yoiとMEN’S NON-NOコラボによる、「男性のモヤモヤ座談会」の第3回のトークテーマは「育休」。実際に取得している男性が少ないからこそ実情が気になる! ということで、今回もyoi編集部員木村とMEN'S NON-NO編集部員の山口が、座談会で本音を聞き出してきました。
「集英社yououriプロジェクト」とは?
2024年10月から、「yoi」と集英社の7つのファッション・ビューティマガジンのコラボコンテンツ「集英社yououriプロジェクト」がスタート。「yoi」の理念である「you(あなた)とi(わたし)でour(わたしたちの)社会を創る」のもと、yoi編集部と各媒体の編集者がエンターテインメント性と社会的意義やウェルネスを両立するコンテンツを創出します。「Seventeen」「non-no」とのコラボは今どきの高校生と大学生のインサイト、「MORE」「BAILA」とは働く女性のウェルネス、「MAQUIA」「SPUR」とはフェムテック、「MEN’S NON-NO」とは男性のモヤモヤをテーマにお届けします。
Yoi編集部
入社11年目のエディター。入社9年目までは、「MEN'S NON-NO」編集部で勤務していた。「yoi」に異動してからの2年半で、ジェンダーや社会問題への関心がますます高まっている。
MEN’S NON-NO編集部
入社10年目のエディター。入社以来在籍していた広告部から、昨年「MEN'S NON-NO」編集部に異動。20代前半のモデルと読者に囲まれながら、ファッションだけでなく彼らのジェンダー観も勉強中。
座談会の参加者はこちらの3名!
Aさん 34歳、東京都在住。出版社勤務。3歳になる子どもと妻との三人暮らし。育休は2カ月取得。妻の育休は1年8カ月で現在は復職している。
Bさん 30歳、東京都在住。仕事はIT関係。1歳の子どもと妻との三人暮らし。育休は9カ月取得。妻の育休は8カ月で現在は復職している。
Cさん 33歳、神奈川県在住。コンサルティング業。1歳の子どもと妻の三人暮らし。育休は取得せず。妻の育休は継続中で、子どもが3歳になるまで取る予定。
育休を取ることで、妻と育児のスタート地点をそろえたかった
木村 まずは皆さんが育休を取得した・しなかった理由から教えてください。
Aさん 私は前の職場で同じチームに所属していた先輩が育児に積極的で、育休を取った話をしてくれたことがきっかけになり、自分でも取ろうと思うようになりました。実際、子どものケア方法がまったくわからないという状態だけは避けたいという気持ちはあったので、第一子が生まれるタイミングで育休を取っておけば、妻とのスタートラインもそろえられるし、お互いに学び合いながら育児ができる状態になれて一石二鳥かなと。
Bさん 理由があって…というよりも、自分の中で以前から「育休は当たり前に取るものだ」という考えがあったので、取らないという選択肢はありませんでした。
Cさん 私は正直、取ることは考えませんでした。当時、進行していた仕事のプロジェクトを大事にしたかったというのが大きな理由です。それから、当時は夫婦間の収入差が大きかったことや、妻がすぐに職場復帰する必要も感じていなかったということもあります。でも今改めて当時を振り返ってみると、仕事を休んで育児と真正面から向き合うことが怖かった部分もあるのかもしれません。
木村 Bさんは9カ月とかなり長期間の育休を取得されていますが、Cさんのような収入面での心配はなかったのでしょうか?
Bさん うちは妻の稼ぎがしっかりしている上に、私より収入も少し多かったので、妻だけが休んで自分が働き続けるという選択肢は最初から考えていませんでした。子どもが生まれる前から掃除や料理は好きでやっていたので、私が育休を取得したほうが色々とスムーズに回るのかなとも感じていたので。
山口 仕事の引継ぎや収入面など、さまざまな観点から検討を重ねられるのですね。そういったサポートを受けられるような、会社の育休制度は充実していましたか?
Aさん 私の会社はごく一般的な感じだと思います。独自の制度としてベビーシッター補助や病児保育の法人契約はありましたが、育休期間中に給与が出ることはありませんでした。
Bさん 私の会社も会社独自の補助はありませんでした。ただ、私ほど長期の育休を取得した男性は今までいなかったようで、上司にはかなり驚かれましたよ。
Cさん 私のところは男性を対象とした配偶者出産休暇があったり、出生児育休として4週間まで給料が100%支給されて休めたりと、お二人に比べると私の会社は男性の育休制度が充実しているかもしれません。育児休暇は2歳まで取得する権利もあります。
木村 皆さんが、実際に育休を取ってよかったと思うことはありますか?
