今回のお悩みは…
アダルトビデオの影響なのか、セックス中にパートナーから嫌な行為を要求されることがあります。この違和感をどう相手に伝えたらよいでしょうか?
セックスにまつわる悩みについて、みんなで語り合う連載。今回も、前回に引き続き女性2名をお招きしてオンライン上でトーク。助産師で性教育YouTuberのシオリーヌさんと、あれこれ語り合いました!
今回の参加者は…
Aさん:20代後半、会社員。未婚で同棲中のパートナーあり。
Bさん:30代前半、会社員。未婚で最近できたパートナーと交際中。
アダルトビデオが、"セックスの教科書"になってない?
シオリーヌ 以前のテーマでも話しましたが、大学生の頃つき合っていたパートナーに、「それ、絶対にアダルトビデオで知ったやり方だよね?」という行為を要求されたことがあったんです。「AVを見て抱いた憧れを満たすために、私の体を使わないでほしい」と思ってすごく嫌な気分になりました。私自身というより、女性の体というアイコンとして見られている気がして。皆さんは、そういう体験ありますか?
B 「女性が絶頂に達することが大切だ」「とにかく強く刺激すれば気持ちいい」みたいに思い込みすぎているな、と感じたことはあります。実際にやられると痛いだけだったりして、そこにすごくギャップを感じますし、心のつながりやこちらの気持ちがないがしろにされた感じがしますね。
A 私は大学生の頃、先輩に性行為を強要されかけたことがありました。相手の終電がなくなったので、「私の家で始発まで待っていていいよ」と言ってしまったんです。相手は既婚者で子どもがいたこともあって、私としては信頼して場所を貸しただけのつもりでした。でも向こうは、「家に入れる=セックスしていいと考えている」と当然のように思っていたみたいで、襲われそうになってしまって。そのとき、目の前の私の気持ちを聞かず、彼の「女性とはこういうものだ」という思い込みで行動されたことが、すごく悲しかった記憶があります。
シオリーヌ うんうん。私のYouTubeチャンネルにいただくコメントでも、「女の人ってどうされたらうれしいですか?」みたいな質問がすごく多いんです。でもその答えは、その人しか知らないことじゃないですか。これはメディアの責任もすごく大きいと思いますが、世の中に「女の人はみんなこう考えている」「女の人はみんなこうされたら気持ちいい」と思わせる情報があふれているのは問題だと思います。メディアからの刷り込みが強すぎて、その人の中に正解ができてしまい、「目の前の人に聞いてみる」という選択肢が見えなくなっちゃっているのかもしれないですよね。
セックスは「テクニックのお披露目会」ではない
A そういうこと、けっこうよくあると思っていて。例えば、私はセックス中に陰部をなめられるのが好きじゃないんです。だから「本当に嫌だからやめて」とはっきり言うのですが、「みんな好きでしょ?」という感じで流されたり、その場ではストップしても、次にセックスするときにまた同じことをされてしまったこともあります。なんでそうなるのか考えると、やっぱり"セックスの正解"が相手の中にあって、それを私に対してやっているんだと思うんです。私自身ではなく、女性としてカテゴライズされた対象に対してやっているんだなと。
シオリーヌ セックスが「テクニックのお披露目会」になってしまっていますよね。女性器を持っている人全員がもれなく気持ちよくなる刺激法なんて、存在するわけがない。好みは人それぞれだし、同じ人であっても時期やタイミングによって変わると思うんです。だから本当だったら、毎回きちんとコミュニケーションを取るべき。でも、アダルトコンテンツの中でセックス中にそういったコミュニケーションを取っている描写は、なかなか見たことないですよね。多くの場合、女性がひたすら受け身で描かれていて、そこにどうしても違和感を感じてしまいます…。
一同 確かに!
自分のことは自分で決める権利がある
シオリーヌ では、どうしたら意思表示ができるのか。Bさんは、パートナーに「こうしてほしい」と伝えられていますか?
B できていると思います。今のパートナーは、どうしてほしいのか聞いてくれることが多いんです。そういう人は初めてだったので、最初はすごく感動しましたね。テクニックうんぬんの前に、セックスとはコミュニケーションなんだなと気づかされました。
シオリーヌ 本当にそうですね。Bさんみたいに、相手が性について話せる人だったり、信頼関係ができあがっている場合ならいいけれど、ちょっとハードルが高いと感じる場合は、「もうちょっとこうしてみてほしい」とポジティブな言い方をするのもおすすめです。とはいえ、本当に嫌なことだったり痛い思いをしているときは、相手のご機嫌をうかがう必要はないですから、はっきり伝えてくださいね。
B 私も今の彼には言えますが、それまではやっぱり難しかったです。こちらが我慢するべきだと思い込んでいて、相手に言える雰囲気ではなかったし。言ったら引かれたり、嫌われてしまうんじゃないかと、勇気もありませんでした。
シオリーヌ すごくよくわかります! 性について相手と話し合うことはもちろん大事ですが、目の前に絶対に嫌われたくない大好きな人がいて、「これを言ったら嫌われるかもしれない」と思って切り出せない気持ちには、本当に共感します。だからそんな自分を「意志が弱い」と責める必要はまったくないです。「女性は控えめであってほしい」「意見を言う女性は面倒臭い」という社会のムードがそうさせている面もあるから、個人の弱さのせいだけではないんです。でも、すべての人に、嫌なことは嫌だと言う権利があるし、自分のことは自分で決める権利があることは、覚えていてほしいですね。
みんなで考えた、今回の結論は…?
すべての人に共通する"セックスの正解"はない。
たとえ同じ相手でも、毎回のコミュニケーションを大切に。
撮影/花村克彦 取材・文/板垣千春 企画・編集/種谷美波