歯ぎしりだけではなく、ささいな日常のクセで緊張や歪みが生まれるあごまわり。放っておくと全身の不調につながるため、こまめにリリースすることが大切。そこで、今回は「あごストレッチ」を考案する歯科衛生士の長守雅恵さんに、あごの筋肉を伸ばし、緊張、歪みを改善するセルフマッサージを教えてもらいました。

お話を伺った人
長守雅恵さん

歯科衛生士

長守雅恵さん

長守式顎関節ストレッチトレーナー。日本口腔リハビリテーション学会会員。歯科医院に10年間勤務した後、口腔ケアを専門とする「ティース・アイ富山本店」に勤務。2019年に独立し、「口腔整体療法による顎関節症の改善の取り組み」を学会にて発表。現在は「顎関節専門サロン Grace」の代表を務め、著書に『1分神あごストレッチ』(自由国民社 )。

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ほぐしたい筋肉はこれ! あごまわりで緊張しやすい3つの筋肉

──全身の不調につながるあごの緊張や、それにともなう歪み。Vol.2では、あごの緊張・歪みのセルフチェックを教えていただきました。緊張をほぐすには、どんなケアをしたらいいでしょうか?

長守:緊張しやすいあごまわりの筋肉をマッサージやストレッチをしてあげるのが効果的です。特に緊張しやすい代表的な筋肉は咬筋、頬骨筋、側頭筋の3つ。まずはこの筋肉の位置と機能をご説明します。

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①咬筋

長守:咀嚼筋としてメジャーな咬筋は頬に位置し、話すときにも、食べるときにも使う筋肉です。

咀嚼回数が少ないなど、使わないでいるとどんどん衰えるいっぽう、食いしばり状態が続くと硬くなります。片側で噛むクセがある方は左右で硬さに違いがあるでしょう。 

②側頭筋

長守:咀嚼筋のひとつで、名前の通り、こめかみから側頭部に広がる筋肉です。

食いしばりグセで、側頭筋が硬くなると、口を開けにくくなったり、噛みづらくなったりするだけではなく、頭痛や眼精疲労、フェイスラインのたるみなどの原因にもなります。 

③頬骨筋

長守:大頬骨筋と小頬骨筋があり、口元からこめかみにかけて斜めに走行する表情筋のひとつで、口角を引き上げ、自然な笑顔をつくります。

直接咀嚼に関わるわけではありませんが、補助的な機能を持っていて、衰えている人が多く、衰えると頬のたるみなどにも直結します。 

あごの緊張をリリースするセルフマッサージ

 ──3つの筋肉のほぐし方を教えていただいてもいいでしょうか? 

長守:今回は口内と外側からほぐす簡単なセルフマッサージのやり方をお伝えします。毎日行うことで不調の改善が期待できます。

口内をマッサージする際は必ず手を洗って清潔な状態で行うようにしてください。ゴム手袋を使用するのも◎。

また、口内はとても繊細で不要な摩擦を避けるため、唾液の分泌量が少ない方は、口内マッサージ用の保湿ジェルを使うのがおすすめです。

自分の唾液量が多いか少ないかをチェックする方法は以下の通り。少ない方もセルフマッサージを続けるなかで唾液の量が増え、虫歯や歯周病の予防にもつながりますよ。 

【唾液量の確認】
①口を閉じた状態で10秒間キープ(唇や頬は動かしてOK)。
②10秒後にゴクンと飲み込めるほど唾液がたまっていない場合は唾液が少ない。

咬筋ほぐし1

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①ほぐす側と反対の手の親指を口内に入れ、残りの指は頬に添える。
②口角付近で、ピンポン玉を作るように親指で皮膚を引っ張ったら、頬に向かって皮膚をゆらすようにほぐしていく
③再び口角付近の皮膚をピンポン玉を作るように親指を入れたら、外側に向かって皮膚をさらに伸ばす。②と同様に頬に向かい、内側から順にほぐしていく。

咬筋ほぐし2

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①下あごに親指以外の四指を添える。
皮膚を横方向にゆらすようにほぐす。下あご〜頬〜こめかみにかけて、斜め上に向かって順にほぐしていく。

側頭筋ほぐし

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①親指を耳の下、残りの四指の指の腹をこめかみ付近にあてる。
指先に力を込めて、上下に指を動かし、側頭筋をほぐす
③こめかみ〜頭頂に向かって順にほぐす。
④頭頂までほぐしたら、握りこぶしを作り、こめかみ付近にあてる。
髪の生え際をなぞるように、こめかみ〜額の上部まで順にほぐす

頬骨筋ほぐし

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①両手のひらの付け根を鼻の横の頬骨に添える。ひじはテーブルなどについてもOK。
手のひらの付け根に力を入れて、優しく頬を持ち上げる
③鼻横〜こめかみ付近まで順にほぐしていく。

+αでこれも! 耳のマッサージ

長守:耳をほぐすと、顎関節まわりの血流がアップし、顎が動かしやすくなるので隙間時間で試してみてください!

①人差し指と中指で耳を挟み、円を描くように耳の付け根をほぐす
②前回し、後ろ回し、どちらも行う。

撮影/安田光優 モデル/石坂友里 イラスト/Rei Kuriyagawa 取材・文/長谷日向子