お互いの「したい」気持ちがマッチしてこそ楽しめるセックス。どちらかに性欲があり過ぎても、なさ過ぎても悩みのタネに。なかには加齢により自分自身の性欲に変化を感じている人もいるようです。

yoiが実施したアンケートに寄せられたお悩みに答える「大人のリアルなsexお悩み相談室」。第2回目は、「最近ムラムラしなくなった…」「ゆっくり休みたいのに迫られる…」など、パートナーとの性欲のギャップについてのお悩みをピックアップ。良好なパートナーシップのためにもしっかり向き合いたいこの問題に、産婦人科医の高橋怜奈先生がアドバイスします!

※ 2022年12月〜2023年1月にyoi公式Instagramにてアンケートを実施。

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高橋怜奈先生

産婦人科医

高橋怜奈先生

産婦人科医、医学博士。東邦大学医療センター大橋病院・産婦人科に在籍。ベリーダンサー、元プロボクサー。メディア出演をはじめ、SNSやYouTubeなどで医療情報の発信も積極的に行う。

パートナーとの性欲ギャップ編(見出し)

年齢を重ねるなかで、パートナーとの関係やお互いの性欲に変化を感じる人が少なくないようです。「したい」「気分じゃない」、その気持ちが釣り合っていれば何も問題ありませんが、どちらかが不満や不安を抱えていれば、大きな悩みの種になってしまいます。性欲のギャップについて、何かよい解決策はあるのでしょうか?

お悩み① 私はしたいけど、夫はそうでもない…。セックスしないことによる影響は?

私はセックスしたいけど、夫はそうでもないようでかなり寂しい。歳をとっても続けたいのたけど、夫とはそろそろ完全になくなりそう(今は数カ月に一回)。自分の性欲をどうすればいいのか、かなり不安です。また、セックスをしなくなることにより美容にどんな影響があるのか、女性ホルモンの減少などあるのか知りたいです。(ゆみさん・43歳)

セックスレスに悩む女性のイラスト

高橋先生:まずは、夫の性欲減退の原因を知る必要がありますね。男性の性欲減退の原因には、身体的な異常(喫煙や糖尿病などでの勃起不全などもあり)や、心身の異常(うつ病など)、男性更年期などが考えられます。そのうえで、特に心身ともに健康であるにも関わらず性欲がわかない場合、それがゆみさんに対してだけなのかどうか、で対処法も変わります。

●マンネリ解消の努力&セックス以外のコミュニケーションの検討を。

高橋先生:ゆみさんに対してだけ性欲がわかない場合、長いパートナー生活だとマンネリしてしまっていることが原因と考えられます。これは、動物の本能的に仕方がないことではあるのですが、例えば旅行やデートなど、いつもと異なるシチュエーションが刺激になることもあります。

加齢や心身の状態によって、ゆみさんに対してだけでなくどんな対象にも性欲がわかないという場合には、別のコミュニケーションを検討してみてもいいでしょう。セックスだけがすべてと考えず、キスやハグなどで安心感や充足感が得られれば、ふたりの関係も変わるかもしれません。それでも自分の性欲が解消できないのであれば、セルフプレジャーを充実させる、パートナー以外の相手で満たすなどの方法があります。いずれにしても、ゆみさんは今後に不安を抱いているようなので、これからのふたりの性生活をどうしていきたいかについて、一度パートナーと話し合う必要がありますね。

●セックスそのものに、美容効果や健康増進効果の医学的根拠はナシ。

高橋先生:「セックスするときれいになる」といった情報を目にするせいか、したほうがいいのだろうと思っている人が多いように感じますが、セックスやセルフプレジャーに美容効果や健康増進効果があるという医学的根拠はありません。ただ、セックスをすることが快感と思える人にとっては、セックスレスによってストレスがたまり、精神的に満たされないということは考えられるでしょう。セックスの頻度をまわりと比べて不安になることや、「したほうがいい」という思い込みは捨ててほしいですね。

