自分の体について、どのくらい知っていますか? 自分をケアするためには、自分の体をよく知ることが必要です。また、他者とコミュニケーションを取る上でも、自分とは違う体について正しい知識をもっておくことが欠かせません。yoiに寄せられた女性の体についての素朴な疑問や不安に、吉本レディースクリニック院長・吉本裕子先生にお答えいただきました。

吉本裕子(よしもとゆうこ)先生

吉本レディースクリニック院長

吉本裕子(よしもとゆうこ)先生

産婦人科医。日本専門医機構認定専門医。高知医大(現・高知大学医学部)卒業。金沢大学付属病院、富山市民病院を経て現職。NPO法人女性医療ネットワーク理事、富山市医師会理事、性暴力被害ワンストップ支援センター富山協力医師、女性被害者支援ネットワーク医師、富山大学人間発達科学部附属中学校評議員。吉本レディースクリニックは、病気治療だけでなく、女性の人生に寄り添い、心身の拠り所となるクリニックとして定評がある。『Rp.+(レシピプラス)VOL.21 NO.1 2022冬「ホルモンとくすり」』(南山堂)共同執筆。

Q1: “女性器”って膣のこと?デリケートゾーンって、どこですか?

A1:外陰部から腟、子宮、卵巣までのすべてを含み「女性器」と呼びます

吉本先生:腟は女性器のほんの一部です。デリケートゾーンやフェムゾーンと呼ばれるのは「外陰部(外性器)」のことで、体内にある膣、子宮、卵巣は「内性器」にあたります。複雑な構造をしているうえに、自分の性器を日常的に見ることはないかもしれませんが、全体がどのようになっているかきちんと知っておくとよいでしょう。

女性器の構造

【内性器】
・卵巣(らんそう)とは?…卵子が入っている、子宮の両側にある臓器。親指大くらいの大きさでアーモンドのような形をしている。 
・卵管(らんかん)とは?…子宮と卵巣をつなぐ7〜12cmほどの管。卵子や受精卵の通り道。
・卵管采(らんかんさい)とは?…卵管の先端にあるイソギンチャクのような部分。卵巣から出た卵子(排卵)をキャッチして卵管に送り、卵管内で精子と出会うのを待つ。
・子宮(しきゅう)とは?…洋梨を逆さにしたような形をした、筋肉組織でできた袋状の臓器。受精卵を守って育てる役割があり、妊娠中は胎児を育むベッドとなるため大きく変形する。
・子宮内膜(しきゅうないまく)とは?…子宮の内側を覆う粘膜。卵巣から分泌されるエストロゲンの作用を受けると、受精卵の着床に備えて分厚くなるが、妊娠しなければはがれ落ちる(生理)。
・子宮けい管(しきゅうけいかん)とは?…子宮の下側1/3ほどにある、膣と子宮内腔をつなぐ筒状の部分。通常は内部を酸性に保って雑菌の侵入を防ぎ、排卵期はアルカリ性に変わって精子を子宮内に招き入れやすい状態にする。
・腟(ちつ)とは?…腟口から子宮頸管をつなぐ6〜8cmほどの器官。 筋肉組織でできており、出産時には拡張して産道となる。常在菌が腟内を酸性に保つことで外からの雑菌の侵入を防ぐ。子宮からの月経血や粘液を排出する役割がある。
・腟壁(ちつへき)とは?…腟の内側を覆う粘膜。人によってはヒダ状になっていることも。加齢や出産により腟壁がゆるむと、水が入りやすくなる。

【外性器(外陰部)】
・腟口(ちつこう)とは?…外陰部にある腟の入口で、尿道口の下に位置する。月経血や粘液の排出口であり、セックスの際は男性器の挿入口となる。
・会陰(えいん)とは?…膣口から肛門までの間の部分。出産時には伸び広がるが、ここを切開して赤ちゃんを取り出すことも。
・外尿道口(がいにょうどうこう)とは?…クリトリスと腟口の間に位置する、尿が排出される部分。小陰唇の内側にある小さい穴のため、肉眼ではほぼ見えない。
・クリトリス/陰核(いんかく)とは?…左右の小陰唇が交差する位置にある突起部分。男性器と似た構造で、神経組織と血管が集まっている。通常はほとんどが包皮に覆われているが、興奮すると勃起して包皮が剥けて露出する。
・小陰唇(しょういんしん)とは?…大陰唇の内側にある、左右2枚のヒダ状の皮膚。尿道口や腟口を保護する役割があり、摩擦で黒ずみやすいことが特徴。「びらびら」と呼ばれることも。
・大陰唇(だいいんしん)とは?…小陰唇を包む、柔らかくふくらんだ皮膚。外性器の一番外側の左右にあり、アンダーヘアが生えている(Iゾーン)。汗腺や皮脂腺があり、においの発生源にもなりうる。

取材・文・イラスト/井上ハナエ 構成/木村美紀