましたが、本当は若い頃からどこかでずっと感じていたのかもしれません。高校時代はとても短いスカートが流行していたんですが、そういうファッションを含めて「男性から性的な目で見られるのは当たり前のこと」くらいに思っていて。この頃からずっと、嫌悪感を蓄積してしまっていたのかもしれません。
自分の中の小さな「No」を無視しない
シオリーヌ Aさんはどうですか?
A 私は昔から思ったことをはっきり口にするタイプで、嫌なことやしたくないことは「したくない」と言えてしまえるほうでした。だから嫌悪感を抱かずにいられたのかな。あとは性教育を学んでいくことで「女性が主体的になっていいんだ」という視点を持てたことも大きいです。夫とのセックスも、主体的に楽しんでやるものというイメージを持てていて。だからあまり「下に見られている感」がなかったのかもしれません。
シオリーヌ Aさんのように「No」を言えるって、すごく大切。Bさんの話を聞いて、セックスへの嫌悪感は「嫌なことを封じ込めてきたからこそ募ってしまったもの」なのかもしれないと思いました。「No」を言うためには、まず「自分は何が嫌なのか」を知っておく必要がある。なんとなくモヤっと自分の胸にわいた気持ちを放置せず、「やっぱりなんか嫌だから、いったんストップしていい?」と伝えて、しぶしぶ我慢する時間をつくらないようにしてみる。嫌悪感を完全に取り去るのは難しいかもしれないけれど、まずは小さいことから「No」を言う練習をしていくことが大事なんだと思いました!
撮影/花村克彦 取材・文/板垣千春 企画・編集/種谷美波