月経前になると、イライラしたり憂うつな気分になったり、体が重だるくてやる気が出ない…など、日本人女性の7割近くが心身に何らかの症状を経験している*1PMS(月経前症候群)。PMSの多岐にわたる症状は家庭や仕事など、女性の生活や人生に大きな影響を与えます。連載【知ることから始めよう! PMSのホント】第5回は、こうしたPMSの症状を予防・改善するために自分でできる方法についてお伝えします!

*1  大塚製薬が実施したアンケート調査結果より。調査期間:2021年6月29日~7月1日 調査方法:インターネットを用いたアンケート調査 調査対象:全国の30~44歳の日本人女性1,000人

第1回 自分の症状が「PMS」かどうかを見極めるポイントは?
第2回 知っておきたい! 女性ホルモンとPMSの関係
第3回 PMSの重さや症状が人によって違うのはどうして?
第4回 仕事や家庭にも影響大? アンケートで見るみんなのPMS

PMSがつらいなら…まず生活習慣の見直しを!

さて、さっそくですが問題です。以下の選択肢のうち、PMSの症状の予防や改善に役立つとされて「いない」ものはどれだと思いますか?

質問ボード

A. 答えは2!

日本だけでなく海外でもPMSに関するさまざまな研究が行われている今、生活習慣がPMSの発症や重症度に大きく影響すると考えられています。連載の第3回「PMSの重さや症状が人によって違うのはどうして?」でも詳しくご紹介していますが、朝食抜きや、脂質や糖質の多い欧米型の食生活、過食、運動不足、質のいい睡眠がとれていない…といった生活習慣が、PMSの発症や症状の悪化に影響を及ぼしていると考えられているのです。

例えば、日本の女子学生152人について、PMSの症状の有無と生活習慣や食行動の特徴などについて分析した報告によると、明らかな差が出たのは以下の5項目でした。*2

【「PMSの症状あり」という人は…】
●朝食を毎日定期的にとっていない
●ストレスがたまりやすい
●お腹いっぱい食べないと満腹感を感じない
●食後でも好きなものなら食べられる
●イライラすると食べることで発散する

また、台湾で行われた、PMSの症状がある677人と、症状がない1022人の女子学生を対象に行われた調査では、明らかな差が出た項目は以下のとおりでした。*3

【「PMSの症状あり」という人は…】
●朝食をとるのは週に3回未満
●週3回以上摂取するもの:卵黄を含む食品、揚げ物、砂糖入りの飲み物、ファストフード、くだもの、アルコール
●運動するのは週に3回未満
●睡眠の質が悪い
●ネガティブ要素(不安、うつ、敵意、劣等感、不眠、自殺志向)が強い
●脂質異常症の家族歴がある
●コレステロール値が高い

これを見ると、特に食生活では「朝食を毎朝とる」「糖質や脂質をとりすぎない」ことが大事と言えそうですね。

*2 北海道医療大学看護福祉学部紀要; 11: 101-105, 2004
*3 Kaohsiunɡ J Med Sci; 29(2): 100-105, 2013

大塚製薬の「PMSラボ」では、頭痛、むくみ、不眠、イライラなど、PMSの症状別の原因と対策を医師の視点からご紹介しています。それぞれの原因や解決法をチェック!

PMSラボ「PMS症状別 原因と対策」

ウォーキングなどの「有酸素運動」はPMSに効果あり!

ジョギングしている女性イラスト

PMSに効果がある“適度な運動”として推奨されるのが、ウォーキングやジョギング、水泳、エアロビクスダンスなどの有酸素運動です。呼吸によって酸素をしっかり体内に取り込む、規則的な繰り返しのある、比較的強度の軽い運動です。多くの試験によって、有酸素運動はPMSの予防や症状の軽減に役立つことが確認されているんだそう。例えば以下のグラフは、PMSと診断された30人(16~20歳)を2つのグループに分け、一方は時速約8.8kmのジョギングを1日20分、週3回、3カ月続け(有酸素運動グループ)、もう一方は普段どおりに過ごした(対照群)調査の結果です。有酸素運動グループでは、PMSの身体症状、精神症状に大きな改善が見られたことがわかりますね。*4

有酸素運動グループと運動しなかったグループの比較グラフ

*4  J Obstet Gynaecol. 35(4): 389-392, 2015

多くの研究が、前後のストレッチの時間なども含めて、1回20分から1時間、週3回程度行なった場合の効果を検討しています。運動のためにまとまった時間がとれないという人は、通勤や通学時に1駅分だけ早歩きする、といったことでもよさそう! 無理せず、続けられる運動習慣を探してみましょう。

PMSの精神症状にはアロマや呼吸法を

植物から抽出した精油(エッセンシャルオイル)を使って、ストレスをやわらげたり、リラックスするのに活用される「アロマテラピー」も、PMSの症状改善が期待できます。PMSの症状がある20代の女性22人が、黄体期に、ゆずの精油、またはラベンダーの精油をアロマディフューザーに入れ、鼻の下30㎝に置いて10分間香りをかぐ“芳香浴”を行なった結果が下のグラフ。どちらの精油でも、緊張や不安、怒り、疲労感といったPMSの精神症状が改善しています。

心電図から、芳香浴には心拍数を下げ、リラックス状態にする作用があることもわかりました。*5

アロマテラピーを用いた実験の結果グラフ

*5 J Altern Complement Med; 23(6): 461-470, 2017

また、PMSと診断された40人(20~38歳)を2つのグループに分け、一方にだけ下のイラストでご紹介する呼吸法を1日1回、10分間、1カ月間続けてもらったところ、PMSが出る時期の緊張や興奮、疲労感、気分の落ち込み、不安感が下がり、逆に爽快感がアップするという結果に! アロマテラピー同様、心電図から、呼吸法によって副交感神経が優位なリラックス状態になることも確認されました*6

*6   母性衛生; 53(4): 497-504, 2013

呼吸法のイラスト図解

呼吸法
座って目を閉じて体の力を抜き、「8拍吐いて、4拍吸って、2拍止める」を1分間に10回以下、10分間、1日1回行います

PMSの症状緩和に有効とされているセルフケアのまとめはこちらをチェック!

PMSラボ「自分でできる予防・改善法」

自分のPMS症状について「いつ、どんな症状が、どの程度出るか」といった記録をつけるのもおすすめの方法です。「これはPMSによるものなんだ」と自覚するだけでも、症状とうまくつき合っていけるようになるからです*7。症状が出るパターンやタイミングを知っておくことで、調子が悪い時期にはハードな仕事や用事を入れないようにするといったコントロールも可能です。

*7
 心身医学; 49(11): 1163-1170, 2009

生活に支障が生じるようなつらい症状があるときは、婦人科や心療内科、精神科などに相談することが必要ですが、今回ご紹介したようなセルフケアは今日からすぐできること。ぜひ取り組んでみてください。

PMSの具体的症状やその要因、専門家がすすめる予防法や改善策を知ることは、今、つらい症状に悩んでいるあなたの生活の質を上げるのにきっと役立ちます。PMSについての正しい情報がわかりやすく掲載されている大塚製薬の情報サイト「PMS(月経前症候群)ラボ」や、女性ホルモンとのつき合い方やセルフケアについてわかりやすく掲載されている
「女性の健康推進プロジェクト」サイトもぜひチェックして!

構成・文/浅香淳子(yoi) イラスト/YUKORANGEL 資料提供/大塚製薬