渡辺直美さんのインタビューの後編は、渡辺さんの“今”にクローズアップ。アメリカでの生活を経て実感する成長や、年齢を重ねることについて、人生を通じて大切にしたいことなど、37歳の渡辺さんの想いをたっぷり語ってくれました。

渡辺直美

お笑い芸人

渡辺直美

1987年10月23日、台湾生まれ、茨城県育ち。2007年にデビューし、ラジオ、舞台、CM、YouTubeをはじめ幅広く活躍。2014年に、プロデューサーを務めるアパレルブランド「PUNYUS(プニュズ)」が始動。海外留学を経験し、2016年10月にNY、LA、台湾で開催したワールドツアーは全公演チケット即完と、大成功を収めた。2019年から東京とニューヨークの2拠点生活を開始。21年4月からは活動の本拠地をニューヨークへ移した。

渡米して、自分でも驚くくらい成長できた

渡辺直美 ポートレート 顔

——2021年に渡米して以来、現地でスタンドアップコメディの単独ライブを開催するなど、新たな挑戦をし続けている渡辺さん。それらを経て、ご自身の成長や変化は実感していますか?

渡辺直美さん(以下、渡辺さん):自分で言うのもなんですけど、めちゃくちゃ成長したと思います。日本でたくさんの方に育てていただき、ある程度経験を積んだ状態で渡米したものの、やっぱり言語が片言の状態で人を笑わせるという壁は大きかったですね。その先にも、ひとつクリアしたら次の試練がどんどん出てきて…言葉に表せないくらい濃い4年間でした。

もともと私はあがり症で、うまくやれる自信がないことは、できるだけ避けてきたんです。緊張して失敗したら、視聴者や観客の方々に対して失礼だと思ったので。でもアメリカに行き、やってみないと何も始まらない状況下で、英語が話せるようになってから…なんて悠長なことは言っていられなかった。いざ物事が動き出してからも、アメリカの凄まじいスピード感に付いていくのに必死でした。

以前、制作会社の上層部の方と会う機会があったんですけど、思いつき程度のアイデアを話したら、「面白いね! 明日までに企画書もらえる?」と言われて度肝を抜かれました。そういった経験の中で身についた意識が、「心の準備がなくても、いつでもレディ(=ready)」。自分にも勇気が出せることを知って、人として、すごく大きくなれた自信があります。

モテて垢抜けて。30代、めっちゃ楽しいです!

渡辺直美 ポートレート 笑顔

——勇気を出してチャレンジすることで、自分の可能性が広がり、自信にもつながったんですね。

渡辺さん:そうです! もうひとつ大きく変わったのは、ファッションのセンス。昔は色という色を体中にまとっていたんですけど、最近はグレーや黒をメインに、メイクで色を取り入れるのが好き。また自画自賛みたいになっちゃうけど、めちゃくちゃ垢抜けました! 30代後半で、まだ垢抜ける余白あったんだ!?って自分でもビックリですよ(笑)。マジで人生捨てたもんじゃないな!と思いました。

——yoiの読者からは、「年齢を重ねるごとに変化や挑戦が怖くなってきた」という声が多数届きます。そういった悩みを抱える人の心に、とても響くメッセージだと思います。

渡辺さん:30代半ばを過ぎると体も変化しがちですし、新しいことをするのが億劫になる気持ち、めっちゃわかります。私も、急激に体力が落ちましたもん。でもね、皆さん聞いてください! 私なぜか30代になってからモテるようになったんです! できなくなることがあったとしても、別の何かが楽しくなることもある。まわりのお姉さまたちからも「30代、楽しいよ!」と聞いていたんですが、マジでした!

——素敵! 絶賛、注目を浴びているということでしょうか。

渡辺さん:そうなんですよ。35歳になったら突然、爆モテ期が到来。垢抜けるわ、モテるわ、30代めちゃくちゃ楽しく生きてます!

ちなみに「30代は楽しい」って教えてくれたお姉さま方は今40代なんですけど、相変わらず、すっごい楽しそう(笑)。そんな姿を見ているから、未来は明るいな!って思えるんですよ。少し先を歩んでいる先輩方に、たくさん勇気をもらっています。

人生の先輩のアドバイスは、ちゃんと聞いて取り入れる

渡辺直美 インタビュー ポートレート

——若い頃は先輩たちの助言を「本当に〜?」と思ってしまいがちですが、歳を追うにつれ「ちゃんと先輩たちの助言を聞いておけばよかった!」と感じることが増える…というのはよく聞きますね。

渡辺さん:わかる!! 20代の頃って、自分は無敵だと思いがちですよね。「メイク落としてから寝ないと、後に後悔するよ!」って注意されてもスルーしてきた結果、今になって、本当だった!みたいな(笑)。

先輩たちが言うことは正しかったと気づいてから、アドバイスはすべて取り入れるようになりました。最近よくいただく助言は、「体力をつけるために、筋肉を鍛えろ」。リアルですよね?(笑) 体力の衰えは私もすでに実感しているので、マジで頑張らなきゃいけないな、と。

私は今まで割と深く考えずに生きてきちゃって、楽しさを第一優先にしてきたんですね。でも40代手前にもなると、責任感が強くなって、どうしても考えることが増える。ため息が出ることが多くなり、まわりを安心させるために元気アピールする、みたいなモードに陥ってしまった時期がありまして。その経験を経て、心の健康を自己管理することも大事だと実感しました。

セックスは私にとって遊園地みたいなもの

渡辺直美 ポートレート お笑い

——30代であらゆる変化を実感する中でも、これは変えずにいたいな、と感じることはありますか?

渡辺さん:自己管理もしつつ、日々を楽しく過ごすことは変えたくないですね。友達とワイワイ、わちゃわちゃ盛り上がる楽しい時間は、ずっと持っていたい。あとは…命ある限り、セックスをし続ける(笑)。下ネタ苦手な人がいたら、ごめんなさい! でも私、大まじめです!

私にとって、セックスは遊園地のような存在。遊園地に行く体力はないけど、セックスならできる!みたいな。(爆笑して)これ、次のスタンドアップのネタにしようかな? 人って年齢やライフステージで、ワクワクすることや心がときめくことが変わりますよね。今の私は、セックスがとにかく楽しいんです。

——昔からセックスを楽しめていましたか?

渡辺さん:いやー、昔は緊張感がありましたね。経験が少ない20代の頃は、ちゃんとできてるかな?とか、変なことしてないかな?って不安でした。心から楽しめるようになったのは、多分ここ数年かと。心が成熟して羞恥心が和らいだこともあるし、何よりも、自分に自信がついたことが大きいと思います。この流れでいくと、60代、70代は今よりも、もっとセックスを楽しめるはず!(笑)

今後、楽しみがセックスではない別のものになる可能性も大いにあり得るし、それはそれでウェルカム。私にとって重要なのは、楽しみの内容ではなくて、何かを楽しみ続けることなので。自分が楽しんでこそ、ファンの皆さんや仕事、友達、チームなど、自分が人生を通じて大切にしたいことと、全力で向き合えていると感じます。

——“楽しむこと”が、渡辺さんにとってのエネルギー源なんですね!

渡辺さん:本当にそうだと思います。セックスに限らず、人とコミュニケーションを取っているときが一番幸せなんですよ。友達とおしゃべりしたり、一緒にごはんを食べたり、旅行したり…人とのつながりに感じる愛情が、私の活力になっています。

撮影/久野美玲 取材・文/中西彩乃 企画・構成/渡辺直美