お笑い芸人の野田クリスタルさんは、数多くのお笑い芸人がトレーナーを務める「クリスタルジム」のジム長という顔も持っています。さまざまなジムが乱立する今、野田さんが考える理想のジムとは? 運動が苦手な人でも楽しく通える「クリスタルジム」の秘密に迫りました。

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野田クリスタル

お笑い芸人

野田クリスタル

1986年11月28日生まれ。神奈川県出身。中学卒業後、15歳で芸人としての活動を開始。その後、地下芸人としてくすぶり続けるが、野田の才能に惚れ込んだ村上に誘われ、2007年にマヂカルラブリーを結成。2013年頃からはゲーム好きが高じて独学でゲーム制作を始め、自作ゲームをピン芸として披露するようになり、『R-1ぐらんぷり2020』で優勝。同年末には『M-1グランプリ2020』でも優勝し二冠を達成。2021年には「クリスタルジム」をオープン。現在は筋肉芸人の筆頭株として、メディアでも活躍している。

思いきり笑って帰れる、楽しいジムを目指して作ったのが「クリスタルジム」

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──まずは「クリスタルジム」を始めようと思ったきっかけを教えてください。

野田さん:マッチョ芸人が増えてきたことに薄々気づいていたのですが、よく観察してみると、芸人がマッチョになっているのではなく、マッチョが芸人になっている、ということに気がついたんです。それはつまり、世の中の人たちの多くが体を鍛えているということだから、ジムを作ったらどうだろう? と頭をよぎったのがきっかけです。

とは言え、スポーツジムはたくさんあるし、やるからには既存のジムと同じでは面白くない。そこでスポーツジムに通った経験があっても、続かなかった人たちの気持ちを考えてみたんです。「マシンはたくさんあるけれど使い方がわからないし聞くのが恥ずかしい」、「スタジオプログラムがつまらない」など、さまざまな原因があるけれど、共通するのは“楽しめなかった”という気持ちですよね。だったら僕は通いたくなるような楽しめるジムを作ろう、と。

──ジムに通いたいけれど続かない人のために、どのようなメニューを考えたのでしょうか?

野田さん:「クリスタルジム」の設立当初は、今よりも狭い場所でパーソナルトレーニングのみ行っていたのですが、トレーナーが芸人という利点を最大限に生かして、笑いの要素を随所に取り入れつつ、それぞれの目的に合わせたメニューを組んで、最短で成果を出すことにこだわりました。楽しくトレーニングしていたら結果がついてきた、となればみんな続けたくなりますからね。

今の場所は、2024年の10月にリニューアルオープンしたのですが、「クリスタルジム」を始めたときから広いスタジオが欲しいと思っていたので、ようやく念願がかないました。スタジオでやるトレーニングはヨガやピラティスのようなものもあるけれど、「クリスタルジム」では運動を一切しないプログラムもあるんですよ。芸人たちが自分が得意なことを披露してお客さんと共有できる、ちょっとした劇場になればいいなという思いがあって。yoiにも登場したアイパー滝沢さんの編み物教室をはじめ、人狼ゲーム、けん玉教室、クイズ大会なんてプログラムもあるくらいですから(笑)。

夏休みのラジオ体操みたいな感覚で来てもらえれば。運動は二の次でもいい。

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──ジムなのに運動しないって…新しい発想ですね!

野田さん:スタジオトレーニングが始まった当初、特技とトレーニングを無理矢理紐付けようとしているトレーナーの芸人たちが多く見受けられたのですが、それは必要ないと思ったんです。体を鍛えることはもちろん健康につながるけれど、笑いだって健康にいいと思うんです。だから「クリスタルジム」では、トレーニングを一切しなくても楽しくやれたら健康だよねってスタンスです。

僕、子どものころ、夏休みのラジオ体操が大好きで、皆勤賞をもらったんです。でもあれって体にいいからやっていたわけではなく、朝早起きして友達がいるあの場所に行くってことが楽しかったから行っていたんですよね。知らない人たちではあるけれど、同じ目的を持った人たちが集う、なんだか楽しい場所に「クリスタルジム」もなれたらうれしいなと思うんです。

──ただ運動するだけでなく、そこにコミュニティがあるからこそ楽しく運動できるということも重要ですよね。

野田さん:お客さん同士、自然と仲良くなっているようで僕らも嬉しいです。ジムとは言っていますが、運動しに行くというよりちょっと遊びに行く感覚で通えることも、足を運びやすい理由につながっているのかもしれません。

最近、健康にならなければいけないという強迫観念に駆られる人が増えているそうですが、無理してまで健康になろうとする必要はないと思うんです。ただ、コンプレックスがあって解消したいとか、年齢を重ねて健康になりたいとか、気になることを改善したいと思ったら、健康になるための努力をすればいい。楽しいだけでなく、本気で運動して変わりたい人のためのメニューも「クリスタルジム」にはあるので、さまざまな人のニーズにこたえられます!

