渡辺ペコさんの人気漫画を実写化したドラマ『1122 いいふうふ』が、現在Prime Videoにて絶賛配信中。セックスレスになったことをきっかけに、公認不倫や女性用風俗など、さまざまな手段で夫婦の在り方を模索する二人を、高畑充希さんと岡田将生さんが熱演。原作者の渡辺ペコさんとともに、不器用だけれど愛おしい、キャラクターや物語の魅力を語っていただきました。
俳優
1991年生まれ、大阪府出身。13歳で俳優デビュー。映画『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』(2018)で第43回日本アカデミー賞優秀助演女優賞を受賞。主な出演作は「連続テレビ小説『とと姉ちゃん』」(2016)、『過保護のカホコ』(2017)、『ムチャブリ!わたしが社長になるなんて』(2022)、『unknow』(2023)、映画『ヲタクに恋は難しい』(2020)、『怪物』(2023)、『ゴールデンカムイ』(2024)、舞台『ミス・サイゴン』(2022)、『宝飾時計』(2023)など。現在放送中の大河ドラマ『光る君へ』に藤原定子役として出演中。
『1122 いいふうふ』STORY
フリーランスのウェブデザイナーとして働く一子(高畑充希)と、文具メーカーで働く二也(岡田将生)は、結婚して7年目を迎えた気の合う夫婦。何でも話せる親友でもあり、側から見れば羨ましいほど理想的なパートナーだが、実は性生活は2年もストップしている。彼らの結婚生活は“婚外恋愛許可制”の公認という、秘密の協定によって支えられていた…。Prime Videoにて世界独占配信。
一子役のオファーを受けたときは、ちょっと運命を感じました(高畑さん)
──渡辺さんがキャスト決定の報を聞いたときの印象はいかがでしたか?
渡辺さん 本当に信じられないくらいうれしかったです。ただ、漫画では一子(いちこ)と二也(おとや)の夫婦を、お二人のような麗しいイメージで描いたつもりはなかったので、キラキラした高畑さんと岡田さんにこんなことをさせてしまって大丈夫かな…と思ったんです。
──こんなこと、とは?
渡辺さん 一子ちゃんの自堕落な感じとか、二也の優柔不断な感じとか、不幸な事故…事件に遭ってしまうこととか(編集部注:二也は作中で思いがけないケガをしてしまう)。
岡田さん あはは!
渡辺さん 作品を拝見したら、高畑さんと岡田さんの魅力やチャーミングさがキャラクターに反映されていて、もうめっちゃうれしかったです。3Dになったことに感激でした。
──高畑さん、岡田さんは、一子と二也のキャラクターや関係性をどう感じましたか?
高畑さん 私はもともと原作が大好きだったし、ここ数年で読んだ漫画の中でいちばん映像化してほしい作品だったんです。
渡辺さん えー! うれしいです…!!
高畑さん 登場するキャラクターの全員がちょっと“間違う”じゃないですか。本人たちはいたって真剣なんですけど。その姿を生身の人間が演じることで、さらに面白くなりそうな気がして。
だから、一子役のオファーを受けたときは、ちょっと運命を感じました。絶対やりたいと思ったので、参加できてよかったです。
優しいからこそ、時に人を傷つけてしまうこともある(岡田さん)
岡田さん 渡辺さんがおっしゃったように、二也は優柔不断ですけど、すごく温もりがあるキャラクターだと思っていて。人より何倍も優しさがあるからこそ、時に人を傷つけてしまうこともある。自分自身、ちょっと欠点がある人を魅力的に感じるので、二也にはものすごく惹かれました。
しかも、この作品はテーマ性がすごくあるので、台本を読んだときに一子ちゃんと家庭内で会話をしていく姿が絵として浮かんだし、これを徹底的にリアルに追求していったら、今までにない、新たな夫婦の形が見られるんじゃないかなという気がしました。現場にも原作が置いてあったので、撮影する前に同じ場面を読んでみたりして。
──今泉力哉監督と脚本の今泉かおりさんは、岡田さんが演じたことで「原作より二也が泣くシーンが多くなった」とおっしゃっていましたが。
渡辺さん あ、そうでしたね!
