日本とアメリカを拠点に、活躍の幅を広げ続ける渡辺直美さん。2024年に、ドイツ発のセルフプレジャーブランド「ウーマナイザー」とのコラボレーションを発表し大きな話題に。インタビュー前編では、コラボアイテムに込めた想いや、性や恋愛について話すときに意識していること、アメリカで得た発見など、性とコミュニケーションをテーマに話を伺いました。

渡辺直美

お笑い芸人

渡辺直美

1987年10月23日、台湾生まれ、茨城県育ち。2007年にデビューし、ラジオ、舞台、CM、YouTubeをはじめ幅広く活躍。2014年に、プロデューサーを務めるアパレルブランド「PUNYUS(プニュズ)」が始動。海外留学を経験し、2016年10月にNY、LA、台湾で開催したワールドツアーは全公演チケット即完と、大成功を収めた。2019年から東京とニューヨークの2拠点生活を開始。21年4月からは活動の本拠地をニューヨークへ移した。

性との向き合い方は十人十色だと改めて感じた

渡辺直美 ポートレート アップ

——ウーマナイザーからコラボレーションのお話を受けた際のお気持ちを、改めて教えてください。

渡辺直美さん(以下、渡辺さん):ビックリしました! 本当に私でいいんですか?って。なかなか芸人でセルフプレジャーアイテムとコラボしている人はいないですし、素敵な機会だと感じました。私がコラボすることで、皆さんが身近に感じてくれたらいいな、と。“チーム女性”の一員として、人生がより豊かになるかもしれないアイデアの提案をお手伝いできればと思い、お受けしました。

コラボアイテムをSNSで発表すると、「いつも使ってます!」から「これ何ですか?」まで、さまざまな反応がありました。新しいコントグッズだと思った人も少なくなかったみたいで(笑)。セルフプレジャーを当たり前のことのように感じている人もいれば、まったく知らない人もいて、改めて性との向き合い方は十人十色だと感じました。

——コラボアイテムに込めた想いや、こだわった点を教えてください。

渡辺さん:一番こだわったのは色です。蛍光色のように奇抜な色は、絶対に避けようと。セルフプレジャーアイテムを初めて知る人や、今までチャレンジできなかった人も取り入れやすい、優しい色合いを目指しました。淡いピンクと落ち着いた赤の組み合わせは、可愛らしさもあり、部屋に置いてあっても違和感がないんですよ。

パッケージは、私の顔写真がどん!と載っていたら不思議じゃないですか?(笑)。写真の代わりに優しいタッチのイラストにして、コラボ感も残しつつ、手に取りやすいデザインに仕上げていただきました。すでに、「色合いが可愛い」や「セルフプレジャーアイテムっぽくないパッケージで買いやすい」など、たくさんの反響をいただいています。(商品はこちら

下ネタを好きじゃない人に聞かせるのはマナー違反!

渡辺直美 ポートレート インタビュー

——コラボアイテムについてのInstagramの投稿では、「性について表立って話す事に抵抗がない人もいれば苦手な人もいる」と書かれていました。渡辺さんは、性について話す際に意識していることはありますか?

渡辺さん:性について話すことが苦手な人もオープンに話す人も、どちらもいいじゃん!というスタンスですが、私自身は下ネタを言うことも多い。ただ、下ネタが好きじゃない人に聞かせることはマナー違反だと思っているので、必ず相手を選んで話しています。

YouTubeライブのように視聴者の皆さんの顔が見えないときは、コメントの流れを見る。流れが早くなったら盛り上がっている証拠なので、“このラインの下ネタなら大丈夫だな!”と判断しています(笑)。

——性の話についての相手のスタンスを知りたいとき、渡辺さんはどういったことからヒントを得ていますか?

