月経(生理)のある女性の心や体の状態は、約1カ月の周期で変動しています。この周期をつくりだしているのは、おもに「エストロゲン(卵胞ホルモン)」と「プロゲステロン(黄体ホルモン)」という2つの女性ホルモン

これらの女性ホルモンの変動がもたらす月経前のさまざまな身体的・精神的症状がPMS(月経前症候群)です。大塚製薬のアンケート調査*1では、実に7割近くの女性がなんらかのPMSの症状を経験していると答えています。

女性ホルモンは、初経から閉経まで、月経のあるあいだは絶えず女性の心と体に大きな影響を及ぼす重要な存在です。妊娠や出産といった生殖にかかわるだけではなく、体のさまざまな臓器に働きかけて多くの役割を果たしています。女性ホルモンについて知ることは、PMS対策の第一歩。連載【知ることから始めよう! PMSのホント】第2回は、知っているようで知らなかった、そんな女性ホルモンの“知られざる真実” について!

*1  調査期間:2021年6月29日から7月1日 調査方法:インターネットを用いたアンケート調査 調査対象:全国の30~44歳の日本人女性1000人 

第1回 自分の症状が「PMS」かどうかを見極めるポイントは?

PMSの症状に悩む女性のイメージイラスト

女性ホルモンは心と体にさまざまな影響を及ぼす

排卵や月経など、女性特有の約1カ月周期の心身の変化をつくり出している女性ホルモン「エストロゲン」と「プロゲステロン」について、ここで基礎知識クイズ! この2つの女性ホルモンは、体のどこから分泌されているでしょう?

クイズ「女性ホルモンはどこから分泌される?」

A. 正解は①!

正しい答えがわかりましたか?
女性ホルモンとは、脳からの指令を受けて卵巣から分泌される「エストロゲン(卵胞ホルモン)」と「プロゲステロン(黄体ホルモン)」の2つ。月経のある女性の心と体の状態は、これらのホルモンの影響を受けて、約1カ月の周期(=月経周期)で変動しています。

エストロゲンとプロゲステロンはそれぞれ分泌のピークがあり、両方の分泌が下がりきったら月経がくるのが正常な周期。排卵前の約2週間を「卵胞期」、排卵後の約2 週間を「黄体期」と呼びます。

エストロゲンには代謝アップや精神状態の安定化、肌のうるおいやツヤを守るなどのうれしい作用が多いので、エストロゲンが増えていく月経後の卵胞期は心身ともに好調な時期。一方、エストロゲンが減ってプロゲステロンが増える黄体期は、妊娠を維持しやすい状態にするため体に栄養や水分をたくわえようとするので、太りやすく、またむくみやすくなります。黄体期は、そのほかにもさまざまな不調が心身に出やすく、このうち特に、月経の3~10日前に現れる症状がPMSです。

女性ホルモンの働きやPMSの諸症状について知りたい人は、こちらもチェック!

大塚製薬「PMSラボ」
女性ホルモンの変動と月経周期のグラフ

(周産期医学; 41増刊号: 2-3, 2011改変)

女性の一生の体の変化に大きく作用する「エストロゲン」

2つの女性ホルモンのうち、エストロゲンは、ライフステージごとの女性の体の状態に大きく影響を与えます。まず、思春期になるとエストロゲンの分泌が急激に増加して初経を迎えます。初経から2~3年は月経周期は安定しませんが、エストロゲン分泌は20代でピークになり、妊娠や出産に適した「性成熟期」になります。PMSが多く起りやすいのもこの時期といわれています。

その後、更年期になるとエストロゲンの分泌が急激に減少し、閉経を迎えます。ちなみに「更年期」は閉経の前後5年の期間を指し、日本人女性の閉経の平均年齢は50歳前後といわれており、45歳頃から更年期症状を感じる人が多いよう。エストロゲンは、生殖機能だけでなく、心血管系や脂質代謝、骨や皮膚の代謝、脳機能、自律神経系などにもかかわり、女性の体を健やかに保つ“守護神”とも呼ばれるホルモン。エストロゲンの分泌が急激に減る40代以降、全身の乾燥や自律神経の不調などの更年期症状が生じやすくなるのは、守り神であるエストロゲンの恩恵を受けられなくなるためなのです。

女性のライフサイクルとエストロゲンレベルの変化

ほてりやのぼせ、イライラ、疲労感、めまいや耳鳴りといった更年期不調はPMSの症状と似ています。40代以降で月経前以外の期間も症状が続くようなら、更年期症状の可能性が。PMSと更年期症状では治療法も異なるので、気になる場合は婦人科を受診してエストロゲンレベルを調べ、適切な治療を受けましょう。

妊娠を準備するためのホルモン「プロゲステロン」

もうひとつの女性ホルモン「プロゲステロン」は、いわば“妊娠を準備するためのホルモン”。排卵直後から分泌量が増え、基礎体温を上げたり、受精卵が着床しやすいように子宮内膜を安定させたり、乳腺を発達させたりします。妊娠が成立しないと、排卵の1週間後くらいからプロゲステロンの分泌は減りはじめ、さらに1週間ほどで、妊娠のために厚くなっていた子宮内膜がはがれ落ちます。これが「月経(生理)」です。

約1カ月の月経周期は、エストロゲンやプロゲステロンに加えて、下の図のように、脳下垂体から出る卵胞刺激ホルモン(FSH)や黄体形成ホルモン(LH)など、さまざまなホルモンが関連し合ってつくり出されています。

女性ホルモン分泌のしくみ

脳の視床下部から出る「性腺刺激ホルモン」が脳の下垂体を刺激し、下垂体からはFSHとLHが出て卵巣を刺激、その結果、エストロゲンやプロゲステロンが卵巣から分泌されます。また、エストロゲンやプロゲステロンが順調に分泌されると、その情報は脳へフィードバックされます。女性ホルモンをいつ、どのくらい分泌するかは、脳と卵巣が相互に連絡を取り合ってコントロールしているのです。

ところが、ストレスや無理なダイエット、睡眠不足などで心身に大きな負担がかかると、脳は「子孫を残すよりも命を守るのが優先」と判断して、女性ホルモンの分泌を止めてしまうことに…。心や体の調子が悪いときに月経周期が乱れたり、ひどい場合には月経が止まってしまったりするのはそのためです。

このように、2つの女性ホルモンは、月経周期をはじめ、女性の心と体全般に大きくかかわっています。エストロゲンやプロゲステロンの働きを正しく知ることで、PMSをはじめとする心身の不調にも上手に対処していきたいですね。

大塚製薬では、女性の健康に関するさまざまな調査を実施。PMSの悩みを持つ女性たちをサポートする活動を展開しています。PMSについての最新情報をもっと詳しく知るには、大塚製薬が提供する情報サイト「PMS(月経前症候群)ラボ」の以下のページや、「女性の健康推進プロジェクト」サイトもぜひチェックしてみて!

●女性ホルモンとPMS
●女性ホルモンの働き

構成・文/浅香淳子(yoi) イラスト/YUKORANGEL 資料提供/大塚製薬