今日はごろごろしながら部屋で配信ドラマが観たい!そんなときは日本ドラマの過去作を観るのはいかが? 今回は鋭い分析がSNSで話題のドラマウォッチャー、編集者の綿貫大介さんがyoiに初登場! 綿貫さんのおすすめは男女のバディを描いた作品。今こそ観たい、3作品の魅力を語っていただきます。

綿貫大介
綿貫大介

編集者、コンテンツディレクター、ライター、テレビっ子。エンタメを中心としたカルチャー分野で編集・執筆をしているほか、コンテンツ制作や企業ブランディングも行う。『ボクたちのドラマシリーズ』などZINEも精力的に制作。

「石子と羽男-そんなコトで訴えます?-」(2022年放送)

コンプレックスから生まれる物語が、私たちに希望を与える

ドラマ 綿貫大介 石子と羽男-そんなコトで訴えます?-

STORY
有村架純演じる東大卒のパラリーガル「石子」こと石田硝子と、中村倫也演じる高卒の弁護士・羽根岡佳男はコンビを組み、お互いのコンプレックスに向き合い支え合っていく姿を描く。

綿貫さん:「虎に翼」で法律・憲法の大切さを学んだみなさん、覚えていますか? 法学部時代「法は悪い人を殴る武器」と言った山田よね(土居志央梨)に対し、主人公の猪爪寅子(伊藤沙莉)は当初「法は弱い人を守るもの、楯とか傘とか温かい毛布とか、そういうものだと思う」と言っていたことを。2022年に、「法は真面目に生きる人々の暮らしを守る傘」であるとすでに伝えていたドラマが「石子と羽男-そんなコトで訴えます?-」です。

東大卒のパラリーガル・石田硝子(有村架純)と、見たものを写真の様に記憶する「フォトグラフィックメモリー」の持ち主で、司法試験に一発合格している高卒の弁護士・羽根岡佳男(中村倫也)のコンビで、通称・石子と羽男。

まず、凸凹コンビという特性上、足並みが揃わないふたりのやり取りがおもしろい。テンポがよくて軽快なふたりの会話は何度聞いても耳に心地よく、恋愛ドラマのフィルターで観てしまうと、このふたりはじつに“お似合い”だと思ってしまうけど、この関係性を安易に恋愛に接続させないつくりも秀逸だと思う。

次第に凸と凹が噛み合い出し、仕事の相棒として息がピッタリになっていく過程も観ていて楽しいんです。石子は羽男のふらつきがちなメンタルを冷静にうまくコントロールしているし、羽男は石子の頑なな部分をそっとほぐしてあげている。互いに必要な存在です。

そして本作の妙は、ここにもうひとりが加わることで、関係性がより豊かになっていること。それは法律事務所のアルバイト・大庭蒼生(赤楚衛二)。大庭が石子と恋人関係になることで、3人の友情と愛情が入り交じりながら形成された関係性がどう変化していくかにも注目です。シーズン2の制作はまだですか? 絶対やってほしい。

「石子と羽男-そんなコトで訴えます?-」
出演者:有村架純、中村倫也、赤楚衛二、さだまさし ほか
Netflix、U-NEXTほか各種動画配信サービスにて配信中

「SPEC〜警視庁公安部公安第五課 未詳事件特別対策係事件簿〜」(2010年放送)

恋愛のにおいすらさせない二人の強い絆

ドラマ 綿貫大介 SPEC〜警視庁公安部公安第五課 未詳事件特別対策係事件簿〜

STORY
捜査一課が手に負えない超能力などを使った特殊な事件を捜査するために警視庁公安部が設立した未詳事件特別対策係、通称“未詳(ミショウ)”。IQ201の天才であり、戸田恵梨香演じる変人の当麻紗綾と、加瀬亮演じる警視庁特殊部隊 出身で叩き上げの瀬文焚流のふたりの捜査官が、特殊能力(SPEC)を持った犯人と対決するストーリー。スペシャルドラマ化ののち、映画化もされている。

