「yoi」ではSDGsの17の目標のうち「3. すべての人に健康と福祉を」、「5. ジェンダー平等を実現しよう」、「10. 人や国の不平等をなくそう」の実現を目指しています。そこで、yoi編集長の高井が、同じくその実現を目指す企業に突撃取材! 第24回となる今回は、エリスの社会貢献プロジェクトについて、大王製紙 エリエールの井上真菜美さんにお話を伺いました。


(左から)高井編集長と井上真菜美さん。
◆エリスの社会貢献プロジェクトとは?
1985年に誕生した生理用品ブランド・エリスは、生理がある人のさまざまな悩みに真摯に向き合うブランド。「エリス コンパクトガード」を発売した2018年からは女性の自立を支援する「ハートサポート」プロジェクトをスタート。2022年に「だれかではなく、あなたのそばに。」というブランドメッセージを掲げ、一人一人に寄り添うブランドへと刷新。多様性のある社会で一人一人の生理に寄り添うプロジェクト「meet my elis」も始動。1年分の生理用ナプキンを無償提供する「奨学ナプキン」などを実施している。
「だれかではなく、あなたのそばに。」ブランドメッセージを込めた商品作り

高井 エリスといえば、さまざまなアーティストとのコラボパッケージが人気ですが、このアイディアはどのように生まれたのでしょう?
井上 コラボレーションは2017年から展開していて、女性が憂鬱になりがちな期間に使用する生理用品だからこそ、少しでも気分を上げられる商品を作りたいという「エリス コンパクトガード」のコンセプトに基づいて生まれたアイディアです。2021年に蜷川実花さんが手がける「M / mika ninagawa」とコラボレーションした際、外側のパッケージだけでなく個包装にも蜷川さんの作品をプリントしたことが大きな転機になりました。
個包装にプリントするアイディアは、「生理を取り巻く環境を少しでも明るくしたい」という蜷川さんからのご提案だったと聞いています。私たちからすると個包装は“使用済みナプキンをくるんで捨てるもの”という認識で、当時はそこにコストをかける視点がなかったのですが、蜷川さんのご提案を受けて新たな設備を導入し、なんとか実現できました。
高井 ポーチに入れて持ち歩くことを考えると、個包装デザインのアイディアは素晴らしいですよね。ほかにも北欧のテキスタイルブランドFinlaysonやイラストレーターのWALNUTさん、この連載でもご紹介したヘラルボニー、画家のヒグチユウコさんなど、素敵なパートナーばかり。特にヒグチさんは吸水ケア用品の「ナチュラ さら肌さらり」シリーズでもコラボされていましたね。
井上 そうなんです。吸水ケア商品は「尿モレ」という言葉の印象から「購入するのが恥ずかしい」と感じる方も多いので、そのハードルを下げたいという思いでヒグチさんにご相談したところ、ご快諾いただきました。
吸水ケア商品とのコラボは初めてだったそうですが、ヒグチさんがSNSで発信してくださったことで、ナチュラを初めて手に取ってくれる方も増えています。
「生理の貧困」解決のため、毎年2000名に1年分の生理用ナプキンを無償提供

