実は、5人に1人が悩まされている水虫。水虫にかかっている人は、日本では約2,500万人と推定されています*1。もともと水虫は男性に多かったのですが、最近では男女差が少なくなっています。特にブーツ、パンプス、ストッキングなどを長時間はく人は注意が必要です。水虫の原因と、感染を防ぐためにやってはいけない6つのことを皮膚科専門医の堀内祐紀先生に聞きました。
*1 日本皮膚科学会雑誌2001;111:2101‐2112

堀内祐紀(ほりうちゆうき)先生

秋葉原スキンクリニック院長

堀内祐紀(ほりうちゆうき)先生

東京女子医科大学医学部医学科卒業。同年、東京女子医科大学病院皮膚科学教室入局。JR東京総合病院皮膚科、さいたま協同病院皮膚科ほかを経て、2007年現クリニック開設。日本皮膚科学会認定皮膚科専門医、日本医学脱毛学会理事。Allergan Medical Institute Japan Fuculty、一般社団法人美容皮膚エキスパートナース育成協会代表理事、一般社団法人Aesthetic Medical Academy理事。

水虫の約35%は同居家族からの感染!

水虫 感染源

増田:女性にも増えている水虫。水虫は、菌に感染して起こる病気なのですよね?
 
堀内先生水虫は、白癬(はくせん)菌という真菌(カビの仲間)によって起こる感染症です。皮膚に感染する真菌の多くが、白癬菌によるものです。
 
水虫は体のさまざまな部位で発症しますが、特に多いのが足水虫(足白癬)と爪水虫(爪白癬)です。足水虫を放置して、爪に白癬菌が感染することで爪水虫になることもあり、併発している患者さんも少なくありません。

白癬菌は足や足の爪だけでなく、手や頭など体のどこにでも感染します。部位によって、シラクモ(頭部白癬)、タムシ(体部白癬)、インキンタムシ(股部(こぶ)白癬)などのように異なった病名がついています。


白癬菌は、皮膚の角質層や毛髪の成分であるケラチンというタンパク質を栄養源として棲みついているため、栄養源がある部位なら、どこでも水虫(白癬)になります。
 
増田:足水虫かどうかは、かゆみの有無で見分けられますか?
 
堀内先生:かゆみの有無だけでは、水虫かどうかを見分けることは難しいです。足水虫の代表的な初期症状のひとつとしては、足の指の間が白くなる症状があります。進行すると、皮膚がふやけて剥け、皮膚に亀裂が入ったりすることもあります。その傷から細菌が入って腫れ、痛みを伴うこともあります。そこまで症状が悪化してから気づくことも少なくありません。

また、足裏に小さな水疱ができるパターンもあります。なかには、足裏の皮膚が厚く、硬く、ガサガサになる症状も。足水虫といってもさまざまな症状があるのです。

白癬菌は高温多湿の環境を好むため、気温が低くて空気が乾燥している間は、比較的水虫の症状は治まっています。しかし、5,6月くらいになり気候が暖かくなって汗をかく時期になると症状が現れやすくなります。
 
増田:感染源は、どこからが多いのですか?
 
堀内先生足水虫、爪水虫の患者さんの約35%は、同居家族に水虫の人がいるという調査*2があります。
*2 渡辺晋一ら「日本皮膚科学会雑誌」111(14),2101-2112, 2001年

白癬菌は24時間で感染します!

水虫の感染 24時間

増田:水虫の白癬菌に接触してから、どのくらいで感染してしまうのですか?
 
堀内先生足裏についた白癬菌はずっと居残っていて、最短で24時間(付着部に傷があれば12時間)で感染が成立する可能性があります。※3 つまり、足に白癬菌がついたまま多湿な状況で24時間以上放っておくと、白癬菌が増殖します。そして、まわりの皮膚から爪に入り込んで棲みつくことで、爪水虫を発症することがあるのです。

水虫はどうやってうつると思いますか? 実は、水虫の人と直接足を触れ合うことがなくてもうつってしまうのです。水虫の人が素足ではいたスリッパ、歩いた床や畳などに白癬菌がばらまかれているためです。
特にバスマットは、湿気を好む白癬菌が発育しやすいので、水虫の人が使用したバスマットから他の人に水虫がうつる可能性があります。
 
先ほどお話したように、足に付着した白癬菌が感染するには、通常24時間以上かかります。白癬菌が皮膚の角質層にまで入り込まない限り、菌は比較的簡単に洗い流せます。ですから、24時間以内に足の指の間までしっかり洗って、乾燥させることを心がければ、白癬菌の感染を防ぐことができるのです。ただし、足に傷があると12時間でも感染してしまいます。足を傷つけないために、ゴシゴシ洗いはやめましょう。
※3 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjmm1990/44/4/44_4_269/_pdf/-char/ja

水虫の感染を防ぐためにやってはいけない6つのこと

水虫の感染 バスマットの共有

堀内先生:環境中にいる白癬菌は、少なくとも月単位、場合によっては1年以上も生存している可能性があります。お風呂上がりなど足が濡れていれば、24時間ほどで感染が成立する可能性もあります。感染を防ぐためのポイントをまとめました。

