避妊や月経困難症などに用いられる「ピル」の中でも、万が一のときに備えて知っておきたいものがあります。今回は、産婦人科医の高橋幸子先生に、「アフターピル(緊急避妊薬)」について伺いました。

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Q.最近ニュースで見かける「アフターピル」って、普通のピルと何が違うの?

お話を伺うのは…
高橋幸子先生

性教育産婦人科医

高橋幸子先生

埼玉医科大学医療人育成支援センター・地域医学推進センター助教、埼玉医科大学医学教育センター、埼玉医科大学病院産婦人科助教を兼任。「サッコ先生」の愛称で、全国の小学校・中学校・高等学校にて年間120回以上の性教育の講演を行う。著書に『マンガでわかる!  28歳からのおとめのカラダ大全』(KADOKAWA)『自分を生きるための〈性〉のこと-性と生殖に関する健康と権利(SRHR)編』(少年写真新聞社)など。

A.「アフターピル」は、避妊に失敗した場合に服用する緊急避妊薬のことです

「アフターピル」「緊急避妊薬」のほか、「モーニングアフターピル」と呼ばれることもあります。2011年から日本で使用可能になった緊急避妊薬「ノルレボ®」や「レボノルゲストレル錠1.5mg『F』®(ジェネリック)」を性交渉後72時間以内に服用すれば、妊娠を9割程度阻止することができます。その効果は服用が早ければ早いほど高く、24時間以内なら95%、48時間以内で85%、72時間以内で58%といわれています。

いくら避妊を心がけていても、コンドームが外れたり、破れたり、ピルの飲み忘れに気づいたり、といった思いがけない出来事によって目の前が真っ暗になる…そんな可能性をゼロにすることはできません。だからこそ、緊急避妊の方法を知っておくこと、そしてどこに行けば入手できるかを調べておくことは、自分の体を守るためにとても大切なことです。

そしてもし、パートナーから避妊の協力が得られない場合や、性行為を強要されて困っている場合は、「デートDV110番」「DV相談プラス」などに相談してみてほしいと思います。


 

アフターピルを処方してくれる病院の探し方

万が一のときのために、自分が行ける地域内で処方してくれる病院を調べておきましょう。できれば土日も可能なところだと安心です。次のような情報が探しやすいウェブサイトをブックマークしておくのもおすすめです。

●「ピルにゃん」
ピル情報総合サイト。緊急避妊薬を土・日・祝日にも処方できる医療機関を紹介するサイトとしてスタートし、現在はピル全般について正しく充実した情報を提供。

●Dr.北村のJFPAクリニック「緊急避妊薬・低用量ピル処方施設検索」
産婦人科医・日本家族計画協会会長の北村邦夫氏が、体や性に関する情報を提供するサイト。緊急避妊薬だけでなく、低用量ピルを処方する施設も検索できる。

「ノルレボ®」は、健康保険が利かない自費診療で1万5000円〜2万円くらいで入手可能です。2019年から発売されているジェネリック(同じ薬効成分で価格が抑えられた後発薬)の「レボノルゲストレル錠1.5mg『F』®」を取り扱っているところでは、7000円〜とより手頃な価格で入手できます。

海外では処方箋なしで購入できるのに…

海外の多くの国において、緊急避妊薬は処方箋なしで販売されています。2019年に視察でスウェーデンを訪れた際、緊急避妊薬を買ってみようと薬局へ行くと、薬剤師の「(性行為から)72時間以内ですか?」という問診のみで簡単に購入できました。2023年に訪れたトルコでも、「ほかに何かお手伝いできることはありますか?」とたずねられただけで、やはり簡単に購入することができました。

値段は日本円にして3000円前後。「妊娠してしまったらどうしよう…」という不安と焦りの渦中にいる女性にとって、この入手のしやすさや金銭的ハードルの低さは救いではないでしょうか。残念ながら日本では、女性が薬局に駆け込んですぐ入手できるという状況にはなっていません。さまざまな議論に未だ決着がついていないからです。

そもそも婦人科の診察に抵抗がある人(特に未成年を含む若年者)、急いで入手したいのに土日に対応してもらえる医療機関が近くにない人、仕事で日中は動きづらい人、金銭的にギリギリな状態に追い込まれている人など、一人一人の女性が置かれた状況はまったく違います。誰もが緊急避妊薬を薬局ですぐ入手できるようになることは急務だと思いますし、私はそれを応援しています。

試験的に全国145の薬局で、処方箋なしの販売がスタート

日本でも海外と同じように薬局販売で入手しやすくすべきだという声が高まっています。厚生労働省が実施したパブリックコメントには、4万6000件を超える意見が寄せられ、市販化に賛成する意見は9割を超えたそうです。

そこで、国の調査事業として、2023年11月から2024年3月までの期間限定で試験的に薬局での緊急避妊薬の販売が行われています。処方箋なしで緊急避妊薬を購入できる薬局が全国145店舗、ひとつの都道府県につき2〜6店舗(多くは3店舗)の割合で配置されていて、販売場所はこちらから検索できます。

今後の国の政策に生かすため利用実態を記録することになっているので、この制度を利用して緊急避妊薬を購入する場合は、年齢確認など身分証明書の提示やアンケートの協力なども必要となりますが、購入履歴が調査目的以外で外部に知らされることはありません(家族に購入歴が知られることなどもありません)。ただし、18歳未満は保護者等の同意と同伴が必要となります。

構成・取材・文/国分美由紀 出典/『マンガでわかる!  28歳からのおとめのカラダ大全』(KADOKAWA)