「心理カウンセリング」や「カウンセラー」「公認心理師」「臨床心理士」など、メンタルヘルスにかかわる職業や資格の名称は、知っているようで曖昧です。悩みの相談先を探すうえでも大切なカウンセリングにまつわる専門用語について、公認心理師・臨床心理士の井澗知美さんに伺いました。今回は、「公認心理師」の資格を取得するルートや大学などで学ぶ内容について。
Alphavector/Shutterstock.com
Q6.「公認心理師」の資格が気になっています。受験資格などの条件はありますか?
公認心理師、臨床心理士
A6.3つのルートの中から、受験資格を取得することが必要です
公認心理師資格は、日本で初めて誕生した、唯一の心理職国家資格です。2015年9月16日に公認心理師法が公布され、2017年9月15日に施行、2018年に第1回の公認心理師試験が行われました。
公認心理師になるには、「公認心理師カリキュラム」を持つ4年制の大学の学部を卒業後、特定の機関で2年以上の実務経験を積むか、「公認心理師カリキュラム」を持つ大学院に入学・修了し、国家試験に合格すると公認心理師資格が与えられます。「公認心理師カリキュラム」は、大学4年間と大学院(修士課程)2年間の合計6年間が用意され、いて、2018年4月より大学の授業および大学院で始まりました。
公認心理師試験の受験資格を得るためのルートは次の3つですが、圧倒的に多いのは、①で6年間心理学を学んで受験資格を取得するパターンです。公認心理師試験の合格率は、前例のなかった第1回は約80%と高い結果になりましたが、第2回以降は40〜50%台を推移しています。
公認心理師の受験資格を取得するためのルート
①公認心理師カリキュラムを持つ4年制大学で公認心理師となるために必要な科目(指定科目)を履修し、大学院へ進学して指定科目を履修する。
②公認心理師カリキュラムを持つ4年制大学で指定科目を履修し、卒業後に法で定められた指定の施設で、2年以上心理関係の実務経験を積む。
③外国の大学で心理に関する科目を修めて、外国の大学院で心理に関する科目を修了する。
※最新情報は厚生労働省のホームページなどでご確認ください。
大学や大学院で定められたカリキュラム
公認心理師の資格を取得するために学ばなければならない基本的なカリキュラム(公認心理師カリキュラム)は国で定められていて、どの大学や大学院でも必ず同じ内容を学びます。公認心理師はひとつの分野に特化したカウンセラーではなく、心理学全体に関する内容や基本的な理論はもちろん、アセスメントやカウンセリングの手法、医療・保健、教育、産業、福祉、司法・行政という5分野にまたがる心理学のすべてを網羅していなければなりません。
大学で修める25科目は、大きく次の5つに分類できます。これらに加えてさらに80時間以上の実習が必要となります。
①心理学の研究方法や統計方法など、公認心理師なら必ず知っておかなければならない「心理学基礎科目」
②人間の認知に関する心理学、発達に関する心理学家族や社会の中での心理学などを学ぶ「心理学の基本的に理論に関する科目」
③具体的にクライエントを支援するためのアセスメントやカウンセリングの手法を学ぶ科目
④医療・保健、教育、産業、福祉、司法・行政の5つの職域に関する心理学を学ぶ「おもな職域における心理学に関する科目」
⑤医師と連携するために不可欠な、おもな精神疾患や人体の構造について学ぶ「心理学関連科目」
また、大学院で修める科目は10科目、そして実習は450時間以上が必要となります。大学・大学院に進学するルートで公認心理師になる場合、学生時代にたくさん学ぶ必要がありますが、それだけプロフェッショナルなカウンセラーが世の中に求められているということでもあると思います。
構成・取材・文/国分美由紀
出典/『カウンセラーという生き方』(イースト・プレス)