2000年代のカルチャーをこよなく愛する三人がスタートしたpodcast『Y2K新書』。メンバーであるDIVAのゆっきゅんさん、小説家の柚木麻子さん、振付師の竹中夏海さんの軽快な掛け合いが話題を呼び、瞬く間にpodcastランキングの上位に。今回は7月30日の国際フレンドシップ・デーに合わせて、三人の馴れ初めや、いい友情関係を保つ秘訣について伺いました。
左から、振付師の竹中夏海さん、DIVAのゆっきゅんさん、小説家の柚木麻子さん
年齢も職業も異なる三人が“友達”になった経緯
ーー皆さんは、そもそもどういった経緯で友達になったのでしょうか?
柚木 事の起こりは10年前。夏海と私がですね、『ミスiD』というコンテストの審査委員になりまして。
竹中 初年度に「玉城ティナ」という爆弾が生まれたオーディションですね。
柚木 芸能界に通じた方ばかりで、私の知らない、“人を選ぶ方法”をみんな知ってる。戸惑っていたら、そのメンバーの中に夏海がいたんですよ。「この人なんか話合う!」と感動して、そこから仲良くなりました。
竹中 ゆっきゅんと柚木さんは、音声アプリ『Clubhouse』で出会ったんだよね。
ゆっきゅん そうそう。『Clubhouse』が流行っていた2021年当時、柚木さんは毎朝一人でしゃべってて。
柚木 このアプリが流行っていると聞いてノリノリで参加したら、私が入ったその日には、もうみんな辞めてた(笑)。てっきりいろんなハウスがあってそこに出入りするもんだと思っていたのに誰もいないから、とにかく一人でしゃべってればみんな戻ってくるんじゃないかと…。
ゆっきゅん 一人でずっとしゃべり続けてるのが面白すぎて、私はずっと聴いてたのね。そしたらそれを知ったタレントの「でか美ちゃん」が柚木さんに私を紹介してくれて。共通の趣味であるY2Kのエンタメについて柚木さんと話していく中で14歳差の友情が芽生えました。
柚木 年の差の友情とか年の差の恋愛とかって、ドラマの中で描かれると、だいたいどっちかが“日常に飽きてる”状態なんだけど、ゆっきゅんも私も日常がこれ以上ないくらいきらめいてた(笑)。
竹中 お互いとの出会いで日常が煌めいたんじゃなく、最初からきらめいてる二人が出会った。
柚木 私の人生はゆっきゅんによって輝き始めたわけじゃないし、ゆっきゅんも私との出会いで日常が輝いたわけじゃない。みんな楽しげでしたね。
竹中 そんな二人が出ているイベントを私が見に行って、初めて三人がそろったよね。そこから私が二人を誘ってpodcastが始まった感じです。
「自分はこういう人間だ」ということを“バレバレの状態”にしておくほうが、大人になってからの友達はできやすい
ーー今回、読者の皆さんに友情にまつわるお悩みを相談したところ、大人になってからの友達作りに難しさを感じていらっしゃる方がたくさんいました。皆さんはそういう思いを感じたことはありますか?
ゆっきゅん 私は逆に、大人になってからできた友達のほうが多いかもしれない。自分の趣味趣向を発信してるからだと思うんですが。
柚木 自分の好きなことを発信するのはいいかもしれないね。
ゆっきゅん そう、“バレバレの状態”にしてあるんです。学生時代は、趣味の合う人はいないのが普通だと思っていたけど、大学を卒業してからは好きなことを話せる友達がどんどんできるようになった気がする。「自分はこういう人間だ」というのをどんどん出していく方が、大人になってからの友達はできやすいと思うな。
柚木 私は「呼ばれたらとりあえず行く」ようにしてる。本業と関係ない、地域の飲み会とかも、行けるときはとにかく行くかな。
竹中 柚木さん、結構色々なところに顔出しているイメージがある。
柚木 パーティも行くしね。例えば文学賞のパーティって、あんまり同世代の若手はこないけど、私は「何か面白いことあるかも!」と思って行ってる。この間も文学賞のパーティ、案の定大御所ばかりだったけど、イチかバチからで話しかけたら、初対面の江國香織さんとしゃべれたし。どこか行けば何かがあるかもしれないから、できるだけ参加するようにする。そこで嫌われたとしても、「まあしょうがないかなー」って!