渡辺さん:そういうとき、私はファッションの話題と絡めて相手のスタンスをうかがいます。例えば、「この服、胸元が開きすぎてるかな?」と聞いて、「私は気にならないよ」とか「全然いいと思う!」と答える人は、性について話しやすいイメージ。あと、下着ブランドに詳しかったり、下着の話題で盛り上がったりする人も、ダイレクトな話ができそうな印象を受けます。

恋バナしても、「彼氏できた?」とは絶対に聞かない

渡辺直美 ポートレート メイク

——話したい、相談してみたいけど話せないという人もきっと、たくさんいますよね。自分が恥ずかしかったり、相手にどう思われるのかが不安だったり、さまざまな理由があるのかな、と。

渡辺さん:下ネタを積極的に話すべきだとは思いませんが(笑)、性にまつわる相談や情報収集は、少し気軽にとらえてもいいんじゃないかな、とは思います。私は女子同士ならではの会話をするのが好きだし、大事なコミュニケーションのひとつだとも感じているので。

話したいけど話せない人は、ネットや雑誌で性に関する信頼できる情報を読んで、知識欲や探究心を満たす方法もアリかと。セルフプレジャーについても、最近は女性向けの情報がたくさん増えていますよね。知識を身に付ける中で、もしかしたら話す勇気が出るかもしれないし、やっぱり話したくないと感じたら、もちろんそのままでいい。

近年は性について話したい人、情報を得たい人、苦手な人、それぞれが自分に合った選択を取れるようになってきたと感じます。とてもポジティブな変化ですよね!

——最近は、性に関する話題と同じように、恋愛について話す場合にもマナーが必要という意識が高まっていますよね。恋愛していることが当然のように話題を振られるのは嫌だ、といった声がyoiにも多く寄せられますが、渡辺さんはいかがですか?

渡辺さん:めっちゃ、わかる! 自分の経験談とか悩み相談として恋バナをするのは全然いいと思う。ただ、私は相手にフォーカスした質問はしないようにしているかな。基本、チームのみんなとも恋バナはしないんですよ。「どういう人がタイプ?」とか「こういうことされたらドキドキしない?」みたいな話はするけど、「彼氏いるの?」、「好きな人できた?」は絶対に聞かない。

恋バナに抵抗がない私でも、言いたくないことを聞かれたらキツいですね。私が今ここで答える義務なくない?って思っちゃう。恋愛していないと伝えると、勝手に同情して、謎のフォローをする人もいますよね!? 「そっか〜。でも今、仕事が忙しそうだもんね!」みたいな(笑)。自分が恋愛や恋人にフォーカスしているから、他人もきっとそうだろうと感じちゃうのかな?

——そういったシチュエーションでは、どのように返していますか?

渡辺さん:突っ込みますね。「いや、別につらくないから! 変なフォローしてるよ!!」って正直に言っちゃうかも。空気を壊すことや相手を傷つけてしまうことを恐れて、突っ込むのを控える人もいると思うんですけど、もし私が同じようなことをしていたら、素直に指摘してもらったほうがうれしいです。突っ込まれたら、「本当にごめん! じゃあ違う話にしよう」って謝ると思います。

「私はこうだよ、あなたは?」の姿勢がベスト

渡辺直美 全身 ポートレート

——どんな話題であっても、自分にとっての当たり前を他人に当てはめないことが大事、ということですね。

渡辺さん:その通りだと思います! 私が思うベストは、「私はこうだから、あなたもこうでしょ?」じゃなくて、「私はこうだよ、あなたは?」というコミュニケーション。相手の価値観が自分とは違っても、それを楽しむことだってできますよね。価値観の近い人と話すときには、共感し合って盛り上がればいい。

——アメリカで暮らして、コミュニケーションにまつわる発見や驚きはありましたか?

渡辺さん:アメリカって、カウンセリングに通っている人がすごく多いんですよ。パートナーとケンカをしたらカウンセラーを交えて解決するとか、仕事で悩んだときに話を聞いてもらうとか。日常的にカウンセリングに通うことが当たり前で、日本にはない文化だから驚きました。

私はまだ行ったことがないんですけど、話を聞く限り、めちゃめちゃ理にかなっている印象があります。それこそ、恋バナであれ仕事の話であれ、相手に自分の話ばかり聞かせるのは気が引けることもあるじゃないですか? 内容によっては相談しづらいこともあるし、共感してほしいだけなのに助言されてモヤッとすることもあるし。

そんなときもカウンセリングに行けば、自分の言いたいことを気兼ねなく話せて、しかもプロのアドバイスをもらえる。カウンセリングで悩みやストレスを解消することで、人間関係が円滑になった!という話をよく聞きます。

撮影/久野美玲 取材・文/中西彩乃 企画・構成/木村美紀(yoi)