お笑い芸人としてだけでなく、Netflixシリーズ「極悪女王」に主演し、俳優としても注目されているゆりやんレトリィバァさん。さらなるステップアップを目指してアメリカ・ロサンゼルスに移住したゆりやんさんに、行動力の源を伺いました。

ゆりやんレトリィバァ インタビュー アメリカ

ゆりやんレトリィバァ
ゆりやんレトリィバァ

1990年生まれ、奈良県出身。「第47回NHK上方漫才コンテスト」優勝、「女芸人No.1決定戦THE W 2017」優勝、「R-1グランプリ 2021」優勝など。2024年、Netflixシリーズ「極悪女王」にダンプ松本役で主演して話題に。24年から拠点をアメリカに移して活動中。

泣いているのを見られてしまうのは、少し恥ずかしいです

ゆりやんレトリィバァ インタビュー ポートレート

——アメリカ進出の夢を叶えるべく、2024年冬にロサンゼルスへ移住されました。小学生の頃から海外で仕事をすることに憧れていたそうですね。拠点を移して数カ月たちましたが、渡米後の生活はいかがですか?

ゆりやん:ロサンゼルスに引越しした直後にインスタライブをしていたら、涙があふれてしまったことがありました。寂しかったというよりは、みんながくれた温かいコメントがうれしかったんやと思います。

でも、涙を流したのはそれくらいですね。泣いているのを見られてしまうのは、少し恥ずかしいです。10年後とかにもっと売れたタイミングで「こういうこともあったなぁ」と思い返せるようになりたいです。

——すでにアメリカでも舞台に立っていらっしゃるのでしょうか?

ゆりやん:希望すれば誰でも出られるステージがあって、そこでネタをやらせてもらっています。お客さんは30人くらい。お客さんといっても、出演する人が見てくれる感じです。

——日本とは違って、アメリカではゆりやんさんを知らない方が多いですよね。まったく異なる環境でネタをするのは緊張するものですか?

ゆりやん:私が日本で芸人をしていることを知っている人はゼロやから、別にすべっても怖くはないんです。なんやったら、「この中で一番私が場数を踏んでるやろ」と思うと緊張はしないですね。

ゆりやんレトリィバァ インタビュー トレーニング

夢だった生活を始められたのに「見とけや!」って感情にとらわれていたらもったいない

——ゆりやんさんの夢を実現させる力に、勇気をもらっているファンも多いです。どんなことが原動力になっていますか?

ゆりやん:デビューした当初は「見返したい」「見とけよ!」という思いが強かったんです。今もその気持ちは多少あるかもしれませんが、それだけだと前に進めないときもありますよね。「楽しいことないかな。次は何しようかな」という好奇心が原動力につながっているのかもしれません。とにかく、人一倍楽しいことに貪欲なんやと思います。

——中学生の頃にいじめられていた経験があるそうですが、デビュー当時の「見返したい」という感情は、そのときのつらい気持ちとリンクしていますか?

ゆりやん:うーん、どうなんやろ。いじめられていた当時は苦しかったし、不安だったので、デビューした当初はその頃の感情とつながっていたかもしれないですが、今は当時を思い出して胸がぎゅっとなって苦しくなる、ということはないです。

夢だったアメリカでの生活を始められたのに、「中学の頃のあいつ、見とけや!」って感情にとらわれていたらもったいない。今だったら人間関係に悩まずに、一人でもっと好きなことをして過ごせていたかもしれないです。いらんこと言ってくるやつには「ほっとけや」って言ってやりたいです。

——見返したいという気持ちを手放せたのは、なぜだと思いますか?

ゆりやん:芸人の先輩に「まわりのみんながライバルに思えるし、見返したいという感情をずっと持ち続けているのは、自分自身の首をどんどん締めているようでしんどいです」と、相談したことがあるんです。

そうしたら「その感情が励みになるんやったらいいけど、しんどいときこそめっちゃハッピーな目標を立てたら? ハッピーな目標が実現できたときに、ネガティブな気持ちでいたらもったいないんちゃうか」って言ってもらえて。それからは、自分の好きなことややりたいことに積極的にチャレンジするようになりました。

——過去のことや、ネガティブな感情にとらわれていては、もったいないという考えはその時から芽生えたものなんですね。

ゆりやん:見返したいという気持ちは、まったくのゼロにはできないけれど、そのことをずっと長い時間引きずって考えてしまうことはなくなりました。今でも日常の些細なことで、「ようわからんやつにはタクシー券配っていたのに、私にはくれなかった! 今に見てろよ」とかは思うこともありますが。

ゆりやんレトリィバァ インタビュー 芸人

「私ブスでデブやんか」って話したら「You are beautiful」って

——それこそ、デビュー当時は自虐ネタを披露されていました。自虐をすることから離れた理由も伺いたいです。

ゆりやん:昔は「私って実はデブなんですよ〜」「そんなん知ってるわ!」みたいな流れをよくやっていましたね。それが普通やと思っていたし、苦しみながらやっていたわけでもないんです。 街中で急に知らない人から「デブ」と言われたらむかつきますが、舞台上でやることはなんとも思ってませんでした。むしろ、体型に触れられないのも変だし、笑ってもらったほうがラクだなと。

10年前くらいに、番組でニューヨークに3カ月ほど滞在したんです。そのときのルームメイトに、舞台と同じノリで「私ブスでデブやんか」って話したら、「そんなことない。You are beautiful」って言われて。

そのときは「何がbeautifulやねん!」っていう気持ちもありましたが、その言葉をひとつのきっかけとして徐々に意識が変わっていったのかもしれません。実際に今は、自虐ネタはあまりウケないですしね。運動をするようになって、スタイルがどうとかではなく自分自身に自信が持てるようになったのもめちゃくちゃ大きいと思います。

なんてことを語ると、やたら意識高い感じになってしまいそうですが……今もダメなところはたくさんあります。大事なメールが返せなかったり。でも友達に「私って意識高いかな?」って聞いたら、「人よりは高い」と教えてもらったので、最近は無理して低く見せようとしなくてもいっか!と思うようになりました。 

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撮影/SAKAI DE JUN ヘア&メイク/岡田知子 スタイリスト/伊藤ミカ 取材・文/高田真莉絵 構成/渋谷香菜子