自分の体について、どのくらい知っていますか? 自分をケアするためには、自分の体をよく知ることが必要です。また、他者とコミュニケーションを取る上でも、自分とは違う体について正しい知識をもっておくことが欠かせません。yoiでは、男性同士でも話題に上る機会が少ないという男性の体や性器にまつわる悩みやギモンを聞き込み調査。プライベートケアクリニック東京・東京院の院長である小堀善友先生にお答えいただきました。 

男性器のギモン1

Q1.男性器=ペニスのことですか?

1つ目のギモンは、【男性器=ペニスのことですか?】。表に見えている部分だけでなく、内側にあるさまざまな組織や器官が男性の生殖機能を支えています。まずは基本の構造や役割を知り、男性器への理解を深める第一歩に!

A1.ぺニスを含め、生殖機能を司る器官の総称です

小堀先生:男性器の主な役割は、男性ホルモンの生成&分泌、性交、排尿です。子どもをつくるために男性ホルモンと精子が生成され、性交時に女性の膣に挿入しやすいようぺニスが勃起し、ぺニスに刺激を受けることで脳と脊髄に信号が送られ、射精が起こって受精に至ります。男性器は排泄器と生殖器が一緒になっている構造が特徴的で、見た目も女性器とは大きく異なりますが、生殖機能を支える役割という点では似ている部分もいくつかあります。男女それぞれの機能を比べて知っておきたい人は、【女性器のギモン:Q1】と併せてチェックしてみましょう。

男性器のイラスト 性教育

男性器のイラスト 正面から 性教育

【体外部】

◆陰茎(いんけい)

ぺニスとも呼ばれ、下腹部あたりから突出している部分。下腹部と恥骨につながった「陰茎根」、体外から見える「陰茎体」、先端の円錐形をした「亀頭」で構成されている。女性器の膣に挿入し、子宮内に精子を直接送り込む際に用いられる。体の成長に合わせて大きさや形が変化していく。

◆包皮(ほうひ)

ぺニスを覆っている皮の部分。包皮は刺激に弱い亀頭を保護するためにあると考えられ、基本的には生まれてから思春期を迎えるまでの幼少期は陰茎全体をすっぽり覆っている。二次性徴が始まってペニスが大きくなると同時に、包皮が自然と剥けて亀頭が露出される。

◆亀頭(きとう)

ぺニスの先端(上部)にある部分。勃起時にペニスの先端にある尿道海綿体に血流が集まることで大きくふくらむ。亀頭は陰茎や他の部分に比べて非常に皮膚が薄く、感覚受容器が発達している。そのため性交時の摩擦による刺激に対して敏感に反応し、勃起状態を維持して射精へ導くために重要な役割を担う。

◆外尿道口(がいにょうどうこう)

亀頭の先端にある、尿が排出される部分。射精にも用いられるため、穴自体は女性の外尿道口に比べて大きく縦に切れ目が入ったような形をしている。

◆陰嚢(いんのう)

精巣を包んで保護する、厚い皮膚でできた袋状の組織。睾丸、金玉、玉袋とも呼ばれる。ペニスの根元からぶら下がるように位置し、精巣内の温度調整を行うことが主な役割。外気温によって形が伸び縮みし、放熱したり熱を逃がさないようにして、精子をつくるために最適な温度(34〜35℃)を保っている。

【体内部】

◆陰茎海綿体(いんけいかいめんたい)

ぺニス内部に存在する、非常に細い血管が集まって形成されているスポンジ状の組織。興奮や刺激を受けて陰茎海綿体に血流が集まる&停留させることで硬くなり、ぺニスが膨張して反り上がる現象を「勃起」と呼ぶ。ちなみにぺニスの向きは勃起した状態で決まるため、陰茎海綿体がある側が背面、尿道がある側が正面と位置付けされている。

◆尿道(にょうどう)

尿の通り道。膀胱からつながって亀頭の先端まで到達している関係から、長さは20cm程度と女性に比べて5倍ほど長いのが特徴。膀胱を出てすぐにある前立腺の内部を貫通し、ペニス内部では尿道海綿体で保護されるように位置している。勃起時は尿道が狭くなるため、尿意を感じにくくなる。

◆精巣(せいそう)

テステステロンなどの男性ホルモンと精子を作る、卵のような形をした器官。左右にひとつずつ存在し、左の精巣は右よりもがわずかに低い位置にある。平均直径約4~7cmの精巣に対して容積は約20~25ml。一日でおよそ1億2千万個の精子が作られ、一回の射精では約1〜3億個の精子が放出されるが、その中でも受精に至れるのはほんのわずか。

◆精巣上体(せいそうじょうたい)

精巣の外側にくっついて精管につながる、長さ5〜6cmほどの器官。精巣で作られた精子を蓄えて熟成させ、精管に運ばれていく。

◆精管(せいかん)

精子を尿道まで運ぶ細い管。左右の精巣上体から精嚢まで約40〜60cmの長さでつながっており、蠕動(ぜんどう)運動を行うことで精子を運搬する。

◆精嚢(せいのう)

精子の栄養となる精嚢液を生成&分泌する袋状の臓器で、精液の成分のおよそ7割は精嚢液が占めている。前立腺の上方に位置し、射精管につながっている。

◆前立腺(ぜんりつせん)

男性だけが持っている器官で、精液の一部である前立腺液を生成&分泌。前立腺液は精子に栄養を与えたり保護したりするほか、運動機能をサポートする役割がある。直腸と恥骨の間にあり、膀胱の出口付近で尿道を取り囲むように位置している。

◆尿道球腺(にょうどうきゅうせん)

カウパー腺とも呼ばれ、尿道の途中にある豆粒大の器官。弱アルカリ性で無色透明の尿道球腺液(カウパー腺液)を分泌し、性的興奮が高まった際に外尿道口から体外に排出して性交をスムーズに。女性器でいうと、性交時に潤滑油として分泌されるバルトリン腺液に相当する。

◆射精管(しゃせいかん)

精嚢と前立腺をつなぐように位置し、前立腺の内部で尿道に合流。精管から運ばれてきた精子は、精嚢液・前立液・カウパー腺液と混ざることで精液が完成し、射精管から尿道を通って体外へ放出される。

小堀善友(こぼりよしとも)先生

プライベートケアクリニック東京・東京院 院長

小堀善友(こぼりよしとも)先生

日本泌尿器科学会専門医、日本性感染症学会認定医、日本性機能学会専門医、日本性科学会セックスセラピストなど多数の資格を保有。金沢大学医学部を卒業後、獨協医科大学越谷病院(現・ 獨協医科大学埼玉医療センター)の泌尿器科に勤務したのち、アメリカ・イリノイ大学に招請研究員として留学。2021年より、プライベートケアクリニック東京 東京院の院長を務める。主に男性性機能障害、男性不妊症、性感染症を専門にしており、ホームページのブログやSNSではメンズヘルスについての情報発信にも取り組む。著書に『泌尿器科医が教えるオトコの「性」活習慣病』(中公新書ラクレ)、『妊活カップルのためのオトコ学』(メディカルトリビューン)、『泌尿器科医が教える「正しいマスターベーション」』(インプレス)などがある。

取材・文/井上ハナエ 企画・イラスト/木村美紀(yoi)