2024年12月に宝塚歌劇団を退団した舞空瞳さんの今の肩書きは「学生」。東京で栄養学の勉強に勤しむ日々の中で、自分に自信を失ったり、不安になってしまうこともあるとか。ネガティブになってしまったときの心との向き合い方から、セカンドキャリアについての考えまで、たっぷりお話を伺いました。

舞空瞳 宝塚歌劇団 星組 娘役トップ インタビュー

舞空瞳
舞空瞳

8月27日生まれ、神奈川県出身。2016年、宝塚歌劇団に102期生として入団。2019年10月、星組トップ娘役に就任。2024年12月『記憶にございません!』『Tiara Azul -Destino-』 東京公演千秋楽をもって宝塚歌劇団を退団。現在は東京で栄養学の学校に通っている。

健康で美しくあるための知識をきちんと学びたい

舞空瞳 宝塚歌劇団 星組 娘役トップ インタビュー ポートレイト

——宝塚歌劇団を退団してから約半年が経ちますが、退団後はどんな時間を過ごされてきましたか?

舞空さん:退団したら、時間の経過がゆるやかに感じるのかなと想像していたんですけど、まったくそんな感じではなくて(笑)。卒業してすぐに教習所に通って車の免許を取得したり、学校の入学準備をしたり、宝塚から東京に引っ越したり……慌ただしい日々を過ごしていました。

——栄養について学ぼうと思った理由を教えてください。

舞空さん:私は仕事も趣味も宝塚だったので、長い間やりたいことが見つからず、自分の興味関心を掘り下げるなかで、やっと思いついたのが料理でした。料理を本格的に始めたのは、コロナ禍でのステイホーム期間。私はぼーっと時間を過ごすのが苦手で、なかなかリフレッシュ方法が見つけられずにいましたが、料理に集中していると、仕事のことを考えずに、リフレッシュできている自分に気づいたんです。

舞台人は体が資本だから、発酵食品やオーガニック食品、バランスのよい食事など、体にいいとされている食の情報を得ては取り入れるように。毎日、体を動かしていると変化が如実に感じられるんです。疲れにくくなったり、風邪も引きにくくなったりして、食事の大切さを実感しました。

ただ、“なんだか調子がいいな”という感覚はわかるけれど、詳しい理由は理解していない。健康で美しくあるための知識を、ちゃんと資格を取って学びたいと思ったことが理由です。

舞空瞳 宝塚歌劇団 星組 娘役トップ 対談 インタビュー

——入学して2カ月ほど経ったと伺いました(取材当時)。学生生活はいかがですか。

舞空さん: 今は座学がメインですが、週1回、調理実習があって。みんなで調理帽子をかぶってコックさんみたいな格好をして料理をするのが、すごく楽しいです。

同級生は高校を卒業したばかりの人がほとんどですが、年上の私に対してもフランクに接してくれて、空きコマは一緒に勉強したり。宝塚とは違った形の青春を体験しているような感覚です。一方で、今でもパソコン作業がままならないし、毎朝満員電車で押し潰されながらの通学など大変なこともありますが、新しい日常を過ごしています。

——自分に自信を持てないときは、どうやって自分の気持ちと向き合っていますか?

舞空さん:今の自分を通過したら次はどんな自分になりたい?と想像します。これは、宝塚時代からずっと実践していました。例えば稽古でうまくできなかったり、公演で失敗しちゃったりしても、必ず次の公演は来るし、絶対にいいものにしたい。そうやって自分自身で気持ちを切り替えていく方法は、タカラジェンヌみんなが持っているんじゃないかなと思います。


日記を書いて気持ちを整理する

——気持ちを切り替えるために、実践していることはありますか?

舞空さん:宝塚時代も今も、日記を書いています。小・中学生の頃に両親と交換日記をしていたので、日記を書くことが好きで。文字にすると、自分の気持ちが整理されるような感覚があるんです。

書きながら気持ちが整理されることもあれば、数日後に読み返して整理されることもあるし、書く気が起きず1行しか書けないこともあります。でも、大体のことは数年後に読み返すと、クスッと笑えるんですよ。そうやって笑えるようになった自分に成長を感じられるので、そのために書いている部分もあります。

それと、甘いものを食べて自分を甘やかすこともあります。ドーナツが大好物なんです! 食べすぎると体が疲れやすくなり、肌も荒れやすくなるので普段は控えていますが、もう少し頑張りたいときやご褒美に食べています。

下級生時代に、みんなで必死に稽古したあとに寝落ちしちゃうことが何度もあったんですけど、あるとき私が寝言で「メロンパンとオレンジジュースが欲しい」と言ったらしくて(笑)。それをずっと覚えている花組の同期は、舞台を見にきてくれるときにオレンジジュースとメロンパンを差し入れてくれていました。

舞空瞳 宝塚歌劇団 星組 娘役トップ インタビュー ファッション

どんな経験も、私を大きく成長させてくれた

——現在、“学び直し”や“セカンドキャリア”という言葉に関心を寄せる女性が増えています。舞空さん自身、これからの人生をどのようにデザインしていきたいと考えていますか?

舞空さん:今はまだ探しながら歩いているところなので、いつかそれを具体的に考えられるようになりたいと思っています。栄養について学び始めてわずかですが、改めて、元気で健康であることが何よりも大事だなと実感する日々。元気で健康で、かつ美しくなるための言葉や情報を発信していく人になれたらいいな、とぼんやり想像しています。娘役“舞空瞳”として経験してきたことと、新しく得た知識を融合させて、ファンの皆さまに喜んでいただけるようなこともしていきたいです!

——結婚や家族を持つことについて考えることはありますか?

舞空さん:自分も家族に支えられてきたので、家族って特別だと感じますし、家族を持つことにも憧れます。ただ、家族を持ちたい!と願えば得られるものでもなく……女性の園から出てきたばかりで、今は栄養学まっしぐらです(笑)。

——今後の人生において、大切にしていきたい意識はありますか?

舞空さん:生きていると苦しいときもあるし、下を向きたくなるときもある。そこからなかなか這い上がれずにもがくこともあれば、振り返るとこんなに小さいことで悩んでたんだ!と思えることもあるし、私って人間らしいなって笑えることもありました。

それらを経て思うのは、どんな経験も、私を大きく成長させてくれた。だからこそ、目を背けたくなるようなことがあっても、ちゃんと向き合っていきたいなと思います。 自分が自分の味方であり続けることも大切にしたいことのひとつ。

「今は頑張りたくないなら、ゆっくりでいいよ」と声をかけてあげたり、泣きたいときは思い切り泣かせてあげたり。そうやって自分で自分を支えることで、自分の視野や可能性を狭めることなく、豊かな人生を歩んでいきたいです。

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撮影/東京祐 ヘア&メイク/岡田知子 スタイリスト/大園蓮珠 取材・文/中西彩乃