竹中 その割には柚木さんってしょっちゅう、「あの人に嫌われてる気がする」って言ってるよね(笑)。そんなことないと思うんだけど。
柚木 ありがとう。そうやって二人に背中を押されて生きてるよ…。わりと友達からLINEブロックされるけど、そうなったら直接電話して「ブロック解除してください!!」って頼むからね、私は。
ゆっきゅん 信じられない、本当にすごいよね。
柚木 とにかく、出かければ何かしら起こるし、話してみたら意外と盛り上がることもあるし、ブロック解除してくださいって頼めば案外、解除してもらえるものなんですよ。
友達の輪を広げたければ、“人と人をつなげる側”になる⁈
ーー読者の中には、自分を出していくことに抵抗があるという声もあったのですが、皆さんはそういった不安を抱いたことはありますか?
ゆっきゅん あまりないかもなあ。逆に、この人とは仲良くなれそう!と思ったら、自分のことを全部話しちゃう。「私は心を開いていますので、何が来ても大丈夫ですよ」っていう意思表示なのかも。
竹中 私は、自分を語ることに抵抗を感じる人の気持ち、わかるな。そういう場合は、インスタのストーリーズで独り言のように、好きなものを流すとかね。そうすると自分の趣味に合う人たちが勝手に反応してくれて、「この人とだったらこういう話ができるんだ」ってわかってくるから。そういう意味では、SNSによって昔より気が合う友達は作りやすくなってるのかもしれない。
ゆっきゅん インスタやツイッターを見ていれば、その人がどういう人かって大体わかるもんね。その状態で会えるとラク。プロローグが終わったところからスタートできる感じ。
竹中 あとは、最初から自分を出すことが難しければ、気が合う友達に人を紹介してもらうのはひとつの案だと思う!
柚木 夏海は、人と人をつなげるのが本当に上手だもんね。
竹中 大好きなんですよ。先日も、柚木さんがラップをテーマにした小説を書くために知り合いのラッパーを紹介して、一緒に会ったよね。
柚木 もはやマッチングアプリだよ。“マッチング夏海”。
竹中 友達を作るには、むしろ自分が紹介する側になるのもいいかも。「こことここ気が合うかも!」ってつなげていけば自分も友達の輪が広がって、新しい人と知り合えるはず。
悩みの相談相手は一人に絞らない。ストーリーズで聞いてくれる人を“公募する”のもアリ
ーー友達になったあとは、関係性を築いていくフェーズに入ると思うのですが、皆さんが友達とよい関係でい続けるための秘訣はなんだと思いますか?
ゆっきゅん 依存しすぎないことかなあ。私は嫌なこととか落ち込むこととかがあったとき、特定の人だけに聞いてもらうのではなく、ストーリーズに載せるようにしていて。そうすると反応してくれた人だけに話せるから、一定の友達に依存しなくなって適度な距離を保てるんだよね。
柚木 なるほどね。今風。
ゆっきゅん ある意味、悩みを聞いてくれる人を公募する感じ。相手も基本は余裕があるときに反応してくれるのだろうから、気を遣わずに話せるし。この人が親友で、この人に全部聞いてもらって…となると、相手も自分もしんどいから、「誰かーー!」って全員に投げかけてますね。
竹中 次会ったときに、「この前のあれどうだった?」みたいに話のネタにもなる。
ゆっきゅん そうそう告知になってる。「私は今こういう状態です」って。
柚木 私は逆に、めちゃめちゃ友達に依存してるよ。夏海に言えば何とかなるだろうと思ってるし。
ゆっきゅん それは依存じゃなくて、頼ってるってことじゃない?