お悩み② 私のほうが性欲高めでレスが苦しい。30代になっていっそう性欲が強まった気が。

悩んでいるのは、セックスを求める頻度の差。私のほうが多く、パートナーは性欲が低いのです。レスなのでとても苦しいときがあります。パートナーがセックスを求めなくなったとき、どうすればいいでしょうか? 復活することはできるのでしょうか? また、30代に入ってから自分の性欲がいっそう強まった気がします(出産経験はありません)。これは普通に起こることですか? 性欲が高まったときにはどうすればよいでしょうか?(Andyさん・33歳)

●まずはじっくり話し合いを。第三者の力を借りるのも手です。

高橋先生:年齢による性欲の変化は個人差があり、年齢を重ねて強くなる人も弱くなる人もいます。ただ一般的には、女性は更年期以降は女性ホルモンの減少とともに性欲も減退していくようです。

セックスだけがパートナーとのコミュニケーションツールではありませんし、セックスレスは悪いことではありません。ただ、どちらかがセックスレスになることで不安になったり、悩んだり困っているようであれば、パートナーとじっくり対話する機会を設けるといいと思います。

ふたりきりではなかなか話しづらいということであれば、産婦人科や精神科でセックスカウンセリングなどを実施しているところもあるので、検討してみてもいいかもしれません。「なぜセックスができないのか」「セックスについてどう考えているのか」など、ふだん面と向かって話しにくいことも、第三者が入ることで話せる場合もあります。一対一でのコミュニケーションではほかの選択肢が見つからなくても、別の視点が入ることで、「そんなに深刻な問題じゃなかったんだな」と思えることも。とはいえ、セックスカウンセリングはなかな身近なものではないので、もしも共通の友達や信頼できる人に間に入ってもらえたら、それでもいいと思います。

また、先ほどもお伝えしたとおり、男性の性欲減退の原因には心身の異常がある場合もありますので、原因を知るために一度、医療機関に相談してもいいかもしれません。血液検査をして男性ホルモン量の減少が原因であれば、ホルモン補充療法が有効です。

お悩み③ 仕事でクタクタなのに迫られる…。夫とのセックスが苦痛です。

セックスレスにはなりたくないけど、仕事でクタクタで、ゆっくり休みたいのにセックスを迫られ、断るとスネられる。夫を好きな気持ちはありますが、今は同じタイミングでベッドに入るのすら苦痛です。義務でセックスをしても、気持ちがいいとか、楽しいといったことはありません。なんなら、ほかの男性と情熱的なセックスをした方が楽しいだろうなとさえ思います。夫は普段、私をバカにしたような態度や私に対する文句が多く、それもあってこの人に抱かれたいという気持ちがなくなってきています。(ばななさん・39歳)

性欲ギャップのイラスト

高橋先生:ばななさんの場合、夫のことを好きな気持ちがあるといっても、セックスしたいかどうかは別の話ですよね。夫婦間でも性的同意は必須です。普段、バカにした態度をとられていることでセックスしたい気持ちがなくなっているなど、セックスだけでなくおふたりの関係性の問題も気になるので、そういったことも含めてじっくり話し合いができたらベストだと思います。もしも話し合いができず、意に反してセックスを強要されるようなことが続くのであれば、夫婦であってもDVとして外部に相談することも考えてください。 

●「あなたのことが嫌いなわけではない」と伝えることが大切。

高橋先生:自分が疲れていて体力的にセックスが難しい場合、キスをする、ハグをする、「愛している」と伝える、オーラルセックスのみする、イクことにこだわらずに少しだけしてみる…など、セックス以外の相手とのコミュニケーションを考えてみると、気が楽になるかもしれません。また、その際に「あなたのことが嫌いでセックスをしたくないわけではなく、単純に体力的な問題でできない。でもそれが解決したらセックスしたい」ということをきちんと明確に伝えることで、相手にも理解してもらいやすくなると思います。

お悩み④ 世の中のセックスしたほうがいい的な風潮がしんどい。セックスレスはいけないこと?

