俳優やモデルを含め、多くのセレブリティから指名が絶えない、人気ヘア&メイクアップアーティストのHaruka Tazakiさん。とあるでき事をきっかけに、2023年から約1年間、突如世界一周の一人旅へ。世界各地でさまざまな人と出会ったHarukaさんが気づいたのは“セルフケア”の必要性でした。後半では旅先での経験をもとに昨年ローンチしたフェムケアブランドの「hemmate(フェメイト)」を立ち上げるにいたった経緯、その想いを語ってもらいました。
フェムテックに興味を持ったのは、過去のトラウマの経験からだった

――まずフェムケアブランドの「hemmate(フェメイト)」を立ち上げた経緯を伺えますでしょうか。
Haruka Tazakiさん(以下、Harukaさん):2023年から1年間、世界一周の一人旅に出たお話を前編でさせてもらいましたが、その道中で女性蔑視や性暴力、人身売買などの現状を目の当たりにしたのがきっかけのひとつです。女性がおかれている環境をよりよいものにするにはどうしたらいいのか、と。
旅で経験したこととは別に、もともとフェムテックに関して興味があったんです。コロナ禍で少し時間ができた際に色々とリサーチしていたり。 これは初めて話すことなんですが、実は私自身が中学生の頃、何気なく歩道を歩いていたときに急に知らない男性に襲われて、車の中に引きずり込まれてレイプ未遂の被害にあったことがあります。暴行を受けて鼻から流血して、顔も凄まじく腫れて。
――そうだったのですね……。大変おつらい経験ですよね。
Harukaさん:そうですね。かなりのトラウマにもなりました。でもきっと口には出さないけれど、大なり小なりこういった怖い体験をしたことのある人は少なくないと思うんです。それによって心に闇を抱えている人たちも多いんだろうなって。社会が男女平等を目指しているというスタンスになって久しいけれど、やっぱりまだまだ現実はほど遠い部分もありますよね。
そんな経験をふまえ、女性として、女性の権利を守れるような活動をしていきたいと思ったとき、何か彼女たちに寄り添って、手助けになるような社会貢献プロジェクトができないかとずっと考えていました。 ヘア&メイクアップアーティストとして活動している今、何かするとなったらメイクアップコスメを作るという選択肢がメジャーかもしれないけれど、新しい別の何かでサポートしたかったんですよね。
そこで思いついたのが、より女性の体やライフスタイルに密接に関わるフェムテック製品だったんです。すると、大阪にある原料メーカーの小池産業さんが「一緒に膣洗浄ジェルを作りませんか?」と声をかけてくださって。ただ、まさにこのすぐ後に世界一周一人旅に出る予定だったので、そのことを伝えつつローンチに向けて動き出しました。

フェムケアブランドを立ち上げたのは、社会貢献活動につなげるため
——「hemmate」は、Harukaさんにとっての社会貢献活動の一環なんですね。
Harukaさん:まさに、プロダクトを作って販売することで、女性をサポートするだけではなく社会貢献活動につなげたいという思いは、当初から小池産業さんに伝えていました。そうじゃなければやりたくない、って。 そしていずれ売り上げが立ったらの話ですが、その一部を私が旅を通して見て、つながってきた世界中の団体や女性の支援の活動をしている場所に、何かの形でサポートをしたいんです。
寄付するだけじゃなくて、例えば不足している生理用品の製造システムを作って教育と雇用を生む場所を作ったり、学校の建設費用にあてたりできたらいいなと思っています。 さらに、「hemmate」を通じて声を上げやすいひとつのコミュニティを作ることも目標です。そのためにブランドの知名度を上げなきゃなんですけどね。
——その目標に向かってブランドを立ち上げるにあたり、膣洗浄ジェルの「インサイドケアジェル」でデビューを果たしましたが、その理由とはなんでしょうか。
Harukaさん:フェムテックという言葉自体メジャーにはなってきましたけど、実際にデイリーなものとしての浸透はまだまだだと感じていて。スキンケアやメイクには時間もお金もかけるのに、なぜデリケートゾーンは後回しになるのかな?って考えたんです。
でも、調べてみるとにおいや痒みなどの不快感を感じている人は多くて。それなら、デリケートゾーンのケアをすることでセルフラブにつながるプロダクトを作りたいと思い、膣洗浄ジェルから発売することにしました。
——製品作りの中でこだわったのはどんなところでしょうか。
Harukaさん:膣の中にジェルを注入して清潔にケアするのものなので、防腐剤フリーにしたくて、品質にはかなりこだわりました。より安全性を高めるために、国の認証が必要となる管理医療機器として許可を取得したので、2年ほどかかったんです。膣内と同じ弱酸性の洗浄液は、不要な添加物を配合していないのですが、そもそも膣が持つ自浄作用は保ちながら清潔な状態へと導いてくれて、ニオイケアもかなえてくれるんです。
また、私自身ダイビングが趣味で、長年海に潜り続けているんですが、プラスチックを含めた海洋ゴミ問題もずっと変わらず向き合っていきたいと思っています。ゴミ拾いの活動は続けているけれど、「hemmate」の本体容器にはリサイクル可能なポリプロピレン素材を採用したり、環境への配慮も最大限心がけています。また、容器も洗浄液もすべてメイドインジャパンにこだわりながら、ストレスフリーな使用感を追求しました。
膣洗浄ジェルを使用することで、心のデトックスができるように

hemmate インサイドケアジェル 1本入り¥660、3本入り¥1320、8本入り ¥3168/小池産業 hemmate.jp/contact
——Harukaさんは実際にどんな使い方をしていますか?
Harukaさん:私は生理の終わりかけや、においや不快感を感じたときに使用することが多いですね。あとは、デートの前などのエチケットとしての使用もおすすめ。デリケートゾーンを清潔にしたあとに膣内に注入するんですが、半日ほどかけてゆっくりと流し出してくれるので、ナプキンを併用してくださいね。
私にとっては心までデトックスされるような感覚になるので手放せないアイテムになっています。 日常的に使用してほしいアイテムなので、持ち運びたくなるようなパッケージにもこだわりました。これは私が世界一周の旅で訪れたエジプトの岩山の姿に感動して、その場で描いた絵なんです。
——今後の展望を聞かせてください。
Harukaさん:今後は「hemmate」を軸にコミュニティを作っていきたいですし、大学や女子大学等で世界の現状を含めた性にまつわる勉強会や講習会、講演会も行なっていきたい。また、病院で入院されていたり、入浴がなかなかできない状況や環境の方たちに支援したりすることも考えています。
私自身一人の働くヘア&メイクアップアーティストとして、皆さんと同じ目線でお話ができるのが強みだと思っています。だからこそ、「hemmate」を通じて私自身がまずオープンになることで、恥ずかしいという意識も変えていきたい。そのうえで、デリケートゾーンを含め、自分を大切にすることを伝えていけたらと思っています。
撮影(人物)/Nobuko Baba(SIGNO) 企画・構成・取材・文/森山 和子