yoiとMEN’S NON-NOコラボによる、「男性のモヤモヤ座談会」の第4回となる議題は働き方。国をあげての働き方改革が進められている今、30代の男性たちは仕事や働き方についてどう考えているのでしょうか? 今回も、yoi編集部員木村とMEN'S NON-NO編集部員の山口が、座談会で本音を聞き出してきました。

yoi メンズノンノ 働き方

「集英社yououriプロジェクト」とは?
2024年10月から、「yoi」と集英社の7つのファッション・ビューティマガジンのコラボコンテンツ「集英社yououriプロジェクト」がスタート。「yoi」の理念である「you(あなた)とi(わたし)でour(わたしたちの)社会を創る」のもと、yoi編集部と各媒体の編集者がエンターテインメント性と社会的意義やウェルネスを両立するコンテンツを創出します。「Seventeen」「non-no」とのコラボは今どきの高校生と大学生のインサイト、「MORE」「BAILA」とは働く女性のウェルネス、「MAQUIA」「SPUR」とはフェムテック、「MEN’S NON-NO」とは男性のモヤモヤをテーマにお届けします。

木村美紀

Yoi編集部

木村美紀

入社11年目のエディター。入社9年目までは、「MEN'S NON-NO」編集部で勤務していた。「yoi」に異動してからの3年で、ジェンダーや社会問題への関心がますます高まっている。

山口朗

MEN’S NON-NO編集部

山口朗

入社10年目のエディター。入社以来在籍していた広告部から、一昨年「MEN'S NON-NO」編集部に異動。20代前半のモデルと読者に囲まれながら、ファッションだけでなく彼らのジェンダー観も勉強中。

座談会の参加者はこちらの3名!

Aさん
 32歳。東京都在住。4年生大学卒業後、外資系のIT会社に営業職で入社。職種だけでなく、担当先も変わることなくもうすぐ10年目に突入。

Bさん 30歳。東京都在住。短大に通い美容師免許を取得後、3年間美容師として働く。その後、フリーランスでライターを始め、今年で8年目。昨年12月より趣味が高じてフィギュアなどを扱うおもちゃ屋をオープンさせた。

Cさん 32歳。アメリカ在住。4年生大学卒業後、大手鉄鋼メーカーに入社し、経理関係の仕事を担当。九州、東京での勤務を経て、2年ほど前にアメリカへ赴任。

仕事と趣味の線引きってどうしてる?

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木村 皆さんが最初の仕事を選んだ理由から教えてください。

Aさん あまり先のことを考えるのが得意ではないので、将来のことを考える就職活動は、今まで生きてきた中でかなりキツイものでした。ただひとつだけ明確に“嫌だと思う仕事はしない”ということだけは決めていました。IT業界を志したのは、ひとつのことに縛られたくなかったから。それから僕は要領がいいタイプなので、日本の会社に入ったら楽に仕事をすることが想像できたので、少し厳しい環境に身を置こうと思い、外資系を選びました。

木村 IT系というと、SEをやっている方も多いと思いますが、Aさんはなぜ営業職を選んだのですか?

Aさん 僕は文系でSEはできる自信がなかったので、最初から営業に絞ったんです。IT系の営業職は、企画書を作ったらあとは事務処理して終わり、ということが多いのですが、僕が今いる会社は営業がお客さんとしっかり対話をして自分の提案で内容が決まるので、やりがいがあると思い志望しました。

Bさん 僕の場合は祖母が美容師をしていて、それを見ていて小さい頃から美容師になる夢があったので、そのまま突き進んだ感じです。中学や高校ではファッションにも興味を持って雑誌をよく読んでいたので、雑誌で仕事ができる美容師になりたいと思うようになり、表参道の美容室に就職しました。

山口 せっかく夢を叶えたのに、なぜ辞めてライターへと転身されたのでしょうか?

Bさん 最終的にヘアメイクの仕事をしたいと思っていたのですが、それは雑誌を作る側の人間になりたいという気持ちがあったからだということに気づいたんです。それにはライターになるしかないと思い、無計画のまま美容師を辞めました(笑)。

山口 無計画で、ですか!?

Bさん はい。最初の頃はライターとは名ばかりのフリーターでしたよ(笑)。どうやったらなれるのかもわからない状態でのスタートだったので、とりあえず自分が好きなことを発信しようと思い、ZINE(ジン)を作りはじめました。

木村 どんな内容のZINEだったのですか?

