30代女性読者のお悩み「自分のセクシュアリティーがわからない…」【若林佑真さんと下山田志帆さんが回答！】

セクシュアリティーやジェンダーにまつわる悩みや疑問を抱える10代が、さまざまな分野で活躍するLGBTQ＋のメンターたちと本音で語り合う、NHK Eテレの番組『ハートネットTV 虹クロ』。番組に出演するメンターの若林佑真さんと下山田志帆さんが、yoi読者のお悩みに回答してくださいました。

『ハートネットTV 虹クロ』とは？
セクシュアリティーやジェンダーにまつわる悩みや疑問を抱える10代が、さまざまな分野で活躍するLGBTQ＋のメンターたちと本音で語り合う、NHK Eテレの番組。

●放送：毎月第1火曜 午後8:00～8:29 （NHKプラスで同時配信、1週間の見逃し配信もしています）
●再放送：本放送の翌週水曜 午前0:30～0:59 ※火曜深夜 

公式HP：https://www.nhk.jp/p/ts/WYNW817V7Y/

今年30歳になる女性ですが、自分の性的指向がわかりません。身近な人に恋愛感情を抱いたことはなく、性行為には興味がありますが、痛いのは嫌いで軽い潔癖症なので、もし好きな人が相手だとしても抵抗を感じてしまうのではないか…という不安もあります。

婚活やマッチングアプリなどの使用は未経験ですが、いつかは誰かと共生して、食事や芸術鑑賞などの楽しみを共有したいと思いはじめました。一生クエスチョニング（性自認や性的指向が揺れ動いている、決めていない、あるいは決めない状態）でいるより、人と深く関わって自分をもっと知って、世界を広げて心を成長させてから死にたいと思っています。

今の自分は、きっと女性のほうが好きで、触れたいし寄り添い合いたいんだろうなとは感じています。もしかしたら、踏み出す勇気が欲しいだけなのかも…。

セクシュアリティに向き合うことは、私にとって趣味や仕事と同じくらい、とても大事なことです。だから悩み続けたまま終わることはしたくありません。ご意見をいただけたらとてもうれしいです。

まずは、自分のことを正直に見つめて、言葉にしてくれてありがとうございます。本題に入る前に、少しだけ僕の経験をお話しさせてください。実は、僕も長年パートナーがいません。どれくらいかというと、ホコリがかぶるくらいの年数です（笑）。 

ずっとパートナーが欲しいとは思っていて、まわりにも欲しい欲しいと言っていたら、マッチングアプリを提案されて。でも、なんとなく使いたくなくて拒否し続けていたら、ある友人から「パートナーが欲しいと言うわりに、行動が伴っていないよね」と指摘されたんです。さらに、「マッチングアプリの何がそんなに嫌なの？」という問いに対する明確な答えもない。自分の矛盾を自覚して、今年の元旦、思い切ってマッチングアプリに登録したんです。

結論から言うと、1カ月で辞めました。使ってみた結果、まったく楽しめなかったんですよね。写真だけをパッと見てよし悪しを判断するシステムそのものが嫌で、やっぱり自分には合わなかった。ただ、その経験のおかげで発見もありました。ひとつは、自分はパートナーが欲しいと思っていたけれど、「素敵な出会いがあればいいな」程度の欲求だったこと。もうひとつは、恋愛のプロセスを大事にしたいこと。自然に出会って、その人のことを知っていき、深い絆が生まれて…という工程を経て人を好きになるタイプなんだと知りました。

無理に探しても、パートナーは見つからない。それがわかったら、パートナーがいない状況が前よりも苦しくなくなったんですよ。これは、マッチングアプリを使ってみなければ気づけなかったこと。つまり何が言いたいかというと、「人と深く関わって自分をもっと知って、世界を広げて心を成長させたい」という、自分の思いの形を知るために、いろんなことをやってみてもいいんじゃないかな、と！　違ったらやめればいい。やっていく過程で生まれる感情に、きっとヒントがあるはずです。

例えばマッチングアプリだったら、自分のセクシュアリティーの選択肢もたくさんあって、出会いたい相手の性別や、求めている関係も自由に選べるものもあります。マッチングアプリに抵抗があれば、趣味に関連するイベントなどに参加してみるとか。人間関係を増やすことを目的に、出会いがある場所に足を運んでみてはいかがでしょう。ただ、今は一歩を踏み出せない、やっぱり自分はやりたくないと思うのであれば、それも大事な感情。気が向くまで、気長に待ってもいいと思います。

お悩みを読んだときに、「セクシュアリティーに向き合うことは、私にとって趣味や仕事と同じくらい、とても大事なことです」というとらえ方が素敵で、とても印象的でした。自分の性的指向がわからない今の状況をネガティブにとらえるのではなく、現在進行形の自分として大切にしてほしいです。

「触れたいし寄り添い合いたい」という心の声に無理やりラベルをつけようとせずに、“今の自分って、こんなふうに感じてるんだな〜”と受け止めてあげるだけでも、少しずつ歩みが進んでいくんじゃないかな。

自分の人生で何を大切にしていきたいかが、とても明確な方ですね。自分が何を大切にしたいか、どういう生き方をしていきたいか、きちんと言語化できる人って少ないと私は思っていて。それができているので、あとは誰かに発信して共有するだけだと感じました。

発信と言ってもSNSではなくて、例えば隣の誰かに伝えるとか、飲み屋で出会った人に話してみるとか。それができるようになったら、絶対に同じような生き方をしたい人、同じようなことを大切にしたい人に出会える瞬間が訪れるはず。とても素敵な言葉を持っている方なので、自信を持って、誰かと共有してみてほしいです。

この方が普段、どんなコミュニティーにいて、どんな人と関わっているかが気になります。文章を読んでいて、自分や自分が属しているコミュニティーにいる人とめっちゃ気が合いそうだな！と直感したんですよ。私はディスカッションするのが好きなんですけど、なんとなく、この方も好きなんじゃないかな。

お悩みにある「共生」という言葉の意味も気になりますし、さらに深く、この方の思いを聞いてみたい。もしもまわりに話せる人がいないと感じているなら、ぜひ、私が主催しているイベントに来てください！

撮影／TOWA　画像デザイン／齋藤春香　取材・文／中西彩乃　企画・構成／木村美紀（yoi）