NG1:床やマットをこまめに掃除しない

床に白癬菌がいて、裸足で歩くと感染してしまう可能性があります。ハイハイする赤ちゃんや小さな子どもにもうつります。床は毎日掃除機をかけ、マットはこまめな洗濯、天日干しをしましょう。

NG2:靴を毎日はき替えない

靴を乾燥させることが大切。抗菌のインソールを使用したり、乾燥させるためにも、なるべく同じ靴を毎日はかずに何足かをローテーションで履きましょう。

NG3:温泉やスポーツジムなどのあとに足を洗わない

裸足で利用する施設を利用したあとは、24時間以内に必ず足を洗いましょう。

NG4:バスマットをほかの人と共有する

足水虫や爪水虫のご家族がいる場合、バスマットやスリッパは共有せず、バスマットは毎日洗いましょう。

NG5:足や爪の傷を放置する

足の裏や足の爪はチェックがおろそかになりやすい場所です。毎日、お風呂で傷がないかどうかチェックしましょう。

NG6:趾の間や爪のまわりをしっかり洗わない

足は毎日洗いましょう。特に、趾の間、爪のまわりは石鹸で丁寧に洗います。

市販薬で水虫は治る? 薬の選び方

増田:市販の水虫の塗り薬(外用薬)がたくさん販売されていますが、どれを選べばいいのでしょうか?
 
堀内先生:水虫の治療は、白癬菌の増殖を抑える抗真菌薬を用います。抗真菌薬には塗り薬(外用薬)と飲み薬(内服薬)がありますが、市販されているものは塗り薬のみです。飲み薬は医師の処方箋が必要です。
 
塗り薬には液剤、クリーム剤、軟膏などがありますが、効果に大きな差はありません。ポイントは、水虫の症状に合わせた選び方をすることです。
 
液剤は、乾きやすく、塗った後の使用感はよいですが、刺激性が強いので、ジュクジュクしたところに塗るとしみたり赤みが出たりすることがあります。
 
クリーム剤は、液剤より刺激が少なく、ベタつきにくいため最も多く処方されています。
軟膏は、ベタつきがありますが、クリームよりさらに刺激が最も少ないため、刺激を極力避けたい症状のときに使用することが多いです。
 
塗り薬は、お風呂上がりに塗るのが効果的です。趾の間、つま先、足裏、かかと、アキレス腱まで広範囲に塗ります。治療を続けていくと約2週間ほどで徐々に症状が減ってきますが、まだ菌は残っているので症状がなくなってから最低でも1カ月は塗り続けることが必要です。
 
水虫に似た病気もあるので、症状が改善しない場合は、皮膚科を受診することをお勧めします。

水虫と間違えやすい皮膚の病気はこんなに…

増田:水虫かな? と思っても、市販薬で治らなければ、医師に診断してもらうことが大切ですね。
 
堀内先生水虫を疑って皮膚科を受診した人のうち約3分の1の人は水虫ではなく、以下のような皮膚の病気と診断されています。
 
接触皮膚炎:外部の物質が皮膚に触れて起こる炎症。刺激性のものとアレルギー性のものとがあり、かゆみや湿疹、赤い腫れなどの症状が見られます。
 
皮膚カンジダ症:常在菌のカンジダ属の真菌に感染して起こります。症状はかゆみや発疹、赤み、腫れなど。
 
汗疱(かんぽう):水疱が手のひらや指、足の裏や足の指に多く発生。刺激性接触皮膚炎を伴うと、範囲が広がって強いかゆみが伴うことも。

掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう):手のひらや足の裏に小さな水ぶくれが多数でき、膿がたまり皮膚が赤くなります。よくなったり悪くなったりを繰り返します。軽いかゆみを伴うことも。
 
pitted keratolysis (点状角質融解症):足の趾の腹や足裏の角質層がボコボコと虫食い状に浅く陥凹した状態。足の多汗症を伴うことが多く悪臭を放つことも。靴はよく乾燥させることが大事。
 
乾癬(かんせん):皮膚が赤くなって盛り上がり、慢性的に皮膚の表面に銀白色の粉のようなものができて、剝がれ落ちます。
 
 増田:水虫かどうかは、症状だけでは確定できないのですね?
 
堀内先生皮膚科では皮膚表面の角質や爪の一部を取り、白癬菌がいるかどうかを顕微鏡で見て診断します。最近では、爪水虫の菌をチェックする検査キットも使われることがあります。
 
皮膚科の治療では、足水虫には抗真菌薬の塗り薬(外用薬)、爪水虫には飲み薬もあります。抗真菌薬の外用薬は、市販薬より薬の種類も豊富ですし、部位や症状にあった薬や塗り方、生活習慣のアドバイスもできるので、本当に水虫かどうかを診断するためにも受診してください。

増田美加

女性医療ジャーナリスト

増田美加

35年にわたり、女性の医療、ヘルスケアを取材。エビデンスに基づいた健康情報&患者視点に立った医療情報について執筆、講演を行う。著書に『医者に手抜きされて死なないための患者力』『もう我慢しない! おしもの悩み 40代からの女の選択』ほか

取材・文/増田美加 イラスト/大内郁美 企画・編集/木村美紀(yoi)