トークイベント「Let’s Talk Consent」

世界最大級のマッチングアプリ「Tinder」を運営する『Tinder Japan』が、“同意”について考えるトークイベント「Let’s Talk Consent」を開催! 人と出会い、信頼関係を深めるうえで重要な「同意(Consent)」について考えるきっかけを提供するために開催された本イベントには、yoiをはじめとするメディアのほか、なんと100名にも及ぶZ世代の参加者が招かれ、会場を埋め尽くしました。それはもう、圧倒されるほどのエネルギー!

トークイベントは、Tinder Japanカントリーマネージャーのチョウ・キョさんが進行し、yoiの連載も大好評の臨床心理士 みたらし加奈さんと、若い世代から支持を集めるryuchell(りゅうちぇる)さんが登壇。イベントの参加者から事前に集めた“同意”についての疑問やエピソードについて、熱いトークが繰り広げられました。さまざまな経験をされてきたおふたりだからこその言葉に、参加者の多くが深くうなずいていました。

イベントレポートと、当日特別に実現した、みたらし加奈さんのyoi単独インタビューをお届けします!

“同意”ってどういうこと? まずは基礎知識からトーク!

チョウ・キョさん、 ryuchellさん、みたらし加奈さん

左から、チョウ・キョさん、 ryuchellさん、みたらし加奈さん

まずは“同意”の基礎知識からスタート! 「“同意”とはなにか?」をテーマに、みたらしさんからは“同意”の基本となる考え方について、ryuchellさんからは自身の経験も踏まえたうえでの“同意”の大切さと難しさについてのお話が。

みたらし加奈さん
「“同意”を語る上で重要なのは、“バウンダリー”です。“バウンダリー”は自分自身と他者を切り分ける境界線のこと。身体の境界線を越える際、してほしい、してほしくないことについて、しっかり言動を通して確認を取ることを“同意”と言います」

ryuchellさん
「“同意”は生きていくうえでの、コミュニケーションの基礎なので、避けては通れないことだと思います。ただ、同意を取らなければと強く思うときもあれば、相手と近い距離感になって“同意”という概念が少しずつ薄れてきてしまうときなど、正解が見つからないと思う瞬間もあり、これについては、僕もよく考えています」



“同意”は自分を守るものであると同時に、コミュニケーションをとる相手である他者と、自分と他者との関係性を守るものでもあります。どんなに近しい間柄の相手でも、“バウンダリー”を意識して、それぞれの気持ちをしっかりと確認することが大切だということを改めて認識させてくれました。


それって本当に“同意”してる? 実際のケースをもとに考えてみた

トークセッションでは、参加者から事前に募集したエピソードをもとに、“同意”について考えを深めていきました。

まず一つ目のエピソードは、「同じサークルの先輩とふたりで家飲みをした際、映画を見て、部屋を暗くした流れからベッドに誘ったが、その翌日から連絡が途絶えてしまった。自分は同意があったうえでのものだと思っていたが、周りから聞いた話によると、そうではなかった」というもの。この場合、“同意”は取れていたといえるのでしょうか?

みたらし加奈さん
「おそらく、流れや雰囲気に任せて、お互いにYESやNOの確認をせずに過ごしてしまったことでモヤモヤが残り、今回のようなことになったのではないかなと思います。例えば、お酒を飲んだり、ふたりきりで部屋にいるというシチュエーションだからといって、相手がYESであるとは限りません !」

“いい雰囲気”だと思ったとしても、それがイコール“同意”ではありません。本心はどう思っているのか、“言葉での同意”を取ることの重要性がよくわかるケーススタディとなりました。


みたらし加奈さん

二つ目は、“同意の取り方”に関するエピソード。「お互いの意思を確認するとき、『○○でいい?』というような同意が前提の聞き方が気になります。『いい?』と聞かれると本当は嫌でも拒否しづらく、つい流れで『いいよ』と言ってしまいがちです」という声が寄せられました。

ryuchellさん
「これは共感できないかも! 自分の心と体は自分にしか守れないので、大切に思っている人にはちゃんと”言葉”で伝えよう! 流れで“いいよ”と言ってしまうことが、自分にとって幸せなことなのか、一度考えてみて。自分自身が傷つかないために、ここまでは“OK”だけど、ここからは“NO”と、自分の中で、強く揺るがない芯を持つことが大切だと思います」

相手のことを大切に思っているからこそ、本当に嫌なときは“NO”を伝えることも必要。自分の幸せを守り、二人の関係性を長続きさせるためにも、“同意”をあいまいにしないようにしたいですね。

ryuchellさん

おふたりからの“同意”についてのメッセージ

イベントの締めくくりとして、おふたりから“同意”について心にとどめておきたいメッセージが送られました。

ryuchellさん
「人と人の出会いってロマンチックじゃないですか。それを壊したくないあまり、“同意”がおろそかになってしまう気持ちも正直わかります。ただ、“同意”をおろそかにしたロマンチックって、自分の経験上、気持ちが悪いんですよね。本物のロマンチックは“同意”を取り合って、お互いを信頼したうえで成り立つものだと思うんです。皆さん、すべての自分を肯定してあげて、自問自答しながら、自分の心に正直に進んでいってほしいなと思います」

みたらし加奈さん
「“同意”というと、けっこう難しいテーマに感じますよね。ただ、どんなシチュエーションに置かれていても、あなたの体や考え方や人生はあなただけのもの。それを同意なく踏み越えてくる相手に対しては、あなたがひとりで嫌な気持ちを我慢して人間関係のバランスを取る必要はないですし、時には相手と距離をとることも大切です。これからさまざまな人と接する機会があると思いますが、ヘルシーなコミュニケーションを心がけることは、自分や相手を守るためにも大切なことだと伝えたいです」

おふたりのメッセージを最後に、会場からは大きな拍手が。改めて“同意”の大切さを知ることができた、素敵なイベントでした!

