俳優の永瀬莉子さんと性教育プロデューサーの中島梨乃さん

yoiで公開中のコミック『17.3 about a sex 〜私たちのリアル〜』の完結を記念したスペシャル企画。前編に続き、原作ドラマ『17.3 about a sex』で主人公の清野咲良を演じた永瀬莉子さんと、女子高生の性に関する情報を監修した性教育プロデューサーの中島梨乃さんに話を伺いました。

後編では、『17.3 about a sex』のメインテーマともいえる、“知る”ことの大切さにフォーカス。性についての正しい情報、自分の気持ち、そして、身近な誰かの気持ち。この3つのテーマに分けて、作中のエピソードやプライベートの体験談を交えながら、それぞれの考えを語ってもらいました。

俳優の永瀬莉子さんと性教育プロデューサーの中島梨乃さん

性についての正しい情報を“知る”こと

——ドラマの第1話では、主人公の清野咲良(以下:咲良)が知識を持たぬまま初めてのセックスに挑み、傷つく様子が、リアリティ満載に描かれています。日本で性教育がなかなか浸透しない理由や、その問題点について、中島さんの意見をお聞かせください。

中島 性教育に反対する人の意見として、“性教育をすることで寝た子を起こしてしまう”というものがあります。性について教えることで、性に対する興味を掻き立ててしまう、という考えですね。その正否はわかりませんが、正しい情報がないまま性に関心を持ち、好奇心で性行為をしてしまうほうが危険だと私は考えています。

性に関する興味が芽生えたときに、今はインターネットで手軽に調べることができますし、優れた情報を提供するサイトもたくさんあります。ただし、例えば“セックス”と検索すると、検索結果の画面はポルノサイトで埋めつくされるのが現状です。

もちろん性には快楽として楽しむ側面もありますが、正しい知識がなければ楽しめないし、健康面での大きなリスクを伴う。適切な避妊方法や、性感染症の予防と対策など、最初に知るべき情報が検索結果の上位に並ぶように、昨年から仲間たちと3人で“#SEOセックス”という活動を始めました。

——SNSなどで署名活動を行い、大手検索エンジンや厚生労働省などに提出したそうですね。

中島 SNSでの発信がメディアに取り上げられたおかげで多くの署名が集まり、それらを持って内閣府や検索エンジン各社に働きかけました。その結果、『Yahoo!』で性暴力に関する単語を検索すると、「性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター」というサイトがトップに表示されるようになりました。

性教育は、自分だけでなく大切な人も守ってくれる

——ドラマでも、咲良が恋人との初体験に挑む際にネット上の偏った情報を信じて、傷つく場面がありますね。性について学んで成長していく咲良を、どのように想像して演じられましたか?

永瀬 台本を読んだときに、「こんなに知らないことがあったんだ!」と自分の知識不足に気づかされました。聞いたことのない単語もたくさんあり、本来であれば調べるのですが、詳しくなればなるほど咲良というキャラクターから離れていってしまう。あえて知らないまま撮影に挑み、咲良の等身大な姿を表現しました

——咲良とともに性について学んだ永瀬さんにとって、印象的だったエピソードは?

永瀬 ドラマの第8話で、意図せず妊娠してしまった同級生にアドバイスをするシーンです。性について学ぶことは、自分だけでなく、大切な人を守ることにもつながるんだと知り、正しい知識を身につける大切さを再認識。そんな発見による感動もあって、このシーンの撮影中はボロボロ泣いちゃいました。

俳優の永瀬莉子さんと性教育プロデューサーの中島梨乃さん

自分の気持ちについて“知る”こと

——ドラマでは、性的同意などを例に、自分がしたいこと・嫌なことに向き合う大切さを描いています。自分の気持ちと向き合うときに、心がけていることはありますか?

中島 私はネガティブな感情を抱いたとき、その原因を自分のなかだけで探さないようにしています。人はさまざまな関係性のなかで生きているのに、私だけの問題として捉えるのは、自分に対してフェアじゃない気がするから。自分が置かれている状況や環境を捉え直し、自分を縛っているもの、苦しめているものを探し出します。すぐに解決できることばかりではないけれど、そうすることで気持ちはだいぶ落ち着くんですよ。

永瀬 同感です。私は考えすぎてしまう性格で、ひとつのことに悩むと、そのことで頭がいっぱいになっちゃうんです。「考えても意味ないな」と気づいてからは、悩んだらとりあえず寝る! と決めています(笑)。目が覚めるとだいたいすっきりしているんですけど、それでも悩んでしまうときは、第三者の目線に立って冷静に分析します。

無意識に受け入れてきたことも、本当は“嫌だ”と言っていい

——他人の言動を嫌だと感じたとき、素直に伝えていますか?

永瀬 自分にとって大切な人ほど、伝えるようにしています。共有することで理解も絆も深まると思うから。相手を傷つけないよう、言葉は慎重に選びますが。

中島 私は、相手の年齢や立場によります。年上や社会的地位が高い人には堂々と物申せるんですけど、年下には気を遣っちゃう。

永瀬 えっ! 私は真逆です。

中島 目上の人に対して意見をしづらい空気があるからこそ、私は年下の人に対してはっきり言いにくいと感じてしまうんだと思います。自分に対して気を遣わせてしまったり、意見できないことでモヤモヤさせてしまったら嫌だな、と。

——自分が嫌だと思うことを自分自身で認識するために、今の社会に必要なことはなんだと思いますか?