──新しいスタジオになって、パーソナルトレーニングも充実したのでしょうか?

野田さん:はい。パーソナルトレーニングエリアは、都内のスタジオの中ではかなり広いほうですし、器具も充実しています。それからトレーナーの数もかなり増えました。全員が芸人で、ネットで検索すればどんな人かすぐに出てくるので、面白そうだな、会ってみたいなという感覚で選ぶのも「クリスタルジム」ならではの楽しみ方かもしれません。もちろんホームページにはトレーナーの詳細が書かれているので、得意なメニューなどから選ぶこともできますよ。

余談ですが、新しいスタジオの中で僕がいちばん好きな場所はトイレです。もともとトイレはついていたのですが、古かったのでぶっ壊して新しいトイレを作りました。費用も手間もかなりかかりましたが、ジムのトイレはキレイであるべきだという持論があるので(笑)。それから更衣室も個室になっていて、中には全身が映る鏡もあるのもこだわりです。

ジムでの運動を習慣化すると、メンタルも不思議と安定する

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──今やマッチョ芸人の代表とも言うべき野田さんですが、いつ頃からトレーニングをされていたのですか? 

野田さん:小学生の頃からバスケットボールをやっていたのですが、ダンクができないまま人生を終わりたくないという思いが湧いてきて、ジャンプ力を上げるトレーニングを独学で始めたのがきっかけでした。週7ペースでジムに通っていたので、気づいたらマッチョになっていたという感じです(笑)。

仕事がない時期でも毎日ジムへトレーニングに行くことで、1日をきちんと過ごしたという達成感が得られるので、メンタルを病むことなく、心穏やかに過ごせていたという副産物までありました。だからM-1優勝後、急に忙しくなりジムに行けない日々が続いたときは本当につらくて生きた心地がしませんでした(笑)。今はなんとか週4回くらい行けるように調整しています。

──野田さんのようにストイックに追い込めない運動初心者でも「クリスタルジム」に通うことでメンタルヘルスを保つことはできますか?

野田さん:できると思います。むしろ「クリスタルジム」に通っている方たちは、楽しむことを目的に通っている方が多いので、運動初心者の方にこそおすすめです。ここに来ることが生活の楽しみになれば、運動ゼロのプログラムから始めて、軽いストレッチや初心者向けのピラティスのクラスに出てみようかなという気持ちが起こるかもしれない。起こらなくても楽しみのひとつになれば心穏やかに過ごすことができますから。

東京の観光名所に「クリスタルジム」が入るのが目標

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──プログラム以外でも、ジムに通いたくなるさまざまな仕掛けがあるのが「クリスタルジム」ならではですよね。

野田さん:時間を作ってせっかく行くのだから、何か特典があるほうがうれしいと思うんですよね。5月まではスタジオプログラムに参加すると、トレーナーのトレカがランダムでもらえるサービスを行って好評だったので、今後も色々なことをやっていければと思っています。

──今後「クリスタルジム」としてやりたいことはありますか?

野田さん:“出張クリスタルジム”です! 僕らはずっと器具を使ったトレーニングをしてきたのですが、スタジオプログラムは器具がなくてもできるものがたくさんあるので、色々な地方に出向いてプログラムを行いたいですね。僕らが考える“笑いと健康”で、たくさんの人に楽しんでもらえたら最高です。

そして将来的には「クリスタルジム」を観光地にしたいんです。スカイツリーに登り、吉本の劇場に足を運び、最後に「クリスタルジム」でトレーニングをするというルートができればいいなと思っています。 

菊池美里

エディター・ライター

菊池美里

大学時代にストリートのファッションやカルチャーに傾倒し、愛読していた雑誌の編集部に就職。ファッションの仕事を中心に、俳優やミュージシャンなどへのインタビューや、スポーツ系の体験取材など、興味のある分野を掘り続け今に至る。趣味は音楽鑑賞とボクシングと野球観戦。

撮影/山本雄生 構成・取材・文/菊池美里