コロナ禍以降、年々拡大する香水市場に合わせて、フレグランスの身にまとい方、選び方が多彩になっている現在。特に注目を集めるのが運動するときのための香水、“ワークアウト・フレグランス”。体を動かす喜びを感じられるだけでなく、自分が心地いい香りをまとうことでさらにワークアウトへのモチベーションがアップします。今回は香りのスペシャリスト、フレグランス専門店「LE SILLAGE」を手がける米倉 新平さんが“ワークアウト・フレグランス”の選び方や魅力について語ります。

ワークアウト フレグランス 香水 MIYASHINMA CIRO エレクティムス 1

教えていただいたのは……
米倉 新平

フレグランス専門店「ル シヤージュ」代表

米倉 新平

「香りを経験し、嗅覚で楽しむ場所」をコンセプトとした京都・東山のフレグランス専門店の代表。世界各地のフレグランスへの造詣が深く、日本では取り扱いがまだない、レアでニッチなプロダクトを展開する。初心者から愛好家の方まで香りに興味があるすべての方に、ゆっくりと香りを試せる空間で最高の香りとの出合いを提供する。ちなみに米倉さんのワークアウトフレグランスは「MOTHandRABBIT」の『SINGLE MAN』、「エルメス」の『オー ドゥ ルバーブ エカルラット』。ジョギングをするときに身につけることが多い。

運動するときのための香水って? “ワークアウト・フレグランス”のススメ

フレグランスには、「寝香水」のように気持ちをリラックスさせる効果を期待するものもあれば、今回ご提案する“ワークアウト・フレグランス”のように気分をグッと盛り上げてくれるものも多くあります。
一瞬、「運動をする時のための香水」と聞くと、意外に思う方もいるかもしれません。しかし、なかなか習慣になりにくいジム通いや筋トレも、お気に入りのウェアをまとったり、アップテンポな音楽を聴くとモチベーションが上がったりしますよね。香水も同じです。分をエナジャイズするためのツールのひとつとして考えるといいと思いますよ。何より体を動かすたびにふんわりと好きな香りの気配を感じられるのもいいんですよね。

今回はワークアウトの種類別、運動時に醸し出したいたたずまいやムードに合わせてセレクトしました。

ひとつ目は「“静”の運動時のための香り」。ヨガやピラティス、自分と静かに向き合いながら取り組む運動に合わせた香り。一人で何か考えたり、集中する時には、やはりクリアに澄んだ軽やかな調べがおすすめです。甘すぎない穏やかなウッディなどがぴったりだと思います。

ふたつ目は「“動”の運動時のための香り」。こちらは激しく自分を追い込むボクシングやランニング、筋トレなどアグレッシブなシーンをイメージしています。フレッシュだけど、決して軽くない香調がおすすめ。ワンプッシュで気合いのスイッチが入る、ムードチェンジャー的な立ち位置のノートがいいと思います。少しタフなアロマティック、ウッディ、スパイシー、シトラス系が特にぴったり。

三つ目は「汗をかいていても、華やかな印象でいるための香り」。汗をかいていても、エレガントなたたずまいでいられるフレグランスも皆さん気になるんじゃないかと思います。ポジティブで品のいいムードを醸し出すのにおすすめなのが、ローズ。なかでもつけ心地が軽やかで、よりナチュラルなものをまとうのが素敵ですよ。

香りのスペシャリスト、米倉さんが選ぶワークアウト・フレグランス3選

“ワークアウト・フレグランス”の魅力を語った米倉さんが、運動のシチュエーションに合わせて3つの香りを提案。運動するモチベーションアップになることはもちろん、日常生活でもまとえる香りをチェックして。

ワークアウト フレグランス 香水 MIYASHINMA CIRO エレクティムス 2

(左)Miya Shinma Paris MATSUBA(100ml)¥27500・(中)ELECTIMUSS IMPERIUM(100ml)¥35200/ともにル シヤージュ (右)CIRO Floveris(100ml) ¥33000/ブルジョン(CIRO)

