「心理カウンセリング」や「カウンセラー」「公認心理師」「臨床心理士」など、メンタルヘルスにかかわる職業や資格の名称は、知っているようで曖昧です。悩みの相談先を探すうえでも大切なカウンセリングにまつわる専門用語について、公認心理師・臨床心理士の井澗知美さんに伺いました。今回は、「カウンセリング」で行われることについて。

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Q2.カウンセリングってどんなことをするのですか? カウンセラーの人から答えをもらえるのでしょうか?

お話を伺ったのは…
井澗知美

公認心理師、臨床心理士

井澗知美
大正大学心理社会学部臨床心理学科教授。専門は発達臨床心理学。国立精神・神経センター精神保健研究所児童思春期精神保健部の流動研究員としてADHDの臨床研究をチームで行う。研究所に在籍している際に、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)にてペアレントトレーニングの研修を受け、日本におけるペアレントトレーニングプログラムの開発に携わる。著書に『カウンセラーという生き方』(イースト・プレス)など著書多数。

A2.カウンセリングは、ご本人が自分で答えを見つけるためのサポートです

カウンセリングとはなんでしょうか。
広辞苑(第七版)では、「個人のもつ悩みや問題を解決するため、助言を与えること」と定義されています。心理学的にいえば、心に悩みを抱えている人(クライエント)に対してカウンセラーが話を聴いて、心の専門家としての視点から、指導やサポートを行うことです。

日常生活を過ごすうえで、何らかの悩みや困りごとを抱えることは誰でもあると思います。悩むのは悪いことではありませんし、悩みを通して成長していくこともあるでしょう。そのときに大切なのは、“上手に悩むこと”です。

皆さんは悩んだとき、家族や友達、パートナーや先輩など、色々な人に相談することで視野が拡がったり、問題が整理されたり、気持ちが落ち着いたりという経験がある人も多いのではないでしょうか。「相談する」ことは、上手に悩むうえでの大切なスキルともいえます。

また、カウンセラーは、悩みを抱えたクライエントに正解を教えるわけではありません。例えば、カール・ロジャーズという心理学者は「クライエント・センタード(クライエント中心)」という考えを提唱し、クライエント自身が答えを知っているのだから、クライエントの話をよく聴きなさいと言いました。クライエントの話を聴くことでクライエント自身が自分で答えを見つけていくことができる、という考え方です。

カウンセラーの傾聴によって、クライエントは答えを見つけていける

カウンセラーの「聴く」技法は「傾聴」といって、カウンセリングの基本ともなるものです。一言でいうと、相手が発する言葉だけでなく、その言葉がどのような意味を含んでいるのか、その言葉で何を伝えようとしているのか──その言葉を使ってクライエントが語りたかったことに耳を傾け、受け取ったことをクライエントに伝え返す営みのことです。

そこに批判や評価はなく、そのまま受け入れることにより、クライエントは安心して自分の心を探索することができます。そして、自ら答えを見つけていける、というのがオーソドックスなカウンセリングの技法です。

人は、自分で思うほど自分のことをわかっていません。例えば、自分の顔を、自分の目で直に見たことはありませんよね。自分の顔は鏡を通してしか見ることができないように、自分の心も他者との関わりを通してしか見ることができないのかもしれません。対話を通して自分の心を見る。それがカウンセリングの根本ともいえます。

構成・取材・文/国分美由紀
出典/『カウンセラーという生き方』(イースト・プレス)