月経困難症などに用いられる「ピル」。言葉は知っていても、どんな薬なのか知らない人も多いのでは? 今回は、産婦人科医の高橋幸子先生に、都市伝説的なピルの誤解について伺いました。

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Q.ピルを飲むと妊娠しにくくなるって本当ですか?

お話を伺うのは…
高橋幸子先生

性教育産婦人科医

高橋幸子先生

埼玉医科大学医療人育成支援センター・地域医学推進センター助教、埼玉医科大学医学教育センター、埼玉医科大学病院産婦人科助教を兼任。「サッコ先生」の愛称で、全国の小学校・中学校・高等学校にて年間120回以上の性教育の講演を行う。著書に『マンガでわかる!  28歳からのおとめのカラダ大全』(KADOKAWA)『自分を生きるための〈性〉のこと-性と生殖に関する健康と権利(SRHR)編』(少年写真新聞社)など。

A.それは、ピルにまつわる代表的な都市伝説です!

ピルは、『産婦人科診療ガイドライン婦人科外来編』でも「避妊効果において最も優れた方法の一つであり、安全性も高い」と明記されているのに、1999年に日本で承認されて20年以上経った今でも、現在服用している人の割合は、文献によっては3〜5%程度とされています。

日本でなかなかピルの服用が普及していない理由として、産婦人科医の立場からすると首をかしげるような都市伝説が広がっていることもあると思います。そこで、今回はよく見聞きするピルの誤解についてお話しします。

都市伝説①ピルを飲むと将来妊娠しにくくなる

決してそんなことはありません。むしろ、ピルを使わずに子宮内膜症などを放置して悪化させることのほうが、将来の妊娠の可能性を下げてしまうことにつながると思います。そして、ピルは服用をやめればいつでも妊娠はできます。私たち産婦人科医は、「ピルの服用をやめたら、次の排卵ですぐに妊娠していいんだよ」と指導しているほどです。

都市伝説②ピルを飲むと乳がんになる

過去にそういった仮説が生まれ、たくさんの研究が行われた結果、高用量ピルを服用することで乳がんのリスクが高まることはわかっていますが、広く用いられている低用量ピルを飲んでも「リスクは高くならない」と結論づけられています。そして、ピルは年1回の乳がん検診を受けながら使用します。また、低用量ピルは良性乳房疾患や卵巣がん、子宮体がんの発生率を下げるといわれます。

都市伝説③ピルを飲むと太る・むくむ

昔のピルは今に比べて成分に含まれるホルモンの量が多く、確かにそういった副作用がありましたが、ピルも進化しているので、現在の低用量ピルではそういったリスクはほとんどなくなっています。また、第4世代のピルはプロゲスチンの利尿作用によってむくみが軽減される効果もあります。

都市伝説④ピルを飲んでいればセックスの時にコンドームをつけなくてもいい

低用量ピルには避妊効果があるものの、性感染症を予防することはできません。性行為をする場合は、性感染症予防のためにもきちんとコンドームを装着しましょう! また、たとえ低用量ピルを服用していても、1カ月の中で2日連続で飲み忘れがあった場合、その月の避妊効果は期待できません。避妊はピル、性感染症予防はコンドーム、それぞれの目的を理解して、ダブルプロテクトでリスクを減らしましょう。

生理に振り回されず目の前のことに打ち込みたい、力を発揮したい、という人に、ピルは本当におすすめの選択肢です。

構成・取材・文/国分美由紀 出典/『マンガでわかる!  28歳からのおとめのカラダ大全』(KADOKAWA)