中島 ジェンダーについて話しているとき、同じ女性から「自分は性別を理由に不当な扱いを受けた経験がない」と言われることが少なくないんですよ。でも「結婚すると女性だけが苗字を変えることも気にならない?」と具体例を挙げると、「嫌かも」という反応が返ってくる。当然だと思い込み、無意識に受け入れていることが、日常にはたくさんあります。

多くの人がそういった無意識を意識するための具体案はまだ見出せていないのですが、『17.3 about a sex』のように、ストレートに社会問題を提起する作品を見ることは効果的だと思います!

俳優の永瀬莉子さんと性教育プロデューサーの中島梨乃さん

誰かの気持ちについて“知る”こと

——作中では、恋人同士、親子、友人のあいだで、お互いの気持ちを想像することの難しさや大切さが描かれていますが、お二人が身近な誰かとの関係性で大切にしていることは?

永瀬 “親しき仲にも礼儀あり”ですね。心を許してくれているからこその発言だとわかってはいても、傷ついてしまうことがあるので。特に大事なことを伝えるときには、心の中で自分に向かって言ってみて、誤解を生まないかの確認をしています。大切な存在だから傷つけたくないし、失いたくない。身近な人ほど、気遣いの気持ちを持って接するように意識しています。

中島 そうなんですね。私はむしろ、ズバズバ言い合える関係が好きで、それが成立する人とだけ仲良くしています。高校までは性格が合わなくても、クラスメイトだから仲良くしなきゃ、などと意識していましたが、そういう関係は卒業したら自然と消滅しました。無理をしてもストレスになるだけだし、合わない人とは会わない! とシビアに割りきってます(笑)。

すべての価値観を理解しなくていい

——永瀬さんは俳優として、自分自身の個性とは違ったキャラクターを演じる際、役の気持ちを想像するために役立てていることはありますか?

永瀬 趣味の海外ドラマ鑑賞は、さまざまな価値観を知って視野が広がり、お芝居の役に立っていると感じます。国によって感情表現からジェスチャー、言葉選びまでまったく違うので、興味深いですね。役作りのための人間観察には、リアリティショーも参考にしています!

——実生活だけではなく、SNSなどでも自分の価値観と違う意見に対する心無い言葉を見かけることが多くあります。さまざまな価値観が受け入れられる社会を作るためには、私たちはどのようなことができるでしょうか。

中島 「すべての価値観を理解して受け入れなければ」という意識を捨てることだと思います。自分と異なる価値観に違和感を覚えるのは自然なことで、それらすべてを理解する必要はない、というのが私の個人的な意見です。考えても理解できないことはあるし、それに固執すればストレスがたまるだけ。「私は理解できないけど、そういう考え方もあるんだ」と割り切ることが、自分、そして相手にとっても最善だと思います。

しかし、堂々巡りですが、そう割り切ることができるようになるためには、どんな価値観を持っていても一人一人の「生」が尊重される社会環境が必要だなとも感じます。

俳優の永瀬莉子さんと性教育プロデューサーの中島梨乃さん

俳優

永瀬莉子

2002年8月13日生まれ、広島県出身。2018年10月号より、Seventeen専属モデルに。ABEMAドラマ『17.3 about a sex』で主人公の清野咲良を演じる。ほか、主な出演作に映画『藍に響け』『モエカレはオレンジ色』など。出演映画『左様なら今晩は』が11月11日より公開予定。10月21日より、出演ドラマ『クロサギ』(TBS系 毎週金曜 午後10時~10時54分)が放送開始。

性教育プロデューサー

中島梨乃

2000年生まれ。慶應義塾大学総合政策学部4年。性教育プロデューサーとして、ABEMAオリジナルドラマ『17.3 about a sex』の台本監修や、SNSでの性教育に関する発信活動を行なっている。

ABEMAオリジナルドラマ『17.3 about a sex』

初体験平均年齢=17.3歳だと知った女子高生3人組。その日をきっかけに彼女たちの"性の価値観"が揺らぎはじめる。「実際、痛いの?」「そもそもセックスってしなきゃダメ?」「あのさ、みんな、一人でしてるの…?」「つき合って、キスして —それから…!?」本当は知りたいけど、誰も教えてくれないセックスのこと。初体験や避妊、生理、体型の悩みやセクシャリティなど、リアルで繊細な女子の本音を隠さず丸めず語り尽くす3人。日本でいちばんティーンに観られているメディア・ABEMAが送る、女子高生のリアルな心情を描いた青春恋愛物語。

[永瀬さん]シャツ¥40,700・中に着たニット¥18,700・パンツ¥31,900/ミュラー オブ ヨシオクボ 03-3794-4037 その他/スタイリスト私物 [中島さん]すべて本人私物

取材・文/中西彩乃 撮影/tAiki ヘア&メイク(永瀬さん)/宮本愛(yoshine.) スタイリスト(永瀬さん)/伊藤省吾(sitor) 企画・編集/木村美紀(yoi)