「yoi」読者のみなさん、こんにちは。集英社yoiエディターズ、すばる編集部Kです。
今回は、文芸誌「すばる」の連載「きみを愛ちゃん」をご紹介します。【集英社yoiエディターズリレーvol.7】

この記事を書いたのは…
K

集英社すばる編集部

K

現在は文芸、すばる編集部に勤務。
偏食・運動嫌いと健康をなんとか両立させたい今日この頃。気分転換には水辺に行きます。

キャラクターを深堀りする連載 詩人・最果タヒさんによるアツい言葉

「すばる」は文芸誌と呼ばれる雑誌で、小説、エッセイ、論考、対談、インタビューなどを掲載しています。
A5判、厚さおおよそ15ミリ、ハンドバックにも頑張れば入るサイズ感。


なかなか目にする機会がないかもしれませんが、世の中の書籍が本の形になる前に、こういった雑誌で連載されていることも多いのです!
(そう、ジャンプとジャンプコミックスのようにね) 
毎月6日に刊行していますので、今後どうぞお見知りおきください。


文字ばかりでとっつきにくい……と思われるかもしれませんが、
詩人・最果タヒさんによる連載「きみを愛ちゃん」を紹介したいと思います!


 

すばる すばる文学賞 本 雑誌 純文学 近藤愛

11月号表紙はこんな感じ。表紙のイラストは近藤愛さん。毎月色が変わります。今月は赤!

「きみを愛ちゃん」は、毎回ひとりの「キャラクター」を取り上げ、最果タヒさんがその人物について掘り下げていく連載です。
これまで登場したキャラクターは、星の王子様(『星の王子様』)、姫川亜弓(『ガラスの仮面』)、のび太(『ドラえもん』、デンジ(「チェンソーマン」)、プー(『くまのプーさん』)、麻宮裕子(『天使なんかじゃない』)とさまざま。

すばる きみを愛ちゃん 最果タヒ 本 雑誌 純文学 近藤愛

連載を毎月彩る、とんぼせんせいのイラスト。
キャラクターについての連載とは……?そんな疑問に答える、最果さんの前書きです。

シャンプーとムースの関係が尊いのはなぜか

たとえばどんな風にかといいますと……
「すばる」11月号では、漫画「らんま1/2」からシャンプーを。ムースとの関係性を中心に考えます。
「らんま1/2」といえば、高橋留美子先生による大人気ラブコメ、「少年サンデー」連載期間は1987~1996年と20年以上前ながら、いまでもオリジナルグッズが発売されると完売するなど、若い世代で再び注目が集まっています。

作中屈指の人気を誇るキャラクター「シャンプー」は、主人公の乱馬を倒すために中国からやってきたとっても(物理的に)強い女の子。
いろいろあって乱馬に熱烈な恋をするシャンプーと、そんなシャンプーに想いを寄せ続けるムース。
そんなシャンプー&ムースの幼馴染同士の組み合わせは、その恋が成就するかしないかは置いておき、物語の中でたびたびフォーカスして描かれます。
 この回で最果さんは、「自分のことを好きな人に対する愛着、にはどういう言葉を当てはめるべきなのか本当に難しいところがある」と書き始めます。
そこで、この二人って複雑な関係なのでは……?とはっとしました。
ムースに対するシャンプーの態度は、だいたいが冷淡なものですが、ムースが乱馬との勝負に卑怯な手を使って勝とうとしたときだけ、怒ったりするんです。
最果さんは、ムースの卑怯さにシャンプーが怒るのは、「ムースが自分のことを好きだから」だと分析します。

それまで漠然と「つかず離れずのいい組み合わせだなあ」ととらえていたのですが、現実だと一方通行の好意がある関係って、とても難しいものですし、単純にいいものだとは思えませんよね。
最果さんは言葉を通して、その複雑さ、「つかず離れず」いることの尊さに迫っていきます。
シャンプーにとってのムースが「自分のことを好きな人」だと、とらえたときにしか見えてこないシャンプーの優しさ!ムースの理性!
読み終わると二人の関係をたんに「つかず離れず」だとは思えなくなるんです。

自分の「推し」はどんな人物?

キャラクターと真剣に向き合ったときだけに生まれる言葉の数々は、その原作を知らずとも面白いのですが、とりわけ「推しがいる人」に楽しんでもらえるのでは、と思っています。
推しはいったいどんな人物なのか? 何を考えているのか? この関係性は? 自分が抱いた感情に、言葉が追いつかない……語彙がもっとあれば……!
こうしたもやもやを抱える方、この連載には通じ合える言葉があると思います。
ぜひご一読ください。