Aさん 新生児期の子どもの生活のリズムは、24時間で一区切りではなく、3〜4時間をループしながら進んでいくような感じなので、二人で交代しながらやることで、なんとかしのげた気がします。先ほどもお話しした、子育てにおいてのスタートラインを妻と揃えたことで、お互いの考え方を伝え合って育児ができたこともすごくよかったです。
Bさん 妻と一緒に大変な時期を乗り越えられたことです。二人とも育休を取ったことで、どちらかが“手伝う”という感覚ではなく、主体性を持って二人で育児をしていく意識を持つことができました。子どもとも長く一緒にいられたことで距離が縮まったのかなと思います。
Cさん お二人のお話を聞いて正直すごく羨ましいです。Aさんのようにスタートラインを同じにしなかったことで、私は育児においてわからないことだらけです。例えば子どもがうんちをしてしまってオムツを替えなければいけないとき、替えなければいけないとは思うのだけど、お尻拭きが見当たらなくておずおずしている間に妻が来てイライラされたり、私のオムツ替えが下手でおしっこが漏れてしまい後々怒られることもあります。
役割分担として割り切れたらいいんですけど、仕事と違って育児には感情が伴ってくるから、妻がそう思うのは自然なことだとは思うのですが、自分ではどうしようもできず…。
山口 今はどのような着地点に至ったのでしょうか?
Cさん 正直まだ着地できてはいないのですが、今は割り切りモードでお互いが納得できるのかに挑戦しているところです。頭の中にある“こうすべき”という考えがじゃまをしていて、お互いにストレスが溜まっている状態なので、ぶつかることも多く大変です。
木村 単純に「やること」の分担割合だけでなく、「子どものことをどれだけ考えているか・知っているか」ということに差があると感じると、孤独感を募らせてしまう…という悩みはよく聞きますね。Aさん、Bさんは、家事負担のバランスはどうなっていますか?
Aさん 子どもができる前は半分ずつやっていて、出産直後は妻が大変な分、私が多くやるようにしていました。その後、育休期間は半々に戻り、私の育休が明けたタイミングで妻の負担が増え、今は妻も仕事に復帰しましたが、7:3か6:4くらいで妻の方が多く家事を担ってくれています。
Bさん うちの場合、私がメインで家事をやっています。割合にすると7:3くらいでしょうか。でもお二人の話を聞いていて、それぞれの家庭にベストなバランスがあると思うので、どのバランスがいちばんいいという正解があるわけではないとも感じました。うちの場合、たまたまこれがしっくりきている感じです。
Cさん うちは家事は95%が妻がやっています。その分、自動掃除機や食洗機などで省力化を図ることで、できる限り妻の負担を減らせるようにしています。そうは言っても休みの日にソファに寝転がってスマホをいじっていると、家事と育児で臨界点を超えた妻に怒られることはあります。
子どもの“初めて”の瞬間に妻と立ち会えたことが最高の喜び
木村 育休中に経験した出来事の中で、特に大変だった!ということはありますか?
Aさん うちの子は、抱っこしないと寝ないタイプで苦労しました。世の中にあふれているさまざまなメソッドを試してもどれも効果がなくて。そんなタイミングで人から「あれをやってみたら?」なんて言われると、善意とはわかっていても「もうそれもやってるし!」と思ってイラっとすることもあり、そんな自分が嫌になることもありました。ちょうどその時期に引っ越しが重なったのも大変さに拍車をかけたのかもしれません。
Bさん 子どもとの意思疎通を取るのって本当に難しいですよね。それに加えて、子どもと妻と3人でずっと家にいるのでストレスが溜まってしまい、妻に対してつい語気が強くなることもありました。
Aさん ストレス解消という意味で言うと、引っ越しは結果としてプラスに作用しました。家が広くなったことで、誰もいない部屋に行ってひと息つくだけで気分転換になるし、子どもを抱っこして階段を上り下りすることで、自分の心も落ち着いてくるというか。
Bさん 私の場合、最近は車で40分くらいのところにある妻の実家へ週末になると行き、子どもをちょっと見てもらっている間に大好きなサウナへ行ったり、妻と二人で食事に行ったりするのがストレス発散になっています。
山口 夫婦だけの時間や自分一人でのリフレッシュ時間がとれるなど、 親に頼れるのはいいですね。
Bさん 本当に助かっています。すごく可愛がってくれているので、子どもも楽しそうにしています。
Aさん うちの場合は妻の実家が近くにあるのですが、お義母さんが妻以上に働き者なので、子どもを預けられないんですよね。でも料理好きなので、週末になると手料理をたくさん持ってきてくれるので助かっています。
Cさん 私は妻の実家が埼玉なので年に3〜4回くらいは行っています。すごく近いわけではないけれど、何かあったら頼れる場所に親がいてくれるのは安心感があっていいですよね。僕が海外出張で長期間留守にしている間は、妻と子どもは実家で過ごしたりもしています。
木村 パートナーの方はどのようなストレス発散をしているのでしょう?