最近ムラムラしなくなり、それはそれで穏やかな日々です。正直、夫の誘い方を忘れてしまいました。今さら恥ずかしいし、誘われもしないので、セックスしなくてはいけないものなのかと悩みます。更年期少し前に異常に性欲が増すと聞いて、今はそれが怖いです。そうなったら女性用風俗とか利用したほうがいいだろうか? など考えます。世の中の「したほうがいい」的な風潮が妙な圧力でしんどい。レスはそんなにいけないことなのでしょうか。(やちこさん・42歳)

高橋先生:やちこさんのお悩みもよくわかります。実際、臨床現場には、相手に求められるけど自分はセックスしたくないという悩みをもった人がよくいらっしゃいます。

●お互いが心地よい関係ならば、問題ありません。

高橋先生:セックスレスは、どちらかが不満に感じていたり、それについて話し合えなかったりすると問題になることが多いですが、お互いがその関係性で満たされていて、心地よくいられるならばまったく問題ありません。やちこさんのように、セックスがなくとも穏やかな日々を過ごせているなら、それはとてもすてきなことだと思います。更年期を迎えても、セックスしなくても、女性でなくなるわけではありません。自分の人生を大切に楽しみましょう。

人生を楽しむ女性

高橋先生:先ほどもお伝えしたように、年齢による性欲の変化には個人差がありますが、今後、自分がセックスをしたくなったとき、それは単に性欲を解消したいだけで、セルフプレジャーでもよいのか、それとも相手がいるうえでセックスをしたいかによって対応は異なってくると思います。自分の倫理観が許せば、もしくはパートナーとの関係性によっては、女性用風俗だったり、オープンな関係を作ったりすることも解決策になり得るかもしれません。

お悩み⑤ 妊活でセックスが義務になってしまい、楽しめません。

2人目が欲しいけれどなかなかできず、セックスが義務的になってしまい、楽しめません。2人の気持ちが燃え上がりきらないけど、タイミングでやらなくてはいけない…。私の性欲はそこそこあるのですが、どういうセックスがしたいかなども、ちゃんとは話せていません。(無名・27歳)

高橋先生:妊活のために義務的にセックスをしなければいけないという強迫観念にとらわれて相手との関係が悪くなるくらいであれば、コミュニケーションとしてのセックスと、妊活のために必要な行為を分けて考えてもいいかもしれません。

●コミュニケーションとしてのセックスと、妊活のために必要な行為を分けてみる。

高橋先生:妊娠する確率が高い排卵時期に合わせてセックスをするタイミング法だけでなく、精液を採取してもらって自分で腟内にシリンジで注入するシリンジ法や、そのほかの不妊治療もあります。コミュニケーションとしてのセックスはお互いがしたいときだけにして、排卵期などに時間や心のタイミングが合わなそうなときは、無理にセックスはせずにシリンジ法など試してみてはいかがでしょうか。

妊活では、どちらかというと男性は「いずれできるだろう」と気楽に考えている人が多いかもしれません。その点で女性と気持ちのズレがが生じてしまうこともあるでしょう。できればパートナーシップを結ぶ前に、「そのうちできたらいいよね」なのか、「絶対に欲しい」のか、「妊娠できなくても養子縁組したい」なのか、どれくらいの気持ちの大きさで子どもが欲しいのか、話し合っておくのが理想です。それによって妊活への向き合い方も変わってくると思います。

そのほか、性欲ギャップについてこんなお悩みも…

・性欲の違いが大きく、私は月経時以外はいつでもしたいと思っているのに応えてもらえない。また、応えてもらえた場合も物足りなく感じます。(なのさん・27歳)

・別にセックスをすることが苦ではないのですが、彼がモチベーションが高いのに対して、私はそんなになくなってしまっているので弱っています。彼も私の意見を尊重してくれてはいるのですが、欲求を抑制するのは大変かと思うので、彼のことを思うと心苦しく…。ただ、いい打開策も見つかっていない状況です。(agree nuiさん・30歳)

性欲のギャップのお悩みは、セックスレスにもつながることもあり、苦しんでいる人も多いようです。やはり大切なのは、パートナーとのコミュニケーションだと高橋先生は言います。

そこで次回は、「パートナーとのセックスに関わるコミュニケーション」についてのお悩みをピックアップします!

取材・文/秦レンナ イラスト/mio.matsumoto