【広瀬すずさん】「みんなの前に立って発信できる、言葉に力がある人に憧れる」〈『ゆきてかへらぬ』インタビュー後編〉

『ゆきてかへらぬ』STORY
大正時代の京都。20歳の役者・長谷川泰子（広瀬すず）は、17歳の学生・中原中也（木戸大聖）と出会い、一緒に暮らしはじめる。やがて東京に越した二人の家には、詩人としての中也の才能を誰よりも認める小林秀雄（岡田将生）が訪れるように。中也と小林の仲むつまじい様子を目の当たりにした泰子は、彼らに置いてきぼりにされたような寂しさを感じる。やがて小林も泰子の魅力と役者としての才能に気づき、後戻りできない複雑でいびつな三角関係がはじまる。

──泰子は仕事現場で先輩にはっきり意見するなど、当時としては新しい感覚を持った女性だったと思います。泰子の生き方を通して得た気づきはありましたか？

広瀬さん　自分の欲望に素直に生きている人だと思いましたし、我が道を歩む姿が潔すぎて、かっこいいなと思いました。今は他人の目を含めて、まずまわりのことが気になるじゃないですか。何気ない発言が、思った以上に批判されてしまったり。でも泰子は人の目を気にせずフラットにいるから、ピュアで素直でいいなって。

──広瀬さんは、泰子の素直さや周囲を気にしない強さに刺激を受けますか？

広瀬さん　そうですね。みんなの前に立って発信できる、言葉に力がある人は憧れるし、かっこいいなと思います。私の場合、まわりの人もかかわることに関しては「今、自分が言うべきなのか？」と考えて躊躇しちゃうけど、ここ数年は、自分自身のことはわりと言葉にするようにしています。

──その変化のきっかけは？

広瀬さん　こういう職業って、カメラの前で演じるときは一人だけど、それ以外は現場のスタッフさんとかマネージャーさんとか、自分の力になってくれる人たちがまわりにいてくださるんですよね。でも、そこに甘えすぎていると、自分がやっていることの責任を感じづらい気がして。

今まで撮影現場の仕組みや流れを知らなすぎたなと思ったんです。忙しさの中でぽわーんと過ごしてきたけれど、20代後半になったからこそ責任感を持ちたい、自分の仕事を見つめ直したいと思うようになりました。発言することが苦手なのでドキドキしちゃうんですけど、「今、私はこう思っています」と伝えると、自分もまわりも変わっていくし、すごくいいなって感じています。

──具体的にはどんなことを？

広瀬さん　例えばお芝居で迷いを感じたときに、すべてを否定したり「やれないです」と伝えたりするのではなく「今、できないと思ってしまっている自分がいます。頑張れる一言が欲しいです」みたいな感じ。素直に思ったことを全部言ってみようと思って。

すべてをクリアにするのって気持ちいいし、性格もある意味オープンになってきたのかも。仕事への取り組み方が主体的になったことで、できることも増えている気がします。

──すごい変化ですね。では、忙しい毎日の中で、広瀬さんがメンタルを健やかに保つ方法は？

広瀬さん　私は結構我慢強いタイプなので、わりと耐えられちゃうんです。親にはたまに相談することもあるけど、あまり愚痴を言うことはないですね。ネガティブなことを言葉にしすぎると、具体的なものとして脳内にこびりつく気がして。

もともと寝る前に色々と思い出しちゃうタイプなのですが、あえてモヤモヤのまま消化するというか。「あ、いまなんか嫌だったな」と思っても、具体的に何が嫌だったのか突き詰めずに１〜２時間置くと、そのまますーっと忘れてリセットできるんです。この前、初めて眠れないくらい気になることがあったけど、そのときも思っている以上に時間が解決してくれました。あとはいっぱいごはんを食べること（笑）。最近はうどんブームがきています。

ボレロ¥46200／アイレネ（ルシェルブルー総合カスタマーサービス 03-3404-5370）、ワンピース¥26900／DESIGUAL（デシグアルストア 銀座中央通り店 03-6264-5431）、ブーツ¥209000／クリスチャン ルブタン（クリスチャン ルブタン ジャパン 03-6804-2855）、ピアス¥102300／シャルロット シェネ（エドストローム オフィス／03-6427-5901）

撮影／垂水佳菜 ヘア＆メイク／奥平正芳 スタイリスト／丸山晃 画像デザイン／前原悠花 取材・文／松山梢 構成／国分美由紀