チョウ・キョさん、 ryuchellさん、みたらし加奈さん

yoi独占! みたらし加奈さん特別インタビュー

イベント終了後に、連載「ちょっと甘いものでも。」でもおなじみ、yoiのスタメン・みたらし加奈さんへの単独インタビューが実現! “同意”について、さらに深めた質問にお答えいただきました。

臨床心理士

みたらし加奈

総合病院の精神科で勤務したのち、ハワイへ留学。帰国後は、フリーランスとしての活動をメインに行いつつ、SNSを通してメンタルヘルスの情報を発信。現在は一般社団法人国際心理支援協会所属。NPO法人『mimosas(ミモザ)』の副理事も務める。著書に『マインドトーク あなたと私の心の話』(ハガツサブックス)がある。

――“同意”の大切さを認識しているつもりでも、本心として“同意”しているのか? 自分でもわかっていないシチュエーションも時にはあるかと思います。今進んでいるコミュニケーションに対して自分がちゃんと“同意”ができているのか、自分と向き合うときに、心がけるべきことはありますか?

相手と一緒にいるそのときに、自分のモヤモヤに気づくのってけっこう難しいと思うんです。嫌われたくないっていう気持ちもあるだろうし、その場をうまく運ばなきゃとか、自分のモヤモヤを脇に置いて、シチュエーションに関することで頭がいっぱいの状態。そういうときは、自分が本当に“同意”できているか否かを検証する時間や余裕がないこともあると思います。大事なのはそのコミュニケーションのあと。相手と別れたあとに、自分が今どう感じているのかということにフォーカスする、というのがすごく大切なことだと思っています。

例えば、「この人といると楽しくてよく遊ぶけど、なぜか解散したあと疲れてるんだよな」とか「この人と飲みに行くときって、妙にいつもよりお酒をたくさん飲んじゃう」と思うときって、どこかに人間関係の“歪み”があるはず。自分でも気づかないうちに、その“歪み”を調整してしまっているタイミングは、いっぱいあると思います。その“歪み”を調整している自分に気づくことがすごく大事。普段から、自分の調整しちゃう“くせ”みたいなものに、目を向けてるようにするといいと思います。

例えば、冬にタクシーに乗ったときに「ちょっと寒いな」と思ったとして、「たった15分乗るだけだから我慢すればいいや」と思うのか、それとも「暖房を強めてもらえますか?」と聞いたり、上着を羽織ってみたりを、自分のためにしてあげられているか? 自分が感じた違和感=“環境や状況の歪み”に対して、自分自身でちゃんと理解して対応してあげられているかな、というのをまずは考えてみるのがステップ1。ステップ2の段階では、今度は“人とのコミュニケーションのなかでの歪み”を無意識に調整してしまっていないかな? と思い返してみる。そしてステップ3として、セックスパートナーや家族のような“特に関係が深い人とのあいだの歪み”についてはどうかを考えてみること。その3ステップを通して、自分自身の気持ちを感じられるようになるといいですね。

――今日のイベントは、学生の方がたくさん参加されていましたね! もちろん“同意”はどんな年代においても大切なものですが、特に若いうちから“同意”について知っておくことの必要性についてどう思われますか?

いちばんは、“同意”について知っておくことで、自分自身を守ることができるということですね。もちろん、相手を守ることができるという観点でも大事です。

なぜ若いうちから“同意”について意識することが大事かというと、おそらく若い頃のコミュニケーションのほうが、“鋭利な刃物”になりやすいからというのもあります。知識が少なかったり、性教育をちゃんと受けていなかったりすることで、自分が傷つく体験をしてしまったり、あるいは人を傷つけてしまうこともあると思います。大人になるとコミュニケーションの経験値やバリエーションが増えますが、若いうちは二者関係がすごく不安定な場合も多いんです。

特に挿入や粘膜の接触を伴うセックスをする相手とのコミュニケーションでは、“同意”が欠かせません。挿入は自分の内臓に相手を招く行為で妊娠のリスクもあるし、粘膜が触れる行為も、性感染症などの観点から危険をはらむ行為です。傷つきやすい年齢だからこそ、若いうちから“同意”について考えてほしいと思います。

“同意”についてオンラインで知る! オリジナルサイト「Let's Talk Consent」

「Let’s Talk Consent」パネル

会場外には、人気のイラストレーター「ともわか」さんによるイラストが目を引く、「Let’s Talk Consent」のパネルが!

みたらし加奈さんが副理事を務める『mimosas(ミモザ)』が監修した、“同意”について考えるオリジナルサイト「Let's Talk Consent」も公開中です!

“同意”に関する基礎知識のほか、“同意”を確認する側と伝える側、それぞれの立場が考慮すべきポイントなど、“同意”について知っておくべきことがまとまっています。また、日常生活の中で、“同意”に関する行動で疑問を感じた際に、解決のヒントとなるような情報も掲載されており、迷ったときに何度でも訪れたいサイトになっています。

自分と相手を守るために、忘れてはならない“同意”。「Let’s Talk Consent」の情報や、自分との対話を通して、理解を深めていきたいですね。

取材・文/木村美紀(yoi)