高井 お話を伺っていると、デザインにはさまざまな問題を解決する力があると感じます。2022年から始まった「奨学ナプキン」についても教えていただけますか。
井上 先ほどお話ししたコラボパッケージと「奨学ナプキン」は、多様性のある社会で、一人一人の生理に寄り添う「meet my elis」プロジェクトの一環です。「奨学ナプキン」は、経済面や環境面など、さまざまな理由から生理用品の入手に困っている学生の方2000名を対象に、生理用ナプキンを1年分無償で提供する取り組みです。
高井 「生理の貧困」という言葉は、2017年に国際NGOのプラン・インターナショナルが発信したことで話題になりましたよね。厚生労働省の調査では、コロナ禍以降に生理用品を手にいれることに苦労している人が18歳・19歳で12.9%、20代で12.7%と若年層の方ほど困難を抱えているというデータもありました。
井上 そうですね。この取り組みは小学生から大学生まで、生理があるすべての学生の方を対象にしていますが、初年度は1000人の募集枠に9000件以上の応募があり、予定の2倍にあたる2000人の方へお届けすることにしました。これまで累計2万3000件を超える応募をいただき、総勢8000名にお届けしています。
高井 問題解決のために生理用ナプキンを無償提供するというのは素晴らしい活動だと思いますが、一方で生理用ナプキンの無償設置を求める意見がバッシングに遭うということもありました。このお取り組みでも批判的な意見に直面することはあるのでしょうか。
井上 募集人数に限りがあることについては「生理用ナプキンのメーカーなのになぜ2000名だけなの?」というお声をいただくことはありますが、SNSを含めて基本的には共感や応援の声をいただいていますね。

ザンビア共和国で布ナプキンの作製を支援
高井 それを伺って安心しました。もうひとつ、2018年から続けていらっしゃる「ハートサポート」は、海外に目を向けたプロジェクトですね。
井上 こちらは「エリス コンパクトガード」が誕生した2018年の国際ガールズデー(10月11日)からスタートしたプロジェクトで、「生理が、あきらめる理由にならない世界へ。」というメッセージとともに世界中の女の子の自立を支援するものです。初年度はSNSの投稿に「いいね」がついた数と同じ枚数の生理用ナプキンをアフリカ・ケニアの女の子に届けるという仕組みで、上限の200万「いいね」が集まり、200万枚を寄付しました。
2021年からは、ザンビア共和国で布ナプキンの作製支援を行うコミュニティスペースを開設し、布ナプキンの作り方を指導しています。完成した布ナプキンはコミュニティスペースで配布・販売するほか、健康・衛生・性に関する情報提供や看護師によるカウンセリングなどのサポートを実施し、女の子たちを取り巻く環境や意識の改善にも取り組んでいます。
高井 2021年から布ナプキンの作製支援にシフトされた理由は、布ナプキンのほうが現地の事情に即していたということでしょうか?
井上 そうですね。当初は自社製品を提供していましたが、使い切ったら終わりなのでどうしても一過性の支援になってしまいますし、洗うことで再利用できる布ナプキンなら、経済的な事情で生理用品を購入できない女の子でも継続して使うことができます。
また、女の子たちが布ナプキン作りの技術を身につけることで、就労支援にもつなげられます。縫い目に色糸を使ったりデザインを施してみたり、現地の女の子たちの技術もどんどん磨かれているんですよ。

高井 すごくカラフルで可愛いですね! このお取り組みは今後も継続されるのでしょうか?
井上 実はエリスの取り組みとしては2024年でいったん終了しましたが、今後はエリエールとして活動をよりステップアップさせて展開する予定です。
高井 エリスで6年間続けられた活動が、より大きな形に発展したということですね。それは素晴らしい。
井上 ありがとうございます。今後は女性に限らず、世界中で困りごとを抱える方たちを支援できるよう鋭意準備中です。
取材を終えて…
エリス製品のコラボパッケージを初めて見たときに、時代ってこうして変わるんだ、とうれしさがこみ上げてきたことを覚えています。
ちなみに、蜷川さんやヒグチさんを納得させる色彩の表現やプリントの技術は、まさに大王製紙さんならでは…! 紙を扱う出版社の社員としては、見逃せないポイントです。
生理にまつわる問題を解決する取り組みやプロダクトをご紹介することは、「yoi」がずっと大切にしてきたことです。これからも女性の未来を照らすエリス製品に期待しています!
また、「yoi」のサイトクローズに伴い、この連載も今回で終了いたします。読んでくださっていた読者の皆さま、ご協力くださった企業の皆さまに、心より御礼申し上げます。本当にありがとうございました!(高井)

撮影/露木聡子 画像デザイン/齋藤春香 構成・取材・文/国分美由紀 企画/高井佳子(yoi)