岡田さん 自分も監督に言われて気づきました。一子ちゃんの言葉のひとつひとつが粒立っていたので、心に響きすぎて。感情的になってしまいました。
渡辺さん 一子の言葉に落ち込みましたか…?
岡田さん そうですね(笑)。一子ちゃんは優しいけれど、突然、鋭利な言葉がこちらに向かってきますから。
自分で描いた場面なのに、ハラハラしました(渡辺さん)
渡辺さん 第5話で、女性用風俗のセラピスト・礼くん(吉野北人)と一子ちゃんの情事に気づいた二也が、一子を問い詰めるシーンなんかもそうですよね。いつの間にか問い詰められる側になった二也が、感情的になって家を出ていくという。自分で描いた場面なのに「一子、追いかけなくて大丈夫かな?」とハラハラしたりして。二人が心配になっちゃいました。
──高畑さんは、撮影現場で岡田さんの感情があふれ出すお芝居を見ていかがでしたか?
高畑さん いやもう、心が痛み続けてました。漫画だと絵が可愛らしいからポップに読めていたものが、脚本になった瞬間に「一子、まあまあだな…」って(笑)。だから撮影が始まる前に佐藤プロデューサーや脚本家のかおりさんとも打ち合わせをさせていただいて、言い方を少しドラマ用にマイルドに変えてもらった箇所もあるんです。
渡辺さん なるほど! そうだったんですね。そのアレンジが、一子のキャラクターとドラマの魅力を増幅させたと思います。
高畑さん 私が最初に心が痛んだのは、セックスレスの原因になった会話が描かれる第1話で、一子が「風俗とかは? 家以外でなんとかできないかな、そういうの。それにおとやん(二也の愛称)、モテなくないっしょ」というセリフ。文字で見たときの破壊力がすごくて。
ドラマでは、ちょっとコミカルに表現したりしてバランスを探っていきました。「もうこれ以上、傷つけたくない」という個人的な葛藤は、演じている間もありましたね。
観る人によって物語のとらえ方も、心を寄せるキャラクターも違うのがこの作品の面白さ(高畑さん)
渡辺さん 漫画を描いているときはそこまで意識していなかったんですけど、映像になって気づいたのは、一子ちゃんの強さと、おとやんが底なしに優しいんだなっていうこと。第1話は、おとやんが疲れた一子ちゃんのお世話を甲斐甲斐しく焼くシーンで始まるんですけど、私が描いたものよりもすごく優しくなっていて。
岡田さん ただ、二也も自分の行動で一子ちゃんを傷つけたりしていて。そもそも最初に公認不倫をしたのは二也のほうだし。その矛盾も面白いですよね。
高畑さん でも二也は言葉で傷つけることはしないんですよね。行動で一子が傷つくことはあるけれど。
──行動というと、二也が不倫相手と出会ったいけばな教室に通い続けている場面などがそうですね。撮影中、監督もつい「そりゃあ一子もつらいよね」とぼそっと口にしてしまったとか。
岡田さん この作品は、みんな一子ちゃんの目線で観ちゃいますから(笑)。
高畑さん でも私は結構、二也に共感しちゃったな。
岡田さん ほんと? 実は俺、どちらかというと心情的には一子ちゃん側だったんだよね。だから、一子ちゃんが二也のことを本当に好きなんだなってことが、すごく理解できました。
高畑さん 観る人によって物語の捉え方も、心を寄せるキャラクターも違うのが、この作品の面白さかもしれませんね。
撮影/天日恵美子 ヘア&メイク/小林麗子(岡田さん)、小澤麻衣(モッズ・ヘア/高畑さん)、寺沢ルミ(渡辺さん) スタイリスト/大石裕介(岡田さん)、岩田真希(高畑さん) 取材・文/松山梢 企画・構成/国分美由紀
衣装協力/美晴ドレス