Aさん 観劇に行くのがもともと好きだったので、最近また土日を利用してよく行っています。その間は私が子どもと二人で過ごしています。お互いにリズムが作れてきたので、ストレスはかなり解消できている気がします。
Bさん 私たちもリズムはもうでき上がってきた感じです。平日は、子どもを迎えに行ってお風呂に入れて寝かしつけるところまでは一人でもできるので、どちらかが仕事終わりに友人とごはんに行くこともあります。事前に予定を把握しておけばまったく問題ありません。
Cさん うちは最近、妻がピラティスに通いはじめました。私が家にいるタイミングで子どもを寝かしつけた後にそっと出て行くのですが、3分の1くらい経った時点で起きてしまい泣くんです。そうするともう妻が帰ってくるまでひたすら子どもを抱っこしてスクワットをします。でも妻が少しでもストレス発散ができるのなら、数時間のスクワットくらい平気です(笑)。
山口 それぞれの家庭で色々な方法があって面白いですね。
木村 大変なことも多いと思いますが、楽しいこと・うれしいことについてもお伺いしたいです。育休中、思い出に残っている出来事はありますか?
Aさん 子どもが生まれたのがコロナ禍だったのですが、そのタイミングって飲食店の持ち帰りメニューがすごく充実していたじゃないですか。たまたま見つけたフレンチレストランのフルコースを持ち帰って妻と家で食べたのが今となってはいい思い出です。
どちらかが子どもを抱っこしている間にどちらかが食べる、みたいな感じだったのですが、今でも妻がたまにその話をポロッとしてくれるので、やってよかったなと思いました。
Cさん それは素敵ですね!
Bさん 子どもの“初めて”の瞬間にたくさん立ち会えたことが最高の喜びでした。ハイハイをし始めた、寝返りを打った、音楽に合わせて体を動かし始めた…と、色々ありますが、そのすべてに妻と一緒に立ち会えて、喜びを分かち合うことができたことは僕にとっての宝物です。
子育てをすることで、様々なことに対して寛容になることができた
木村 育休中にパパ友はできましたか?
Aさん 女性はママ友がたくさんいる印象ですが、男性の場合は保育園の送り迎えでよく見かける方がいても基本的には挨拶だけってことが多いのではないでしょうか。お互いに存在を認識しているので、リスペクトをしながら心の中で“お疲れ様です”とつぶやいています(笑)。
Bさん そうですね。子どもを迎えに行ってそれ以外のことをする時間もあまりないですし。もう少し子どもが大きくなって友達ができたら、そこで親同士が話すようになることはあるかもしれないですね。
木村 なるほど。育児のための情報交換をするコミュニティなどにも入っていなかったのでしょうか?
Aさん そうですね。子どもの性格はもちろん夫婦の関係性など、それぞれの家庭によってやるべきことは変わると思うので、コミュニティに入るほどの必要性を感じませんでした。
Bさん うちはアプリの掲示板をたまに見ていたくらいです。特に自分たちで書き込むことはなかったし、すごく熱心に読んでいたわけではないけれど、同世代の子どもを持つ親の悩みや解決法を流し見していました。
Aさん 情報収集という意味で言うなら、分厚めの育児書を2冊買いました。育児法を学びたかったわけではなく、絶対にやってはいけないことを知りたかったので、必要な部分だけかいつまんで読みました。育児に関しては自分たちのやり方で進めようと妻とも話していたので、情報収集は必要最低限にとどめておきました。
Cさん 私も知識欲はあるので、本を数冊買ったのですが、0歳〜2歳くらいまでのことがまとめて書かれている本が多くて。1カ月単位で知りたいことは変わるのに、そのとき知りたいことが載ってないってことが多々あったので、1カ月単位での本があるといいなと思いました。妻は育児の傍ら、同じ月齢の子どもを持つ親のYouTubeなんかを見たりしていたようです。
山口 育休中に国から給付される育児休業給付金は役立ちましたか?
