話題の性教育ドラマ
『17.3 about a sex』を手掛けた 
作家・演出家・俳優の山田由梨さんと
「体・心・性」を考える
全3回のエッセイ連載。第3回は「性」について。
性について口にする、ましてや人と話すなんて
考えもしなかった山田さん。
そんな彼女を変えたのは「知る経験」でした。

白い光の写真

性について話すのは難しいなと思う。
ネタにするとかでもなく、普通のトーンで、性のことを話したいのだけど、友達とかとどういうふうに話せばいいのかわからないでいた。


最近、雑誌やwebの記事で、セルフプレジャーグッズとか、デリケートゾーンケアとか、次世代生理用品などのフェムテックが、大きく紹介されるようになっていて、すごいなあ、ありがたいことだなあと思っている。
でも、子どものころわたしの家では生理のことを「あれ」と隠語で呼んでいて、口に出してはならないものだと思っていたし、性教育の授業も神妙な感じで気まずかったし、オープンに話そう!という環境で育ってないからまだちょっとなじめていない感じもある。
そういうのって癖みたいなものでなかなか抜けないんだよね。



きっと、そのオープン度合いって人によって全然違うだろうから、
どれくらいの人がフェムテックや性の知識を当たり前に生活に取り込んで、友達とかと「いいよねこれ」みたいに話せているんだろう、と疑問に思ったりする。


ただ、そんなわたしも最近変化しつつあって。


去年、わたしは高校生を主人公にした「17.3 about a sex」という性教育に関するドラマの脚本を書いて、そのために、性教育の本をいくつか読み、婦人科の先生に直接わからないことを聞いてレクチャーしてもらうという経験をした。
大人になって、やっとちゃんとした“性教育”を受けたのかもしれない。


例えば、生理がどういう仕組みで体の中で何が起きてるのかとか、
女性のセルフプレジャーのためのバイブはもともと医療器具だったらしいとか、
子宮や性器の形がどうなっているか、とかとか(自分の体の一部なのに知らずに生きてきた…!)。


なんだか、大人だけど何もちゃんと知らなかったし、知らないからこそ不安だったことがたくさんあったなと気づいたのでした。


正しい知識を持ってみると、今まで暗がりだった部屋に電気がついたみたいで、全然秘めるようなことじゃなかったんだ、と急激に目が覚めた心地がした。
ドラマに出てくる登場人物たちと一緒にわたしも成長したなあと思う(ドラマはAbemaTVで見られますのでぜひ!)。


脚本の仕事が終わってからは、婦人科のクリニックで子宮頸がんや性病などもろもろの検査をしてもらい、不安なことを相談したり、友達と情報をシェアしたり、ちょっとずつ自分の性まわりにかかっていたべールがとれてきた実感がある。



フェムテックについても、ただ情報を手渡されただけでは、実際どのように生活に生かせばいいのか戸惑ってしまっていたけど、「吸水ショーツ使ったことある?」「これよかったよ」「これは正直ちょっとモレちゃうよ」とか、「デリケートゾーン用のソープ使ってる?」とか、
友達との井戸端会議で経験談をシェアすることで身近に感じられて、安心して使ってみようかなと思えるようになってきた。
セルプレのグッズも最近は新しいもの、ハイテクなものがたくさん出てきていて、
このテーマこそ井戸端会議したらめちゃ盛り上がりそうだなと思ってる。セルプレ井戸端会議していきたい。


性の知識を持つことと、それを友達とシェアして知識を自分のものにしていくことは、純粋に楽しい。
体の自己決定権があると実感できて、自分に自信が持てるから。



わたしもまだまだ変化の途中だけど、
新しいもの、自分にとってよいものを、上手に取り入れていきたいと思ってます。

山田由梨 Yuri Yamada
山田由梨 Yuri Yamada

1992年生まれ。劇団「贅沢貧乏」主宰。作家、演出家、俳優。『フィクション・シティー』(2017)と『ミクスチュア』(2019)で岸田國士戯曲賞最終候補にノミネート。AbemaTVのオリジナルドラマ『17.3 about a sex』では脚本を担当。俳優として、舞台・映画・CMに出演する傍ら、小説執筆・エッセイの寄稿など多方面に活動の幅を広げている。

撮影/花村克彦 嶌村吉祥丸(サイトトップ) 編集/小島睦美(小説すばる)