靴下やタイツをはくときに気になる、ガサガサ、ゴワゴワしたかかと。十分なケアをせず放置していると、痛みを伴うひび割れを起こすなど重症化することも。そして、専門家によると、冬はかかと荒れの重症化リスクが高まる時期。かかと荒れを引き起こす原因を知り、正しいセルフケアで、きれいで健康な足を保つ方法をご紹介します。
冬のかかと荒れは重症化リスクが高まる!
立っているときや歩行時に体重の約70%もの圧力がかかり、日々重圧に耐えているかかとの皮膚。この圧力によってガサガサしたり硬くなったりすると思いがちですが、原因はそれだけではありません。
かかと荒れを引き起こす3大要素は、①圧力 ②乾燥 ③血行不良。足の裏には皮脂腺がないうえ、冬は汗量が減るため乾燥がさらに顕著になります。また、かかとは体の末端であるため血流が悪くなりやすい部位でもあります。加えて、冬は特に室内外の寒暖差や、屋内でも廊下の冷たいフローリングと暖房の効いた部屋の温度差で血管の収縮が起き、自律神経の乱れからくる血行不良によって、皮膚のターンオーバーが遅くなり、角質が厚く硬くなってしまいます。角質が厚くなったかかとは保湿成分がいきわたりにくくなるため、クリームを塗っても治りにくい状態に。
これらの原因が重なる冬は、まさに「かかと荒れ」の要注意シーズン。厳冬といわれる今年は、温度差による乾燥が起こりやすいので、例年よりもさらに注意が必要です。皮膚科医の今井亜希子先生に、かかと荒れが招くさまざまな問題と、適切な予防策について教えてもらいました。
ひかり在宅クリニック 皮膚科医
医療法人光樹会ひかり在宅クリニック皮膚科医師、医学博士。一般社団法人足育研究会理事。訪問診療を行うほか、神奈川県内の総合病院で足・靴の専門外来を担当。足爪の変化・皮膚の角化と運動機能との関係を検証する臨床研究活動も行なっている。
今井先生によると、実は冬の寒暖差と同じように、夏も外が暑く室内が涼しいことで温度差によるストレスが足裏にかかっているんだそう。夏は素足でサンダルをはくことも多く、夏の時点ですでにかかと荒れを起こしていた人も多いのです。
「夏のかかと荒れを放置したまま冬を迎えると、さらに重症化する可能性が高まります。痛みを感じるほどかかと荒れが重症化すると、歩き方のバランスが崩れて生活に支障をきたすことに。さらにそれが続くと、ひざ痛や腰痛、肩こりなど全身にも影響することがあるので、早めのケアが大切です」(今井先生)
上の画像は、かかとの側面がひび割れて痛みがある方の、MRI断層診断による皮膚の画像。「皮膚表面のひび割れは0.7㎜の深さで、これは角質層を超えている深さです。ここまでの傷が元に戻るには、何もしないと通常は約2週間はかかるでしょう。しかし、ほかの部位と違ってかかとは皮膚にまったく負荷をかけずに生活することは難しいので、実際はそれ以上かかります。つまり、かかとはケアしないとなかなか荒れの改善が難しい部位といえます」と今井先生。
多少のガサガサはしょうがない…とケアを怠っていると、ひび割れが改善しないだけでなく、体のほかの部位にまで影響を及ぼす可能性が。すでにかかとのガサガサを自覚している人は、ひび割れが深刻化する前に、次に紹介する適切なセルフケア方法を試してみて!
フットセルフィーで客観的にかかとの状態をチェック!
かかと荒れ予防の対策のひとつとして、ユースキン製薬が提案するのが「フットセルフィー」。スマホのカメラで自分のかかとを撮影し、画像を拡大して状態をチェックするという方法です。今井先生も「かかとは自分では見づらいため、携帯で写真を撮って『気づく→ケア→チェック』の流れを習慣にすることが、重症化予防の第一歩」と話します。
「かかとの写真を見る際のポイントは、表面のかさつきだけでなく、硬い部分(黄色っぽく見える)やひび割れがあるかどうか。さらに、かかとのふちの色も確認します。血色のいい肌色であればOKですが、黄みを帯びていたら要注意」(今井先生)
症状別のクリーム選び、塗る量とタイミングで保湿効果をアップ!
かかと荒れには保湿が大切ですが、保湿クリームの選び方や塗り方でその効果が変わってきます。特にクリームはかかと荒れの症状によって必要な成分が異なるので、配合成分を確認して選ぶことが重要です。
保湿クリームには大きく分けて、ビタミン配合タイプと尿素配合タイプの2種類があります。保湿クリームなどを多く取り扱う「ユースキン製薬」がまとめた、配合成分の違いによる働きやおすすめの部位などの表(↓)を参考に、クリーム選びや使い方を見直してみましょう。
今井先生によると、「ビタミンEが配合されたものは保湿効果にプラスして血行を促進する作用もあるので、かかと荒れと同時に足の冷えが気になる人におすすめ。尿素配合のクリームは、角質を柔らかくするので角質が厚くゴワゴワ感が気になるかかと荒れにいいですが、深いひび割れには刺激になることがあるので、かかとの状態に注意を払うことが必要」とのこと。
また、保湿効果を得るには、クリームを塗るタイミングも重要! 「入浴後、角質層に水分を含んでいるときに塗るのが有効です。入浴後から就寝前までに塗るといいでしょう。塗る量は、人差し指の指先から第一関節までの量が片足分。想像より多いかもしれませんが、かかとの保湿にはこのくらい必要です」(今井先生)
今井先生のアドバイスでは、たっぷりのクリームを足にのばしたら、かかとを手のひらで包むようにして温め、マッサージしながら塗るといいとのこと。
【かかと荒れの重症化を予防するフットマッサージ】
①クリームを人差し指の第一関節まで指に取ります(片足分)
②クリームを手のひらで伸ばし、両手を使って足裏、足の甲、足指に広げます
③足指の付け根から指先、爪のまわりを丁寧にマッサージ
④足の側面、かかとは特に乾燥するので、しっかり塗りましょう
⑤両足に塗り終わったら、最後にかかと用の靴下をはくのも効果的
フットマッサージの方法はユースキン製薬の公式YouTube動画でも詳しく解説されているので、動画を見ながらセルフケアをしてみましょう。そして、マッサージをした翌朝にフットセルフィーを撮って変化をチェックすることも忘れずに!
ユースキン製薬が行なったモニター試験では、かかと荒れを自覚する30代から50代の17名を対象に、フットセルフィーとビタミン配合クリームを使用したフットマッサージを行なってもらったところ、17名全員が3日で改善が見られるという結果に。「フットセルフィーはフットケアのきっかけになるだけでなく、正しいケアをして、見るたびに症状が改善されることで、ケアを続けるモチベーションアップにもつながるのでは」と今井先生。
なかなか目が届かず、ケアをする意識が薄れがちですが、かかとは全身を支える大事なパーツ。正しい知識を持ち、日々いたわって、足元から健康を保っていきましょう!
構成・文/政年美代子 Photos by Catherine Falls Commercial / Moment, RUNSTUDIO / DigitalVision, fizkes / iStock / Getty Images Plus 資料提供/ユースキン製薬