このところ注目が集まっている「腟ケア」や「腟マッサージ」。産婦人科医の八田真理子先生は「大切にケアするほど、うるおい、弾力が生まれ、見た目にもきれいになります」といいます。例えばその効果はというと…
●ナプキンやおりものシートによるムレやかぶれ、かゆみ、ムズムズ、気になるニオイの改善
●生理痛や生理不順、おりものの異常などの改善、性感染症リスクの軽減
●腟の緩みや尿もれの改善
●閉経前後の乾燥、かゆみ、黒ずみ、性交痛の緩和

こんなにも多くの女性特有のトラブルが改善すると聞けば、ぜひやってみなくては! そこで、具体的な腟ケア&腟マッサージの方法を八田先生に教えていただきました。

八田真理子 先生

産婦人科医

八田真理子 先生

幅広い世代の女性の診療・カウンセリングを行う地域密着型クリニック「聖順会ジュノ・ヴェスタクリニック八田」院長。著書に『思春期女子のからだと心 Q&A 資料ダウンロード付き』(労働教育センター)、『産婦人科医が教える オトナ女子に知っておいてほしい大切なからだの話』(アスコム)ほか。

腟マッサージの基本は正しく洗うことから

産婦人科の外来で、幅広い年齢層のフェムゾーンと日々向き合っている八田先生。最近の傾向は、ケアしている人といない人、フェムゾーンが健康な人と案外そうではない人など、同じ年代でも個人差が大きいことだそう。

「おりものシートをずっとつけていたり、きついガードルやジーンズが食い込んだりして、腟まわりが真っ赤になっている人がいます。また、締めつけの強いスパッツで運動している人の中には、フェムゾーンが蒸れたり擦れたりしてニオイやかゆみを感じていることも。

また、小陰唇などに恥垢という垢がたまっている人も少なくありません。これらがニオイやかゆみなどトラブルの原因になっているのに、市販のクリームなどを使い続けて悪化させている人もいます。

いずれの場合も、腟まわりにダメージを与えないように気を配ったり、ケアする習慣がないんですね。毎日きちんと見ながら洗って、優しくマッサージしながら保湿する。それだけでいいんです。今はデリケートゾーン専用のソープやオイルがたくさん出ていますね。顔やボディケアと同じように、気に入ったものを探してみてください」

【外陰部の構造】大切な部位だから、きちんと見て触って知っておこう!

外陰部の名称説明イラスト

●デリケートゾーン専用ソープを用意!
まずは、入浴時に使うデリケートゾーン専用ソープを購入しましょう。ソープにもオイルタイプや泡で出てくるものなどいろいろありますが、弱酸性タイプのものであればOKです。

●手指の腹で「前から後ろ」に優しくなで洗い
ソープを手でよく泡立てたら、そろえた指の腹を使って優しく洗います。基本は「前から後ろへ」。これは肛門に付いた大腸菌などが腟に入るのを防ぐため。気をつけたいのは、爪を立てたり強くこすらないこと。顔やボディと同じく「泡で洗う」イメージです。小陰唇は垢がたまりやすいので、外側・と内側をもれなく洗いましょう。

●拭くときもゴシゴシこすらない
フェムゾーンをきれいに洗ったら、清潔なタオルで軽く押さえて水分を拭き取ります。ゴシゴシこすったりはしないこと。顔の皮膚と同じく、優しく扱いましょう。

●腟の中は洗わなくてOK!
ここまできて「あれ? 腟内は洗わなくてもいいの?」と思った人もいるかもしれません。八田先生、腟そのものはどうすべき?

腟の内部には腟内フローラと呼ばれる細菌叢があり、常在菌である乳酸桿菌(にゅうさんかんきん)が腟内を守ってくれています。これが腟の自浄作用です。ある程度清潔に保つことは大事ですが、せっかくの作用を無駄にしないためにも、腟内は基本的には洗わなくてOKです。特に20代30代では、腟に指を入れることができない人も意外と多いので、無理に洗わなくてかまいません。どうしてもニオイが気になる場合や、おりものや生理が終わったあと腟内に残った経血を流したい場合は、軽く指を入れて洗ってもかまいませんが、過度に洗いすぎないように注意して。また、生理中は腟の自浄作用が落ちるので、腟内を洗ったりマッサージするのは避けましょう」

初心者でもできる腟マッサージ、具体的なやり方は?

膣マッサージをする女性イメージ

フェムゾーンのマッサージをするときは脚をしっかり開いて。立っている場合は片足を台に載せるのもおすすめ!

八田先生が今回、基本のマッサージとして教えてくださったのは、腟そのものではなく、腟のまわりのフェムゾーン、つまり外陰部のマッサージ。「20代30代であればうるおいも柔軟性も十分ですので、無理に腟内に指を入れてマッサージする必要はないと思います。更年期になって女性ホルモンが減り、腟の乾燥やかゆみ、性交痛などが出てきたら、腟の中まで保湿したりマッサージするなどのケアをおすすめします。その場合は週に2~3回を目安に」

●専用のオイルやクリーム、ジェルを使用
「腟マッサージ」は入浴時に体を洗ったあと、お風呂場や脱衣場で続けて行うのがスムーズ。デリケートゾーン専用のオイルやクリーム、ジェルなどを使って、外陰部全体をやさしくマッサージしながら保湿するイメージで行いましょう。さっぱりしたジェルやローションだとすぐに浸透してしまうので、オイルやクリームのほうがマッサージ向き。

●3本の指の腹で「大陰唇→小陰唇→会陰→肛門まわり」をマッサージ
用意したオイルやクリームを、利き手の人差し指・中指・薬指に取り、指の腹を使って次の要領でマッサージしていきます。
1)大陰唇を前から後ろへ向かって、優しくなでるように。
2)小陰唇は、指の腹でそっとつまむようにして、内側と外側をもれなく。
3)会陰をUの字になでながら、血流を促すように何度かマッサージ。
4)最後は肛門のまわり。軽くもみほぐす要領で。

フェムゾーンマッサージの手順

「腟のまわりだけマッサージするなら、そんなに難しくはないですよね? 毎日続ければ、この程度の簡単なマッサージでも十分に効果があります。顔のお肌と同じで、皮膚にうるおいと柔らかさ、弾力が加わるのはもちろん、かゆみやニオイなども激減します。腟の緩みが改善し、尿もれの予防にも。また、血行がよくなるので生理痛や血行不良から来る冷えなども改善するでしょう。

何より、顔やボディと同じように、毎日腟まわりを見て触って、フェムゾーンと向き合うことが大切。それは女性としての自分の人生を見つめることにもつながりますし、年齢を重ねても生き生きと輝くためにぜひ必要なことだと私は考えています」

忙しい毎日を過ごし、ついつい自分のフェムゾーンをおざなりにしている人も多いはず。少しでもゆっくり腟ケア、腟マッサージをする時間を持ってみませんか?

取材・文/蓮見則子 イラスト/ユリコフ カワヒロ