Aさん 役に立ったのは事実です。自分はもちろん、会社としても休業中の人に給料を払うことなく、雇用保険からお金が支払われる制度ってすごいですよね。ただ上限があることにはちょっと残念な気持ちになりました。さまざまな税金が収入に応じて加算されるのに、給付のときは上限があるってちょっと違和感がありますよね。
もちろん制度には歴史があるし、何らかの理由があるとは思うのですが、みんなが均等にもらえるようになれば、男性の育休取得率も上がるのではないかなと思っています。
Cさん まさに私が育休取得をしなかった大きな理由がそれです。子どもと一緒に過ごせるメリットはわかっていたのですが、経済面との天秤にかけたときにどうしても踏み切れなかった。もし上限がなかったら、育休取得についてもう少し考えてから決断をしていたかもしれません。
Bさん 申請してから給付までの期間が平均で2〜3カ月かかってしまうのも改善してもらいたい点ですよね。給付されるまでは貯金を使ってしのぐのが通例なのでしょうが、もう少しスムーズに支給されると気持ちの面でも余裕が生まれるのかなと思いました。
木村 ありがたい制度ではあるけれど、改善の余地はありそうですね。行政に限らず、使ってみてよかったサービスや手当てはありますか?
Aさん “マル乳”と呼ばれている、乳幼児医療費助成制度です。子どもの場合、大人の病気と違って、病院に行くべきか行かなくてもいいのか微妙なシチュエーションって多々起こるんです。そんなときでも、医療費がかからないので安心してお医者さんに相談に行けるのは本当に助かりました。
木村 不安なとき、自分の親に聞いたりすることもあるかもしれませんが、時代が違うと子育ての常識も変わっていたりして…なかなか正解がわからないですもんね。
Aさん そうなんですよ。それから病児保育も助かりました。私の子どもが通っている保育園は37.5度以上の熱が出ると預かってくれない上に、保育中に38度を超える熱が出ると翌日は登園不可になってしまうんです。そうなったときに病児保育は本当に助かりました。ただ利用者に対してのキャパシティが足りていないので、ぜひもっと広げてほしいと思いました。
Cさん 私の場合は出産直前まで住んでいた新宿区から、10万円の出産応援ギフトがもらえたのがよかったです。チャイルドシートやベビーカーなど、何かとお金がかかるので。ただ出産後に引っ越した場所では子どもを持つ家庭への支援がそこまで手厚くなく、こんなにも地域差があるのだと驚きました。
Bさん 私も区からのギフトは活用させてもらいました。それから気持ち的な面になるのですが、子どもが生まれる前に行った両親学級はすごくよかったです。女性は妊娠することで自然と出産へ向かって気持ちが作れると思うのですが、男性はどうしても同じ気持ちになることは難しいと思っていて。これから子どもを迎え入れるための自分の中でのマインドセットをするという意味で、両親学級に行くのはおすすめです。
木村 色々な経験を経て、育休を取る前と取った後で自分の中で変化はありましたか?
Aさん 優先順位の一番が子どもになったことで、時間の使い方が確実に変わりましたね。一人で過ごす時間がほぼなくなってしまうのでストレスを感じる人も多いようですが、私は大丈夫でした。
Bさん 自分の意思ではどうにもコントロールできない子どもという存在と過ごすうちに、物事に対して寛容になった気がしています。
また、育休が明けて出社してから周りを見渡すと、自分は取って当然だと思っていた育休が、仕事である程度の役職についている人だとどうしても取れないんだということも理解することができました。物事にはさまざまな面があって、それと同じだけ選択肢があることを知ることができたのも、育休を取得したからだと思います。
Cさん 今日は育休を取った同世代の方の話を聞くことができて、本当によかったです。社会では、育休について色々言われているけど、夫婦や家族ってものすごくプライベートな空間だから、実際のところはどうなんだろうという疑問もたくさんあったので、ものすごく深く考えさせられました。
二人の話を聞いたことで、まずは妻とお互いの考えについてしっかり話し合う機会を設けようと思いました。育児に対する二人の考え方がまとまったとき、初めて育休についても考えられるのかなと。やはり言葉にして伝えるって大事ですよね。
イラスト/喜田なつみ・MIDORI KOMATS(木村と山口の似顔絵) 取材・文/菊池美里 企画・構成/木村美紀(yoi)・山口 朗(MEN'S NON-NO)