綿貫さん:「ケイゾク」「TRICK」「SPEC〜警視庁公安部公安第五課 未詳事件特別対策係事件簿〜」……。堤幸彦演出の奇妙な刑事・ミステリードラマはどれもおもしろく、男女コンビが最高すぎるんですが、今回はなかでも「SPEC」を推します。

ぶっとんだ戸田恵梨香の演技もすごいし、ドラマで加瀬亮が観られることもすごい(2025年前期の朝ドラ「あんぱん」でも主人公の父親役を演じると発表されました、ありがたいです)。その事実だけで最初から興奮しっぱなしなのですが、このコンビがよすぎる。

刑事モノのバディは互いに命を預けるほどの信頼関係で成り立っていて、それは血縁や利害を超えた強い結びつきなわけで、そもそもそれだけで尊いものですが、それを男女で、ですよ。

普通だと恐怖を感じる状況でのドキドキ感を、恋愛のドキドキと錯覚する、いわゆる“吊り橋効果”で恋愛に回収されそうだけど、このふたり、そうなりません。

当麻(戸田恵梨香)が変人であること、瀬文(加瀬亮)が他者に興味がないさまなどからも、そもそも恋愛の匂いを発しない作りを最初から意識しているつくりになっています。

当麻の天才的推理と、肉体派の瀬文のコンビで次々と立ち向かっていくという戦い方もバランスがよく、「ふたりだからこそ」という関係性がちゃんとあるところもポイントです。

あと、やっぱり欠かせないのは餃子。「焼き5茹で5」をにんにく増量で一緒に食べれる仲、最高かよ。まさに「高まるぅ〜!」です。

「SPEC〜警視庁公安部公安第五課 未詳事件特別対策係事件簿〜」
出演者:戸田恵梨香、加瀬亮 ほか
Netflix、Huluほか各種動画配信サービスにて配信中

「RoOT/ルート」(2024年放送)

ふたりの絶妙な距離感と予測不能な本格ミステリーに夢中

ドラマ 綿貫大介 『RoOT』

STORY
河合優実演じる小さな探偵事務所で働く、愛嬌ゼロの調査員・玲奈と、坂東龍汰演じる凶運の持ち主ながらポジティブな新人・佐藤が、とあるタクシー運転手の素行調査から大きな事件へと巻き込まれていくミステリー。

綿貫さん:「鈍牛倶楽部」という芸能事務所の名前、覚えておいてください。所属俳優、みんな最高なんです。今作でW主演している河合優実と坂東龍汰も、鈍牛倶楽部。ふたりとも昨年の話題作に出演していたから、演技の素晴らしさは改めて説明不要ですよね。

そのふたりが深夜ドラマをやっていたこと、実は気づいていなかった人が多いと思います。なぜなら、放送当時TVerの後追い配信をしておらず、語る人が少なかったから。でも今は動画配信サービスにあるので、ぜひ観てください。

「RoOT/ルート」は「オブ オッドタクシー」シリーズの派生作品。漫画「RoOT / ルート オブ オッドタクシー」で描かれている若手探偵コンビの奮闘劇を基にしたドラマオリジナルストーリーになっています。映像も映画のような質感で、世界観にのめり込みやすい作品です。

“シゴデキ”の河合優実と、空回りしながらそれにくらいつく坂東龍汰ですよ? 絶対面白いでしょう。このふたりの関係性も最高。上司と部下という、上下の線をちゃんと引いた関係でありつつも、年が近いからか会話のテンポが軽く、なんとなく話の馬も合う。

距離が近いのか遠いのかわからない絶妙な距離感って、異性の同僚との関係としては結構理想的かも。恋愛と距離を置いた距離感がちょうどいいんです。(しかも上司が河合優実、というのもいい)。

実は普段から仲がいいふたり。撮影はふたりともカメラが回っていないときの会話から“本番いきます”となるまでがシームレスで、するっと役に入っていったそう。そのあたりも意識して視聴すると、また面白いかも。

「RoOT/ルート」
出演者:河合優実、坂東龍汰ほか
Netflix、Amazon prime videoほか各種動画配信サービスにて配信中

イラスト/よしいちひろ 文/綿貫大介 構成/高田真莉絵、渋谷香菜子