Bさん 当時はお酒を飲むのが好きだったこともあり、東京のディープな飲み屋を探して一晩飲み明かし、そこでの体験を写真と文章でまとめたんです。10冊くらい出したのですが、たまたまそれが雑誌の編集者の目に留まって、声をかけてもらえたんです。

木村 すごい! 自分で道を切り開いたのですね! 

Bさん そんな大層なものではありません(照)。でもそのときに箸にも棒にもかからなければ、相当イタイ大人になっていたと思います(笑)。 

山口 ライターとして食べられるようになるまでにどれくらいかかったのですか?

Bさん 約3年です。それまではアルバイトをしながらの生活でした。美容師時代は1週間休みなく1日14時間働いて、仕事が終わったあとに練習や作品作りをしていたので、それに比べれば体力的な面ではラクでしたよ(笑)。

木村 それは壮絶な日々でしたね…。

Cさん 僕はBさんのようにドラマチックな感じではなく、就職するなら大企業がいいなというスタートラインからです。それに加えて、就職活動を始める直前に半年ほどオーストラリアへワーキングホリデーで行っていたこともあり、海外で働きたいという思いが強く海外赴任の可能性がある企業に絞りました。それからOB訪問で会った方が、正面から意見を言ってくれる人が多く、ここなら自分が成長できそうだなと思えたことが最後の決め手になりました。

木村 なるほど。ところで、3人と同世代の山口くんがなぜ集英社に就職したのかも気になる!

山口 学生時代からファッションとエンタメに興味があって、ファッション誌の編集に携わりたいと思ったので集英社を志望しました。最初に配属されたのは広告部(現メディアビジネス部)で、8年在籍しました。

木村 広告部(現メディアビジネス部)での仕事はどうだった?

山口 広告部での仕事は充実していたし、やりがいもあったけれど、ファッション誌の編集を経験したいという気持ちもあったんです。30歳になったとき、MEN'S NON-NO編集部に配属されました。

木村 社内異動といっても仕事の内容がガラッと変わったから、キャリアや働き方の変化は大きかったかもしれないね。ところで皆さん、今の仕事には満足していますか?

Aさん 仕事内容もクライアントも10年間まったく変わっていないのですが、同じことをやり続けるのが嫌いではない上に、自分のやり方でやれている今の状況には満足しています。少しずつできることが増えていくのが楽しいんですよね。ただ僕の中で仕事は、生きるためのお金を稼ぐ手段として絶対にしないといけないこと、という認識があるんです。その範疇では、やりがいもあって楽しく気持ちよく働けている、という感じです。

Cさん 僕は経理財務の仕事をしていて、日本では九州の工場から東京の本社へ、アメリカでも最初は地方都市の工場に配属され、今はオフィス機能がある場所に勤務しています。環境がガラリと変わってもすぐに適応できるタイプなのでストレスはありません。今は日本とのオンラインの会議があるので、時間が早朝や深夜になることが多く、それが少し大変なくらい。基本的にはスケジュールが見えやすい仕事なので、プライベートとの線引きもしやすく満足しています。

Bさん 僕も満足はできています。去年の12月におもちゃ屋をオープンしたのですが、ライターの仕事がないタイミングでお店を開け、夜はそこで原稿を書いて、のんびりやれています。

山口 僕は編集の仕事にやりがいを感じているものの、皆さんみたいにまだうまく仕事の時間をコントロールできない部分もあります…。Bさんのお店は、事務所の役割も兼ねているんですね!

Bさん そうなんです。もともとは事務所として使える場所を探していたのですが、趣味のおもちゃを生かしたお店も一緒にやれたら、賃料が浮くかなと思って。1年くらいかけてじっくり探したら、場所も賃料もベストな場所が見つかったのでホッとしました。

山口 まだ始めて数カ月ですが、おもちゃ屋の仕事はどうですか?