柚木 あ、そうかも! 頼るのはいいと思うんだよね。「自分だけでやらなきゃ、解決しなきゃ」と思わなくていいというか。私なんてpodcastの収録中は話すことに夢中だから、夏海が冷静に指示をさばいてくれたり、ゆっきゅんが補足を入れてくれたりして、本当に助かってるもん。まわりに少しくらい頼ってでもいいから、自分にわがままになってもいいなと。
ゆっきゅん 大丈夫、それが仕事だから。私たちの仕事で役割。
竹中 頼られるとうれしいしね。
仲良くなるには、海外ドラマみたいに、“すぐ祝う”こと
柚木 あとは、友達といい関係を築く他のアイデアとしては、“すぐ祝うこと”が大事だと思う! 海外ドラマの登場人物たちみたいに。
ゆっきゅん ははははは!
柚木 例えば誰かの誕生日が近かったら、バーッと飲み会をセッティングするとか、ケーキを用意するとか。そういうことだけで一気に打ち解ける気がする。うん、“すぐ祝う”はポイントだな。
ゆっきゅん 確かに。柚木さん、『Clubhouse』でしか話したことなかったときにも、すっごいケーキ誕生日に贈ってくれたもんね。
柚木 別に気遣いとかじゃなくて、祝うのが好きキャラとして認定されると、ちゃんと自分が伝わるじゃない。人を巻き込んで祝うと楽しいし。
ーーそもそも、「“本当の友達”がいなくて悩んでいる」という声もありました。それに対しては、どのような解決策があると思いますか?
柚木 そういう場合は、一緒にアメリカンスタイルのレストラン『フライデーズ』に行くのがいいと思うんですよ。
竹中 なにそれ(笑)。
柚木 外国みたいなレストランでお祝いをする。「自分には本当の友情がない」と悩んでる人は、ドラマや映画に出てくる“幻の友情像”が影響しているのかもしれない。逆に、アメリカの映画に出てきそうなレストランに行けば、映画で観た友情を手軽に体験できますよね。
ゆっきゅん 一旦『フライデーズ』に一緒に行って試してみて、「違う!」ってなったら離れればいいし、「これが本当の友情だ!」って気がつくかもしれないし。
柚木 そもそも飲みに行く友達がいなければ、意外と飲み屋に一人で行っていろいろ頼めば満足できることもある。
ゆっきゅん 友情というよりは、自分の中の何かが満たされていない可能性もあるよね。
柚木 そうそう。自分が何を求めているのかがわかってくるかもしれない。私も昔「アメリカに行きたい、日本にいてはダメだ!」と思っていた頃、アメリカ感のある『フライデーズ』に行ったら意外と満足してしまったこともあるから。
竹中 なんか『フライデーズ』行きたくなってきたな(笑)。
取材・文/中西彩乃 撮影/Kaname Sato スタイリスト/讃井理絵子 ヘア&メイク/yukari clarke 企画・編集/種谷美波(yoi)
Yuzuki ドレス¥132,000/ケイタ マルヤマ(ケイタ マルヤマ)シューズ¥15,900/チャールズ&キース(チャールズ&キース ジャパン)イヤリング/スタイリスト私物 Takenaka ワンピース¥46,200/アンスリード(マークスタイラーアンスリード)シューズ¥7,500/チャールズ&キース(チャールズ&キース ジャパン)トップス イヤリング/スタイリスト私物 Yukkyunシャツ¥45,760 ビスチェ¥44,000/メゾン・ジー・シモーヌ(ハイシックスティーファイブ)ハートネックレス¥14,800 クロスネックレス¥7,800/ヒプノティック(ヒプノティック)タイツ¥2,860/カルツェドニア(エイチスリーオーファッションビュロー)シューズ¥33,000/カンペール(カンペールジャパン)スカート レッグカバー/スタイリスト私物
ケイタ マルヤマ 03-3406-6221
チャールズ&キース ジャパン charleskeith.jp
マークスタイラーアンスリード事業部 03-6853-2200
チャールズ&キース ジャパン charleskeith.jp
ハイシックスティーファイブ https://www.instagram.com/_hi65_/
ヒプノティック https://www.instagram.com/hypnotiquetokyo/
エイチスリーオーファッションビュロー 03-6712-6187
カンペールジャパン 03-5412-1844