セックスに関する不満や悩みをパートナーにどう伝えたらよいか悩んだ経験はありませんか? 言い方ひとつで関係がよくも悪くもなるからこそ、慎重に伝えたいもの。パートナーを傷つけない“言い換え方”を、前編に引き続き、カウンセリングルーム「Esolve(エゾルブ)」に取材。セックスに関する悩みのカウンセリングを行う、Esolve所属の公認心理師、道場 勇太さんにお話を伺いました。
- 伝えるときに大切なのは「感情をぶつけない」こと
- パートナーに不満を伝える“言い換え”のすすめ
- Q1.「クリトリスを舐められるのは気持ちよくない」を言い換えるには?
- → A1.「オーラルセックスは少し苦手なんだよね」
- Q2.「乳首を吸われるのは痛い」を言い換えるには?
- → A2.「吸われると痛いときがあるから、舐めてくれるだけのほうがうれしいな」
- Q3.「声を出すことを期待しないで」を言い換えるには?
- → A3.「声を出していないときも、本当はすごく気持ちいいんだよ」
- Q4.「ムードを大切にして」を言い換えるには?
- → A4.「ゆっくり、ハグやキスから始めるほうが好き」
- Q5.「射精するのが早い」を言い換えるには?
- → A5.「挿入する前に、抱きしめあって気持ちを高めたいな」
- Q6.「なんで前戯に時間をかけてくれないの」を言い換えるには?
- → A6.「ハグやキスとか、くっついてる時間をもっととりたい」
- 不満を伝えるのは関係性が深まるきっかけになる!
カウンセリングルーム「Esolve」公認心理師
職場ストレスの改善や夫婦・パートナー・親子間の関係改善など、メンタルケアを中心とした心理カウンセリングを行ってきた経験を持つ。現在は、その知識と経験を生かし、性機能改善のための行動療法に心理カウンセリングを組み合わせたサポートを提供。また、心理カウンセリング業務のほか、メンタルヘルスに関する講座の講師としても活動中。
伝えるときに大切なのは「感情をぶつけない」こと
──性の不満を伝えるための心構えを教えてください。
道場さん 性に関する不満をパートナーに伝える際、基本的な心構えとして大切なのは「感情をぶつけない」ことです。
性反応は本能的なものなので、「いやだな」と感じるセクシャルコンタクトをできるだけ減らすために話し合うことが理想的です。「伝えたら傷つけてしまうかも」「傷つけるくらいなら我慢すればいい」と思って我慢し続けると、本能的な警戒心や嫌悪感に発展してしまい、かえって関係を悪化させることがあるため、話し合いは大切です。
──伝えるのにベストなタイミングはありますか?
道場さん 性の不満を伝えるタイミングは「事前」がベストです。心理学の「条件づけ」によると、直前や最中、事後に伝えると、「自分のSEX=ダメだ」と直感的に結びついてしまい、次回のセックスに対する不安や消極的な気持ちを引き起こす可能性があります。
せっかく勇気を出して伝えても、お相手がネガティブな体験に感じてしまうと関係が悪化してしまう小uもあるので、性行為をしそうな雰囲気やスキンシップしている最中は避けて「事前」に伝えてみてください。
──伝え方で注意するポイントはありますか?
道場さん 大切なのは文句だけにならないこと。「嫌」や「不満」で終わらせず、「うれしい」や「気持ちいい」といった前向きな言葉で締めくくることです。
不満だけを伝えると、相手は「どうすればいいのか」がわからず、問題解決にはつながりません。してほしいことを具体的に考え、自分の気持ちを整理してから伝えることが大切です。
したくないことやしてほしくないことを伝え、相手に理解してもらうのは大切です。ただし、伝え方次第では二人の大切な時間そのものが壊れてしまう可能性もあります。だからこそ、よりよいセックスをするための提案として、パートナーに伝えてみてください。
パートナーに不満を伝える“言い換え”のすすめ
パートナーにセックスの不満を伝えたいけれど、傷つけずに上手に伝える方法がわからない…そんな悩みを持つ人は多いかもしれません。主に女性が使いやすい言い換え方を、道場さんに教えていただきました。
Q1.「クリトリスを舐められるのは気持ちよくない」を言い換えるには?
→ A1.「オーラルセックスは少し苦手なんだよね」
道場さん オーラルセックスが苦手という方は少なくありません。「気持ちよくない」と感じていても、一生懸命にしてくれる相手を思い、我慢しているという悩みを抱える方も多くいらっしゃいます。
こうした場合は、「気持ちよくない」とストレートに伝えるのではなく、「苦手」と表現を和らげて言い換えるのがおすすめです。
「気持ちよくない」は相手への指摘になってしまいますが、「苦手」にすることで自分の課題として伝えられます。このような表現にすることで、これまでのセクシャルコンタクトを否定せず、やんわりと「してほしくない」という意思表示ができますよ。
さらに「手で触られるのが嬉しい」など、相手にどうして欲しいかも伝えられると、よりポジティブな伝え方になります。
Q2.「乳首を吸われるのは痛い」を言い換えるには?
