あなたは毎日、十分な睡眠をとれていますか? 目覚めがすっきりしない、疲れが取れない、夜中に目が覚める…など、気持ちよく眠れている実感がもてないという声をよく耳にします。それもそのはず、日本は世界的にも平均睡眠時間が短い国なんです! さらに男性に比べて、女性は睡眠の質が落ちやすいとも言われています。そこで、睡眠医学と先進テクノロジーで、現代人の睡眠課題に向き合ってきた『ブレイスリープ』の調査結果をもとに、女性が睡眠の悩みを抱えやすい理由と快眠のための対策をまとめました。

寝不足であくびをする女性画像

日本の女性は世界で一番睡眠時間が短い!

2021年調査データによるOECD加盟国の平均睡眠時間のグラフ

OECD (Gender Data Portal 2021)

世界最大のシンクタンク国際機関であるOECD(経済協力開発機構)が2021年に加盟国の平均睡眠時間を調査したところ、日本の平均睡眠時間は7時間22分。一見すると十分な睡眠時間にも思えますが、実は加盟国の中で最下位という結果なんです。上のグラフで他国と比較しても、格段に少ないのが見てとれます。

一方、数々の最先端寝具を展開する「ブレインスリープ」が2020年より毎年実施している日本人1万人を対象とした調査「睡眠偏差値®︎」では、年々平均睡眠時間は増えていて改善傾向にあるものの、2022年の最新の調査結果は平均睡眠時間が6時間48分。OECDの調査結果よりも34分短く、平均睡眠時間が6時間未満という人も約3割存在することが判明しました。

OECD加盟国の男女の平均睡眠時間を比較したグラフ

OECD (Gender Data Portal 2021)

同じOECDの調査では、加盟国における男女の平均睡眠時間の比較も公表。上のグラフは、各国の男性の平均睡眠時間を基準にしたときに、女性の平均睡眠時間は何分差があるかを表しています。大半の国で女性のほうが睡眠時間が長く、33カ国の平均で5分長い結果に。これに対して、日本の女性は男性よりも13.4分短く、男女比においても他国より少ないことがわかります。つまり、日本の女性は世界で最も睡眠時間が短いというわけです。

睡眠の質が落ちやすい女性特有の理由

日本で男性より女性のほうが平均睡眠時間が短い要因は、働く女性が増えたこと、家事や育児、介護の負担が大きいことなど、さまざまな社会的背景がありそうです。その一方で、良質な睡眠を確保するためには、女性ホルモンの変動という女性特有の身体的な側面にも着目する必要があります。

年齢による女性ホルモン量の推移のグラフ

女性の体は月経、妊娠・出産、閉経といったホルモンバランスの大きな変化にさらされており、それに伴って睡眠の質も変化しやすくなります。大きく分けて以下の4つの女性のライフステージが、特に睡眠に影響を与えるといいます。妊娠中には日中の眠気や不眠、出産後は睡眠不足、そして更年期には不眠になりやすいという特徴が。

【月経周期】
排卵が終わってから月経が開始するまでの黄体期は、女性ホルモンのプロゲステロンが多く分泌される影響で0.3〜0.6℃の体温上昇がみられます。この作用によって夜間に体温が十分低下せず、朝の体温上昇も緩やかになります。そのため寝つきが悪くなったり、睡眠の質が低下したりして、日中に眠気を感じやすくなります。

【妊娠】
妊娠初期・中期・後期、それぞれのタームで異なる睡眠課題が。妊娠初期はプロゲステロンの影響で眠気が強くなり、妊娠中期になると眠気は改善する傾向にありますが、妊娠後期は子宮の増大・収縮や胎動、頻尿、腰痛などの影響で不眠が出現しやすくなります。また、妊娠中は睡眠時無呼吸症候群や、睡眠の妨げにもなるむずむず脚症候群などのリスクも高まります。

【出産】
産後は急激なホルモンバランスの変化、過度の疲労によって「マタニティブルーズ」という情緒不安定な状態になります。睡眠と抑うつ症状には相互に強いかかわりがあるため、まとまった睡眠がとれないことで、マタニティブルーズから産後うつ病に移行することもあり、注意が必要です。

【更年期】
女性ホルモンのひとつであるエストロゲンが急激に減少することにより、更年期は不眠が生じやすくなります。また、閉経後に増加するといわれている睡眠時無呼吸症候群は、女性ホルモンの低下による脂肪組織の増加、呼吸中枢への作用の抑制などが原因と考えられています。

ベッドで寝付けない女性画像

ライフステージのような長いスパンでの変化に限らず、月単位の変化も女性の心身に影響します。月経前はやたらと眠くなるといった体の変化を感じる人も少なくないのでは? この時期は、女性ホルモンのひとつで眠気を強くするプロゲステロンの分泌が盛んになり、体温が高めの状態が続く黄体期ということもあり、日中も眠たくなったりするんだそう。

また、睡眠と体温は深くかかわっており、一日のなかでの体温変化が睡眠の質に影響します。一日あたりの体温の上下する幅も女性ホルモンと関連していて、月経後の卵胞期はメリハリがあるのに比べて、月経直前の黄体期は変動が少ないことが下のグラフからもわかります。ライフステージや月経周期などで自分の体がどう変化するかを知って対処することが、よりよい睡眠を得るために大切なんですね。

月あたりの女性ホルモンの変動のグラフ

厚生労働省e-ヘルスネット参照

日あたりの女性ホルモンの変動のグラフ

厚生労働省e-ヘルスネット参照

今すぐできる! 睡眠の質を上げる12カ条

睡眠医学と先進テクノロジーで、現代人の睡眠課題に向き合ってきた「ブレインスリープ」は、良質な睡眠をとるために、一日のなかで気をつけたい12カ条を提案しています。朝起きてから夜寝るまでのタイムスケジュールに合わせた12カ条がこちら!

質の良い睡眠をとるための12個のTIPS

これら12個の項目をすべて実践するのが難しいという人も、普段の自分の生活と比べて特に改善すべき点をクリアにするところから始めてみましょう。それらを少しずつ改善して習慣化させ、睡眠リズムを整えることで、快適な睡眠が得られ、日中のパフォーマンスもよくなってくるはず。

睡眠の深さのグラフ

ちなみに、“睡眠の質”を考えたとき、しっかり睡眠時間を確保することはもちろん大切ですが、どれだけ気持ちよく眠れるかを考えることも重要です。一番深いノンレム睡眠が得られる入眠直後の約90分間に、「脳と体の休息」「記憶の生理・定着」「ホルモンバランスの調整」「免疫力アップ」「脳の老廃物を取る」という、睡眠時に重要な生理現象が活発に行われるんだとか。そのため、スムーズに入眠できるリズムを整えることがとても大切なんです。

世界的に見て睡眠時間が短い傾向にある日本で、さらに女性ホルモン量の変化という自分でコントロールできない事情を抱える日本の女性。毎日の睡眠を1時間増やすのは大変でも、上記の12カ条を参考に、少しずつ睡眠の質を向上させていくことからトライしてみませんか?

構成・文/政年美代子 資料提供/ブレインスリープ Photos by RunPhoto / The Image Bank, Maria Korneeva / Moment