Bさん ライターの仕事って、長くやればやるほど、一緒に仕事をするメンバーが固定化してくるんですよね。でもおもちゃ屋を始めたことで、共通の趣味を持つ新しいコミュニティが生まれて非常に楽しいです。それに、お店に来てくれる若い人とつながって得た情報は、ファッション系の仕事に生かせることも多いので助かってもいます。

山口 確かに若い人とつながれる場があってリアルな声が聞けると、雑誌作りの参考にもなりますよね。

木村 皆さん、仕事とプライベートのバランスはどうしていますか? プライベートの時間をどのように捻出し、どんなことをして過ごしているのかも気になります。

Aさん 僕の会社は少し変わっていて、自分の仕事をまっとうしていれば、会社に一切行かなくてもいいんです。仕事の合間の時間が自由に使えるので、昼間に1時間ほどランニングすることが多いです。趣味がサッカーなので、体力作りにはランニングが欠かせなくて。それからなるべくフラットに働きたいと思っているので、平日遅くまで働かず、終わらなかった分は土日を使って仕事をします。

Cさん 私の場合は、就業時間が割と明確なので、出社前に早起きして、ジムに行ったり、カフェ巡りをする時間を作っています。それから旅行が趣味なので、アメリカに赴任してからは、月に1〜2回は飛行機に乗って旅をしていますよ。週末を利用することもあるし、有給もフルで活用しています。

Bさん 僕は完全に線引きできてないです。プライベートで行く予定だったフェスに取材で行くことになって、趣味としては楽しめなくなっちゃうなんてこともちらほら。おもちゃ屋も趣味が高じて結局仕事にしてしまったし(笑)。夜、お酒を飲む時間だけが、唯一のプライベートな時間かな。 

将来どうなりたいか、ビジョンってあるの?

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山口 現状には満足されている皆さんですが、今後どのように働きたいか、プランはありますか?

Aさん ありません。最初に言ったとおり、僕はあまり先のことを考えられないタイプなんです(笑)。だから今後1年のプランだったり、今ある仕事をどうしたいっていうのはあるけれど、どう働いていくかは考えたことがないんです。これからもその都度、考えていこうと思っています。

Bさん 僕はフリーランスではあるものの、同業で成功している諸先輩方がたくさんいるので、まずは肩を並べられるように頑張っていきたいという気持ちはあります。あとはおもちゃ屋もしっかり軌道に乗せたいですね。柱が2本できると安心かなと。

Cさん 私はこのままいくと、あと1〜2年したら日本へ戻ることになるのですが、そのとき置かれている状況次第でどうするか考えようと思っています。このまま独身だったら、特に守るべきものがないので、世界中を旅してみたいと本気で考えています。もし結婚していたり婚約者がいたら、やはり働くことを最優先するので、日本に戻って仕事を続けるかもしれません。

山口 なるほど。僕は編集者としてまだ経験もスキルも足りていないと思うので、皆さんのように将来について腰を据えて考えられるほどの余裕がないのが正直なところです。今は大きなテーマを任せてもらえるようになりたいと思い、毎日の仕事の精度とスピードを上げることに意識を集中しています。

Bさん それだけ考えられていたら十分じゃないですか。

山口 ありがとうございます!

木村 AさんとBさんはご結婚されているそうですが、パートナーとの時間はきちんと作れていますか?

Aさん 妻も僕と同じ職種で、リモートワークが多いこともあり、二人とも家で過ごす時間が多いので、特別なことはしていません。ちなみに妻は僕と違って、将来のことを色々考えているタイプなので、完全に引っ張られています(笑)。

Bさん なるべく二人の時間を作りたいと思っても、仕事をする時間も曜日も不確定なのでできないことのほうが多いのが実情です。でもそれを理解してくれてサポートもしてくれているので、すごく助かっています。

仕事に求める絶対条件とは?

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木村 皆さんのお話を聞いて、働きながら築き上げてきた独自のスタイルがあると感じました。座談会をしたことで改めて、自分が仕事をする上で譲れない条件など見えてきましたか?

Aさん 今まで譲れない条件なんてないと思っていたのですが、この対談中に、3つの条件を見つけました。まず絶対に一定水準より上の賃金をキープすること、次に過酷すぎない労働時間のなかで働けること、そして最後は首都圏勤務。逆にこの3つが守られていれば、職種は問わずに働くことができると思いました。

Cさん 私は自分が納得できる仕事かどうかです。つまらないけど給料が高い仕事でもその逆でも、そこに価値を見出すことができればやります。

Bさん 僕はまず楽しそうかどうかってところで判断しますね。それからこの人と一緒に仕事をしたら成長できるか、この仕事から次に何か広がるかってことも考えます。

山口 僕もBさんと似ていて、自分の興味のある領域であることが絶対だなと思います。

木村 それぞれの働き方・考え方は、どれも素敵で興味深いものばかりでした。ありがとうございました。

イラスト/喜田なつみ・MIDORI KOMATS(木村と山口の似顔絵) 取材・文/菊池美里 企画・構成/木村美紀(yoi)・山口 朗(MEN'S NON-NO)