→ A2.「吸われると痛いときがあるから、舐めてくれるだけのほうがうれしいな」
道場さん 触れ方や強さによって痛みを感じる方もいらっしゃいます。こうした痛みは、パートナーの理解不足から生じることが多いため、丁寧に伝え合い、痛みをゼロにすることを目指しましょう。
痛みを我慢し続けると、どれほど好きな相手であっても、セクシャルコンタクトに対して体が拒否反応を示してしまい、受け入れることが難しくなる場合があります。
大切なのは、痛みだけを伝えるのではなく、「別の触れ方」や「触れてほしい場所」を具体的に提案することです。痛みを取り除き、心地よい時間をパートナーと共有できるよう、一歩ずつ話し合いを重ねていきましょう。
Q3.「声を出すことを期待しないで」を言い換えるには?
→ A3.「声を出していないときも、本当はすごく気持ちいいんだよ」
道場さん 声を出すのが苦手な方も多くいらっしゃいます。このことはパートナーにしっかり理解してもらうことが大切です。
パートナーが「声が出ない=気持ちよくない」と勘違いしているケースも珍しくありません。この誤解から、声を引き出そうとして激しく動いたり、せっかく気持ちがよくなっている最中に突然違う刺激に切り替えたりして、逆に気持ちが冷めてしまうこともあります。
こうした行き違いを防ぐためにも、「声が出にくいけれど、ちゃんと気持ちがいい」ということを、明確に伝えることが大切です。お互いが正しく理解し合えば、より満足度の高いセクシャルコミュニケーションを築くことができるでしょう。
Q4.「ムードを大切にして」を言い換えるには?
→ A4.「ゆっくり、ハグやキスから始めるほうが好き」
道場さん パートナーの勢いに任せてムードがないままセックスが始まり、結果的に気持ちが入らず、満足できないという悩みを抱える方は少なくありません。
「ムードを大切にしてほしい」とひと言伝えるだけでは、具体的な希望が相手に伝わりにくいのが現実です。相手が察してくれることを期待してしまいがちですが、その意図が理解されないまま、満足できないセクシャルコンタクトを繰り返してしまうと、よりつらい気持ちやすれ違いが積み重なることもあります。
だからこそ、自分が求めるムードを具体的に伝えることが大切です。例えば、「照明を落としてほしい」「ゆっくりキスから始めてほしい」「ハグからスタートしたい」など、してほしいことを明確に伝えることで、相手にも意図が伝わりやすくなり、お互いに満足度の高い時間を共有できるようになるでしょう。
Q5.「射精するのが早い」を言い換えるには?
→ A5.「挿入する前に、抱きしめあって気持ちを高めたいな」
道場さん 射精のタイミングを男性がコントロールするのは非常に難しいものです。挿入から射精までの時間には個人差があり、これは男性自身の特性だけでなく、二人の相性が影響する場合もあります。
もしセックスに対して満足感が得られないと感じる場合、挿入までのセクシャルコンタクトの質を見直してみるのがおすすめです。肌と肌が触れ合う距離で抱きしめあうだけでも、自然と満足度は高まりやすいものです。挿入までの過程で気持ちが十分に高まるよう工夫することで、挿入後の不満を軽減できる可能性があります。
ほかにも、「もう少しオーラルセックスをしてほしい」「プレジャートイを使ってみたい」など、自分が満足できるアプローチを具体的に提案してみるのもおすすめです。
Q6.「なんで前戯に時間をかけてくれないの」を言い換えるには?
→ A6.「ハグやキスとか、くっついてる時間をもっととりたい」
道場さん パートナーが前戯をしてくれないと、「愛されていないのでは」と感じることがあるかもしれません。しかし、必ずしもそうとは限らず、男性が前戯をしない理由が隠れている場合があります。
よくある理由のひとつに、前戯に集中することで興奮が冷めてしまうというケースがあります。男性は、一度勃起が萎えると再度持ち直すのが難しい場合があり、そのため自然と前戯が短くなったり、省略されたりすることがあるのです。
こうした場合には、してくれないことを責めるのではなく、性器同士が触れる程度の密着感でハグやキスを行うセクシャルコンタクトから提案してみるのがおすすめです。このアプローチは興奮が持続しやすく、前戯よりもハードルが低いため、徐々にお互いの触れ合いを深めるきっかけになることが期待できます。
不満を伝えるのは関係性が深まるきっかけになる!
道場さん セックスに関する不満を伝える際は、感情的にならず、具体的かつポジティブに伝えることが大切です。相手を否定するのではなく、希望を前向きに共有することで、二人の関係をより深めるきっかけにしましょう。言い換えテクニックを活用し、大切なパートナーとのよりよいコミュニケーションにお役立てください。
イラスト/カラシソエル 取材・文・構成/高浦彩加