仕事のプレゼンで緊張しているときなどに、手やワキから急に汗が吹き出てくる。1日はいていたブーツを脱いだら、想像以上にニオイが強かった——などなど、冬でも汗やニオイが気になった経験がある人は多いはず。実は、汗のニオイ悩みは冬のほうが根深いんだとか。ますます寒くなるこれからの時期に知っておきたい汗&ニオイ対策を、汗の悩みを多く診てきた皮膚科医の下方征先生に伺いいました。
皮膚科医
「渋谷スクランブル皮膚科」院長。名古屋市立大学医学部卒業。東京医科大学病院皮膚科勤務を経て、2021年に「渋谷スクランブル皮膚科」を開業。複数の皮膚科専門医による総合的な皮膚の診療を行う。汗の悩みに関する治療経験多数。日本皮膚科学会認定皮膚科専門医。労働衛生コンサルタント。
年齢が上がるとますます気になる!? 女性の汗とニオイ問題
人気制汗剤ブランド『デオナチュレ』を扱う『シービック』が、「働く女性の年齢による汗とニオイの変化」について25歳から39歳の女性にアンケート*を実施。そのなかで、「20代前半に比べて、自身の汗や体臭が気になりますか?」という質問に対して、「とても気になる」「気になる」と回答した女性の合計が60.8%という結果に。また、「20代前半に比べて汗やニオイケアを入念に行うようになった」と回答した人も62.2%に上りました。若い人ほど代謝もよく、汗をかきやすいイメージですが、年齢を重ねてからのほうが女性の汗やニオイにまつわる悩みが顕在化する傾向にあるようです。
*【制汗剤に関するアンケート】シービック調べ 調査方法:インターネット調査 調査対象:25歳から39歳の女性572人 調査時期:2022年9月
また「緊張やストレスを感じるとワキ・足・手などに汗をかきやすいと感じますか?」という質問には、73.3%が「あてはまる」と回答。同じく緊張を覚えたときに「自分自身の体のニオイを敏感に、または強く感じることがありますか?」という問いでは、約6割の女性が「ある」と答えています。さらに3人に一人が、突然大量の汗が出てしまう“ドバッと汗”を経験していることも判明。こうした、いわゆる“緊張汗”は、ワキや背中、胸の谷間、アンダーバストにかきやすいといいます。
冬の汗悩みには女性特有の理由がある
これらの調査結果から、女性は年齢を重ねてからも汗やニオイの悩みを抱えやすいということがわかります。皮膚科医の下方先生によると、これには以下のような女性特有の理由があるといいます。
■女性ホルモンのバランスが崩れると、「ドバッと汗」が起きやすくなる
女性が汗をかく理由には、女性ホルモンが密接にかかわっています。更年期の症状として「ホットフラッシュ」は有名ですが、20~30代であっても女性ホルモンの乱れで汗に悩むケースも少なくありません。通常、交感神経と副交感神経がバランスよく作用することで自律神経が安定し、汗量も落ち着きます。女性の場合は、思春期を過ぎたあたりで女性ホルモンが分泌されるようになり自律神経が安定するのですが、ストレスや緊張状態にさらされることでバランスが崩れてしまい、急な発汗や大量の汗に悩まされるケースも多く報告されています。
■運動で流す汗より「緊張汗」のほうがニオイが出やすい
夏の暑さや運動による体温調節のための発汗は「温熱性発汗」といい、水分が多くサラサラした汗。ストレスを感じたときの汗は「精神性発汗」と分類され、水分以外のアンモニアやミネラルなどの成分が多く含まれていて、ニオイの原因になりやすいことがわかっています。
■汗の全体量が減る冬は、ニオイ成分を強く感じやすくなる
そもそも汗腺は血液をくみ取って汗を作っています。このとき汗腺の機能が高いと、血液に含まれるアンモニアやミネラルを血管に再吸収させることができるので、サラサラした汗になります。しかし汗腺は使わないと機能が低下するため、暑くて自然と汗をかく夏より、寒い冬のほうが、ニオイの強い汗が出てきやすいのです。また、夏と比べると汗をかく機会が少ない冬は、皮膚の常在菌が作り出すニオイのもとが汗で洗い流されず、皮膚や毛穴の中にとどまりやすいということも、体臭を強める一因と考えられます。
■足の汗が、冬の足冷えを引き起こすこともある
防寒対策をしていても足先が冷たいというのは、女性の冬のお悩みのひとつ。足冷えの原因はさまざまですが、冬の足汗が原因となることも。冬にブーツや厚手の靴下を長時間はきつづけると、履き物の中で汗がこもり、その状態で放置されることで汗が冷え、足冷えにつながることがあります。足の汗が気になる場合は、冬でも足用の制汗剤でコントロールするといいでしょう。
冬こそ実践すべきボディ&衣類のニオイ対策!
冬の汗だけでなく、洗濯物が乾きにくい気候が続いたり、自分では頻繁に洗いにくいコートやブーツなどの着用機会が増える時期は、何かとニオイが気になりやすいとき。そこで、寒い時期に気をつけたいニオイ対策をご紹介します。
皮膚に付着しているニオイのもとは、お風呂で汗をしっかり洗い流すことでケアできます。ニオイケアの効果が持続する時間の目安は、汗を洗い落としてから6〜10時間といわれています。汗をエサとしてニオイのもととなる菌が増殖していくので、夜にお風呂に入ったら、出勤前の朝にもシャワーを浴びることで日中の体のニオイが気になりにくくなります。ワキや首回りなど、ベタッとした汗が出やすい箇所は、綿などの柔らかいタオルや石鹸で洗っておくといいでしょう。
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入浴時にデオドラント効果のあるボディソープで洗うだけでなく、冬も外出前に制汗剤を塗っておくと安心。汗を抑え、抗菌効果や消臭作用もあるミョウバン入りのものだと、朝シャワーですっきりした状態が長続きします。
寒がりな人が冬に好んで着る化学繊維のインナーは、汗の油分を吸着しやすいため、しっかり洗ったつもりでもあとからニオイが出てきてしまうことが…。約40℃のお湯で石鹸を使って手洗いをすることで、付着した皮脂をオフできます。ニオイが気になりやすい人は、綿のインナーのほうが汗の油分を洗い落としやすく、おすすめです。
汗腺が集中している足は、1日歩いただけでコップ1杯分もの汗をかくこともあります。さらに密閉性の高いブーツや靴をはく冬は、雑菌が増殖しやすく、ニオイも強くなりやすいので要注意。はいた靴はすぐにしまわず、ベランダなどの風通しのよい場所で干したり、ドライヤーで乾かしたりして、湿気を飛ばすとニオイが残りにくくなります。
汗をかく機会が減る冬のほうが、より汗とニオイが気になりやすいという意外な事実にびっくり! ニオイが気になる人は、冬も制汗剤を使用したり、こまめに衣類の消臭をするなどのニオイケアを試してみては。また、運動やサウナなどで気持ちよく汗を流す習慣も、ニオイ予防につながります。汗や体臭に悩まされすぎず、この冬を気持ちよく過ごしていきたいですね。
構成・文/政年美代子 Illustration by Sky_melody / iStock / Getty Images Plus 資料提供/シービック