ピラティスやヨガなど、“静”の運動の時に。自分自身と粛々と向き合うときに優しく寄り添う香り

(左)「Miya Shinma Paris(ミヤ シンマ パリ)」の 『MATSUBA(マツバ)』

フランスをベースに活躍する、日本人調香師・新間 美也氏が手がけるフレグランスブランド「Miya Shinma Paris」。世界各地で収集された天然香料を用いて構成された、リュクスな香りに定評が。なかでも、世界のアート界に影響を与えた日本の浮世絵作品にオマージュを捧げた「ロー・ド・ミヤシンマ」はブランドを象徴するシグネチャーラインのひとつ。

この「MATSUBA」と名付けられた香りはキリリと爽やかなミントにまろやかなグリーンノート、みずみずしいルバーブなどを組み合わせ、フレッシュなアロマティックノートに仕上げた一本。

「まさに静かな湖畔、そして澄みわたる森の息吹を感じさせる軽やかで清らかな香りです。ほんのり仕込んだミントがすーっと鼻を抜けるような心地に癒されますよ。まるで森林の中を走っているかのような気分になれるんです。一人静かにピラティスやヨガ、ランニングに集中したいときにぴったりな香りだと思います(米倉さん)」。

ボクシングや筋トレなど、追い込みたい“動”の運動時に。エネルギッシュで力強い香りがモチベーションをアップ

(中)「ELECTIMUSS(エレクティムス)」の『IMPERIUM(インペリウム)』

香水を愛し、常に最高のものを追求していた古代ローマ文化にリスペクトを捧げた重厚感のあるラグジュアリブランド「ELECTIMUSS」。重厚感のあるボトルに詰まった透き通ったジュースが印象的な『IMPERIUM』。

古代世界の最高権力を意味する「IMPERIUM」と名付けられた香りには、ブレないスタイルやエレガントさを感じます。軽やかなウッディベースにスパイシーなベルガモットやコリアンダーのエッセンスをのせ、タフながらも温もりあふれる香り立ち。ワンプッシュで気分を高揚させることができます。

「ベースに甘やかな花の気配を感じつつも、アグレッシブでタフ。ほのかに野生みを感じるアロマティックシトラスです。運動をする前にひと吹きすれば、モチベーションを高め、集中して取り組めると思いますよ」

あらゆる運動シーンにうってつけ。汗をかいても華やかなたたずまいを演出できる格調高い香り

(右)「CIRO(シロ)」の『FLOVERIS(フラワリーズ)』

1920年代にニューヨークで生まれ、2018年にファウンダーであるレイナー・ディエシェによってモダンに生まれ変わったフレグランスブランド「CIRO」。『FLOVERIS』はその内の一本。香りのキーとなるのは、トルコローズやピオニー、スミレ、ミモザをはじめとする色鮮やかな花々。

ベルガモットとマンダリンオレンジを組み合わせ、透明感のあるシトラスへ昇華し、よりフレッシュな印象に。ベースにはリッチなウッドとムスクを忍ばせ、なめらかな香り立ちに仕上げています。

「フローラル、とひと言で言ってもその感じ方はさまざま。ずっしり甘い香りも多くありますが、こちらは“ザ・香水感”も控えめなナチュラルさがも魅力。

きれいに澄んだ爽やかなトルコローズがポイントです。最初から最後まですーっと透き通ったクリアなフローラル。品のいい爽やかなエレガンスを演出しつつも、“
どちらのワークアウトのときにもうってつけですよ」

問い合わせ先
・ブルジョン info@bourgeon.jp

・ル シヤージュ lesillage-kyoto.shop




撮影/馬場 信子(SIGNO) ヘア/HIROMI メイク/奥野 陽子 スタイリスト/嶋崎 由依 取材・構成・文/堀江 ともみ(yoi)
撮影協力/岡島 みのり